壱ノ壱
「ーー♪」
脳内に、綺麗な高音の歌声が響きわたる。
まだ眠たい。まだ眠っていたい。
まだ…
「いつまで寝てるの!早く起きなさい!」
…歌声が、怒鳴り声に変わった。
「せっかく紅鳴が自慢の歌声で小鳥の
さえずりの如くモーニングコールをしてあげた
のに!」
緑色の髪を横に少量結った、青い瞳の
巨乳和服少女ー正式には電脳体のアイドル、紅鳴
を怒らせてしまった。紅鳴は電波のある場所では基本実体化できる、月から送られてきた電脳体の1人である。
「ごめん!紅鳴ちゃ、あうっ!
痛い!痛いから!殴らないで!ごめん!
ごめんなさい!」
紅鳴にポカポカ殴られながら私、架音は
目が完全に覚めた。
「早く布団から出ないと、尻尾モフモフの刑 よ!」
そう言いながら私の狐尻尾を、ニヤニヤ
しながら見てくる。
モフモフの刑って面白そうだな。と思いつつ
私は布団から出て、紅鳴と共に寝室から出た。
茶の間に着き、襖を開いた途端、鼻腔いっぱいに料理のいい匂いがきた。
「あ、おはようございます!架音。」
テーブルに正座をして、ピンクの髪をした眼鏡の少女、薔薇江が挨拶をした。
「おはよう、薔薇ちゃん」
ダメだ、やっぱり薔薇江はエロい。
高身長だが胸が大きく、太股が少しふとめ。
普段かけてる眼鏡+とろんとした目で見つめられたら、女の私でも理性を失いかける。
危ない危なー
「架音!紅鳴!薔薇江!ワシは腹が減って
もうたまらんのじゃ!早く席につかんか!」
私達3人とは一風違い、西洋の紺色のドレスを着た
茶髪ロン毛、ルミアはロリ…じゃなかった、
新米の死神様だ。
「はいはい、ロr…ルミちゃん。」
「おい、架音今ロリって言いかけたじゃろ。
朝飯後、覚えていろよ?」
やばい、ルミちゃんを怒らせちゃった。
「ま、まぁ料理が覚めてしまうので、
早く食べましょう。今日は、
結構上手にシャケが焼けたんですよ」
「そうよそうよ!紅鳴もう、お腹ペコペコよ!」
薔薇江と紅鳴が上手く状況を和ませてくれた。
マジでありがたい。今、自分の脳内で
[架音は危機から逃げきれた!]
ってテロップがながれてる。
「いただきまーす!」
確かにシャケが上手く焼けてる。
薔薇江が言ってたことは本当だった。
なんだろ、ルミちゃんの方から鋭い視線を感じる。変な汗が皮膚の穴からドバドバではじめる。
架音がルミアをチラ見すると、
ルミアはニコッと笑顔を返してくれる。
あの笑顔が怖い。紅鳴と薔薇江は
今後の予定について楽しそうにかいわしていた。
「ご馳走様でした!」
あれ、ルミちゃんが居ない。ほんの数秒前は一緒に手を合わせて食後の挨拶をしたはずなのに。
薔薇ちゃんは…
ゴズッ
頭の後ろ側で、何かが叩きつけられるような音がした。頭が重くなってくる。なぜだ?
そう思いながら架音は振り返るするとそこには、
鎌を持ったルミアが立っていた。
体が倒れる。朦朧とする意識の中、
紅鳴の悲鳴が聞こえる。
架音はゆっくりと、暗闇の世界に沈んでいった。