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違法民泊

作者: MiYA



私達の穏やかな生活は、ある日を境に変わ ってしまった。


私は生涯のパートナーと決めた、彼氏の隼人(ハヤト)と駅から歩いて10分程の、ワンルームマンションで同姓生活を始めた。


何故、私達は結婚しないのか?


実は、私はバツイチで、結婚をして離婚に至った経緯を振り返ると、足がすくむと言うか二の足を踏むと言うか… 結婚と考えるだけで不愉快になり、とても苦痛だった。


だからと言って隼人の事が、嫌いな訳では無く入籍云々(ウンヌン)と言う、私にとっては、まだ、逃げ出したくなるような難しい事を焦るよりも、ずっと一緒に生きていきたいと思う気持ちを、1番大切にしたいという心境だ った。


隼人は私に …


明日菜(アスナ)、結婚後は、専業主婦で家に居て欲しいんだ、俺の仕事は、いつ何が起きても仕方ない、仕事だから … 」


度重なる話し合いと言う、バトルを繰り返した末、私が折れる事で終決を迎えた。


普段は隼人が、折れてくれる事が多いけれど、私の仕事の事だけは、折れてくれなか った。


隼人は建築会社に勤めていて、彼のお父さんも同じ、建築業界の仕事をしていたけれど 、隼人が小学校3年生の時に、作業中の事故で亡くなってしまった。


隼人のお母さんは、どうしても直ぐに仕事を早退する事が出来ず、隼人は叔母さんに連れられ、お父さんの運ばれた病院に行き 、最後を見送れたけれど、お母さんはほんの少し、病院に到着するのが遅くなり、お父さんの最後を見届けられなかったと、隼人が私に話してくれた。



「俺は、絶対に嫌だ … 」



隼人はお母さんが、仕事をしていて遅くな ったと言う事を、頭では理解しているものの本心は違った。だからと言って、お母さんに冷たくあたる事は、絶対、無いし、そんな人なら、私も嫌いになるかも知れない。


隼人と暮らすようになってから、私はマンションの近くのスーパーで週3日、10時~15時迄、レジ接客のパ ートタイマーとして働くようになった。


1年があっと言う間に過ぎた頃、私達の借りているマンションの持ち主が、亡くなられたと、管理会社ソリュージョンの営業の人が一軒一軒、部屋を回り知らせてくれた。大家さんと個人的な付き合いがある訳でもなく…



「そうですか … お悔やみ申し上げます 」



それ以外の言葉は、思い浮かばなかった。



「お亡くなりになられた、大家さんの息子さんが、後を継がれますので …」



ソリュージョンの営業の人は、家賃や契約内容はそのままだと話した。


特別何かが変った訳でもなく、半年が過ぎた頃 …


同じマンションに住む、隣近所の人達が次 々に引っ越して行くのを、スーパーへパートに向かう時や帰りに、目にはしていたけれど、春先なので珍しい事でもないと、気に止めはしなかった。


マンションを継いだ息子さんが、事情は解らないけれど、別の不動産屋e-mineにマンションの建物と土地を売り、管理会社もソリュージョンからe-mineに変わった。


家賃等に変わりは無く、契約も今まで通り 、契約書に書名、捺印、電話番号を記入し 305号室のポストに、7日後迄に入れて下さいと、添え状に書かれていた。


隼人が仕事から戻り、直ぐに契約書に必要事項を記入してくれたので、翌日、パートに行く時に、305号室のポストに入れる事にした。


夕飯を食べながら、私は隼人に、最近、少しだけ気になっている事を話した。


「ねぇ、隼人 …」


「ん? 何だ ?どうした?」



隼人が確り私を見てくれたので …



「あのね… 最近、このマンション… お年寄りと、身体の不自由な人、それに … 」


「それに? … 何? 」



私は少し躊躇ったが、思いきって …



「うん … 日本人じゃない人 … 増えてない… ? あっ、別に、何かされたとかじゃ無くて、嫌とかでも無いけど … 」



隼人は少し考えてから …



「両隣も越してったみたいだしな … 」


それ以上、隼人は何も言わなかったけれど 、多分、同じ様に感じていたんだなと、その言葉で感じた。


そんな話を隼人と話してから、3ヶ月が過ぎた頃、15時迄のパートの筈が急に欠員が出てしまって、店長に頼み込まれて19時迄になってしまった。


20時には隼人が帰ってくるから、急いで勤め先のスーパーで惣菜を買い、走ってマンションに戻った。


エレベーターは4Fで止まり、私はエレベーターを降りた。



ド キ ッ …



隣の部屋の前に、見た事の無い男性が スマホを手に、大きなスーツケースと一緒に立 っていた。身長も高くて180㎝位、ガッシリした体格の人で、ハッキリ言って怖かった。


