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大好きなお兄ちゃんに復讐します  作者: さんまの刺身
第一章
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プロローグ

よろしくお願いします。

あぁ、ついにこの日がやってきました。

それは今日、7月7日の七夕なのです。

いままであんなに待ち遠しかったのに、いざ来ると少し寂しい気持ちになります。

なんででしょうか?

まぁいいです。

私は今日という日を目いっぱい楽しむために、出かける時間まで少し寝ることにしました。

お兄ちゃんとのデートを寝不足で過ごすわけにはいきませんからね。

ではおやすみなさい。



 -------------------




私の名前は秋風 乃絵瑠(あきかぜ のえる)

鈴蘭すずらん中学校に通う中学2年生です。

いわゆるお嬢様学校といわれるものです。

世間からの評判も高く、気品溢れる生徒たちが通っているのだろうとみんなそう思っています。

ですが、実際は正反対です。

確かに外面だけはいいかもしれません。

ですけど、中ではプライドが高いお嬢様達の蹴落とし合いが繰り広げられています。

入学する前はあんな学校に行ってみたいなと、憧れを抱いていました。

恐らく、誰しもがそうだったのではないでしょうか。

今思えば、後悔しかしていません。


まぁそのことは置いておきます。

過ぎたことを言っても意味ないですからね。

私が言いたいのは、どうしてお兄ちゃんと同じ学校にしなかったのかという一点!

お兄ちゃんの名前は秋風 拓斗(あきかぜ たくと)

今、教師の職に就いています。

これだけでわかると思います。

そう、今お兄ちゃんは中学の授業を担当しているのです。

あぁ、どうして過去の私はこんな選択をしてしまったのですか。

神様、教えてください……。

こんなことを言っても無駄なことは分かっているんですけどね。

後悔先に立たずって感じです。

うー。


私がどうして一緒の学校に行きたかったのかと言うと、ある出来事がきっかけとしてあります。

それは私のいじめ現場にお兄ちゃんが遭遇してしまった時のことです。

もちろん私が誰かをいじめてたとかはありません。

昔から私はどじでのろまで不器用なことから、同級生のいじめ対象によくなっていました。

トイレをしていると、水を上からかけられてしまいます。

下駄箱にはごみが詰まっていたり、物を捨てられることもしょっちゅうでした。

また暴言や暴力などもたくさん受けました。

最初の頃はとても怖くて、毎晩毎晩泣き続けました。

ですが、今はあまり気にしなくなりました。

逆にいつまでたってもワンパターンだなと呆れるくらいです。



そんな日々が続いていたある日、いつものように暴力を受けていると、研修生として私の学校に来ていたお兄ちゃんが止めに入ってくれました。


「君達!そんなことをしている余裕なんてないはずだろう。来年は受験生なんだからもっと時間を有効活用しなきゃだめだろう!」

「「「す、すいません」」」


さすがに研修生でも報告されたらやばいと思ったのか、素直に謝り立ち去っていく生徒達。

そして私に振り返って、お兄ちゃんはこう言いました。


「乃絵瑠、怪我は無いか?」

「う、うん。いつものことだし大丈夫だよ」

「!?。 なぜそれを早く言わない?」


そんなこといったってこんなところを家族に知られるなんて、恥ずかしいから言えるわけない。


「べ、別にあんまり気にならないからだよ」

「っ! 済まなかった、いままで気付いてやれなくて。だが今日からはそんなことはさせない! ずっと一緒にいるからな。乃絵瑠が何と言おうと」


心臓がバクバクするのが分かった。

こんなド直球な言葉にドキドキするなんて。

お兄ちゃんの顔すら見られなくなるくらい、顔が真っ赤になっていることがよく分かった。



こんなことがあってそれから意識してしまうようになったんです。

アニメや漫画で出てきそうなベタな展開だけど、本当に好きになってしまったんです。

まさか中学1年生で年の離れた兄に恋するなどとは、夢にも思っていなかったけれど。

そんなこんなで、恋が始まってから初めてお兄ちゃんの誕生日を迎えることとなったのです。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(ピピピピーピピピピー)

うー、あまり眠れませんでした。

何故か、毎年同じことをしている気がします。

けど大丈夫です。

きっと何とかなります。

お兄ちゃんを一目見るだけで、眠気なんて吹っ飛びます。

少しお布団が恋しいですが、お兄ちゃんにだらしない姿を見せるわけにはいきません。

少しの間の後、お布団を蹴り上げた私は顔を洗いに洗面所に向かいました。

そこで出会ってしまいました。

寝ぼけ目で目をこするお兄ちゃんに。

あぁ、なんて可愛いんでしょう。

まだ、あどけなさを残す中性的な顔立ちにって……今、欠伸しました!。

これは……破壊力がやばいです。

いつまでも見て居たくなる、まさに魔性の魅力をお兄ちゃんは放っているのです!


ですが、いつまでも見ているわけにはいきません。

だって今日は大切な……大切な一日だからです。

なんと、今日は! 

お兄ちゃんの誕生日なのです。

この日だけは、いつも仕事で忙しいお兄ちゃんにお休みを取ってもらい、毎年どこかへ二人きりで出かけているのです。

この日のために、念入りにスケジュールを組み立てているので、時間に遅れるわけにはいきません。

なのでお兄ちゃんを目覚めさせることにしました。


「おはよーお兄ちゃんっ」


するとお兄ちゃんは、眠たそうにこっちを向いて挨拶を返してくれました。


「うん、おはよー乃絵瑠ー」


いつ聞いてもお兄ちゃんの声は癒されます。

もう少し余韻に浸っていたいですが、あまり時間の余裕があるわけではありません。


「お兄ちゃん、なるべく早く支度してね」


私の声に頷くお兄ちゃん。

ゆっくりと顔を洗い始めました。

お兄ちゃんが顔を洗っている間に、私は着替えを済ましてしまうことにしました。

私の部屋に着くと、足場の踏み場もないほど大量の服で床が埋め尽くされています。

昨日のうちに来ていく服を選んでいた時のものです。

服を選ぶには結構な時間がかかりますから、前日に選ぶようにしているんです。


今年は白の花柄のワンピースに麦わら帽子、花柄のサンダルです。

去年とは違い、大人っぽさをイメージしたチョイスです。

今年こそお兄ちゃんは可愛いと言ってくれるでしょうか。

今年で7回目となりますが、未だに言ってもらえた試しがありません。

はっきり言って自信を無くしてしまいます。

ですが、今年はいつもとは少し違う服装なので、きっと言ってくれます。

お兄ちゃんは恥ずかしがっているだけですからね。

そんなことを考えているうちに着替え終わりました。


後は荷物チェックです。

水筒良し。

タオル良し。

ハンカチ良し。

お金良し。

入園チケット良し。

干し梅良し。

お兄ちゃんは、干し梅が大好きなので二袋持っていきます。

カメラよーし。

オッケーです。

準備万端です。


ではそろそろお兄ちゃんも洗面所を使い終わる頃だと思うので、私も顔を洗うことにします。

階段を下りて再び洗面所に向かうと思った通り、お兄ちゃんは顔を洗い終えて歯磨きをしていました。

そんな姿にもキュンと来ちゃいますが、自分の準備を終えるため洗面所に入りました。

 

二人の準備が終わったのはそれから10分後のことでした。

さっそく出かけることにしましょう。


「お兄ちゃーん!いこー」

「はいよ。今行くよ」


これから1年間で一番楽しみな一日が始まります。

いろんな場所に行って、おいしいものをいっぱい食べて、限界まで満喫しようと思います。


お兄ちゃんとのデートを……。




そこで悲劇が待っているとも知らずに。

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