けれど家は、男の人が立つ先だからと覚悟を決め進んだ。私に気がつくと …



「Can I have my key…」

( 鍵を下さい… )



言われたが、私は背が大きく突然の英語に圧倒されてしまい …



「No English ! 解りません!」



男性の後ろを通り、慌てて部屋へ逃げ込んだ。



「怖~い … 何なの … 」



パートが長引いた事よりも、今起きた出来事でどっと疲れた。



あの男性 … 何で英語?



確かに背が高くて、ガッシリした体格だったけど … 日本人かと思ったけど …



あっ、そっか、アジア系なのか …



私は安心はしなかっけれど、男性が英語を話した事は納得出来た。



この日、隼人が戻ったのは、20時30分を過ぎていた。私は直ぐに隼人に聞いた。



「ねぇ、隼人 、背の高い男の人、隣の家の前に立ってた?」


「隣 ? 嫌、誰もいなかった … 何かあったのか? 」



私は隼人に、家の前で起きた事を話した。



「… 腕とか掴まれてないよな … 」



隼人の顔色が変わる …



「ううん!そんなのはないよ!ごめん… 心配させて … 」



「何かあったら直ぐ電話しろな!現場入ったら気づかない事もあるから、何回も電話鳴らせよ、家の鍵は必ず閉めてチェーン掛けて 、インターホンで受けろよ、絶対、先にドア開けるなよ!」



私が心配させたから、隼人は怒りながら話しをした。



ごめんね … 隼人 …



言葉には出せなかったけれど、隼人が心配するから帰って来て直ぐに、こういう話しをしてはイケナイなと、私は反省をしていた。


隼人は話し終えて、暫く黙っていたけれど、コロッケを食べて …



「これ、旨いわ … 旨い… 」



普通に戻ってくれた。



23時過ぎに私と隼人は、ベッドに入った。



アハハアハハッ!○△□~!


アッハッハッ! △□○!



深夜1時過ぎに、パーティーでもしているのか、大騒ぎしている男女の声で起こされた。笑い声と英語では無い話し声 … とにかく煩い!


隼人はムクッと、ベッドから起き上がり、私に何も言わず、玄関へ向かった。私は慌ててベッドを抜け出し…


「隼人 … 警察に通報しよう、ねっ 」



隼人を止めたけれど …


ピンポ~ン …


隼人は隣の家の、チャイムを鳴らした。



し ぃ ~ ん …



ピタッと騒ぎ声が止まる …



ピンポ~ン …



隼人はチャイムを、もう一度鳴らしたけれど、誰も出て来なかった。



「煩ぇ~!何時だと思ってんだ!」



隼人の声に反応は無く、隣の家は静まり返っていた。



「隼人 … 風邪引くから… 」



私は隣の家のドアの前に、鬼のような形相で立つ隼人の腕を引き、二人で家へ戻った。



再びベッドに入ると、隼人が …



「明日菜、民泊って知ってるか… 」


「うん、ニュースで見たけど …?」



隼人はガバッと、掛け布団を剥ぎ …



「多分、旅客業務の許可取ってない民泊だ … 許可取ってれば、ドアにシール貼るし、住人に必ず説明がある… 管理会社から何も聞いてないだろ?」



「うん … 聞いてない …」



隼人は頷き …



「明日、話そう、俺、起きれなくなる」


「うん、解った …」



隼人は掛布団を引き、眠ってしまった。




隼人は寝むそうな顔をして、仕事へ向かった。私はパートが休みなので、家の中の掃除と洗濯をしていると、9時30過ぎに …



カチャッ …



隣の家のドアが開く音が聞こえた。


ガラガラとスーツケースを引く音と、数人の足音と異国の言葉が響き、ゾッとする…



「あ~もう~隼人~!早く帰って来て~!」



心細さから隼人の名を呼んだ …


その後、私はスマホを使い、民泊について自分でも調べてみようと思って、検索を始めた。



「夜中の騒音被害、共有スペースがゴミの山? あっ、相談できる国の機関もあるんだ … へぇ~ 民泊はホテル等より、宿泊料金が安く … 待って、安くって言っても… ホテルのような防音設備はないわ … 聞き慣れてない英語も違う国の言葉も怖いし … マナーも悪いなら… 治安も悪くなるんじゃない? だ って隼人は、家のマンションは無許可だろう… って … あと何かないかな… えぇ… あちこちでトラブルが発生してる? けど … ニ ュースでは言ってないわ … 法案が通る通らないのニュースは、よく見た覚えがあるけど … えぇっ!… 国の機関に通報や相談をして、報復被害を受けた人もいるの … えっ… 管理会社は個人に貸しているので… 関与出来ないと言う所が(ホトンド)ど… って… 何なのこれ… これじゃ全く住人が守られてないじゃない … 日本は世界一、安全な国じ ゃなかったの?怖いよ…嫌だな…隼人~早く帰って来て… 」



ネットで検索して、その内容を知れば知る程に、躰が震えて怖くなった …




その日の夜、民泊の事を二人で話したけれど … 私達だけで解決は出来ないと言う結論になり、異変や身の危険を感じたら直ぐに 、相談機関や警察を頼るしか無いと、何か起きたらどう対応するか、二人で幾つか決まりを作り紙に書き出した。



~ お家ルール ~



一つ、隼人も明日菜も、スマホのGPS検索で、いつでも居場所を確認出来るようにしておく事


二つ、 明日菜がマンションの入口付近やフロアーで怖いと感じたら、無理に家へ入らず、喫茶店等、安全な場所へ避難し隼人にメールを送り、隼人の帰りを避難場所で待つ事


三つ、どうしても家へ入る時は、先ず、警察に連絡をし、警察が来てから一緒に入る事


四つ、明日菜は防犯ベルと、催涙スプレーを必ず持ち歩き、バッグの直ぐに取り出せるポケットに入れ、腕を掴まれそうになったり、躰に触れられた時には躊躇なくガンガン使い、安全な場所へ逃げて警察に通報する、又は直接警察へ行き事情を話す、場合によっては、被害届を提出する事


五つ、家に居る時は、必ずドアの鍵を掛けチェーンロックも忘れず掛ける、誰か来ても直ぐにドアを開けず、インターホンで確認し、知らない人なら絶対に対応しない、直ぐに警察に通報する事



これをリビングの壁に貼り、私も隼人も忘れないように、自分の手帳に書き写した。


それから1ヶ月位は、隼人が帰りに他国の人を、マンションの周りで見掛ける程度で 、実害も無く過ごしていた。



けれど、その日…


私は隼人の帰りを1人家で待っていた。



ドンドンドンッ! ドンドンドンッ!


ピンポ~ン ピンポ~ン



19時30分頃、家のドアを激しく叩く音とチャイムの音に、私の躰がビクッと震えた。


スマホを持ち、恐々と家の玄関へ向かい、インターホンの受話器を上げた …



「はい、何方ですか… ?」


「○△□○○!○△□!」



何かを伝えようと、話しているのは解るけれど、英語でも無いので、言葉の端々さえ解らない … けれど、相手は一方的にワーワ ーと話す …


こっ、怖いよ …


此処は日本でしょ … ?


片言でもいいから日本語で話してよ …



私は突然の出来事に、どう対応したら良いかが解らなくなってしまい、心臓は痛くなり、呼吸も苦しく感じて …


何度も読み返した、お家ルールが何も役に立たなかった …


私はインターホンの、受話器を持ったまま、腰を抜かしたように、床に座り込んでしまった。


ドアの向こうから、隼人の声が聴こえ…


隼人が警察を呼んだのか、追い払ったのか解らないけれど、暫くすると静かになった。


私も少し、呼吸が落ち着いた …


警察の人が管理会社に、連絡をしてくれたようで、その後の事は解らないけれど … 隼人からそう聞いた。


その夜は話し所では無く、私はそのままベ ッドで休んだ。夜中にハッと目覚めたけれど … 隼人が横で眠っていたので安心した。

パーティーのような、話し声も笑い声も、言葉の解らない会話も、聴こえて来なかった。


翌朝、目覚めると隼人が私に …


「明日菜、引っ越そう!会社の人に聞いてみたら、直ぐ入れる所が見つかったから ! 今日、仕事休んだから、持てる荷物だ待って、取り敢えず直ぐ住めるから、どうせ今月半端だから、来月一杯借りてる訳だし、荷物は休みの日に、一緒に来て荷造りして 、引っ越し業者に、頼んで運んでもいいし 、チョコチョコ二人で運んでもいいから」



私は寝起きで、まだボーっとしていたけど… 引っ越せるのは、正直、嬉しかった。


私達は持てる荷物を持ち、借りていたマンションを後にした。後の荷物は追々運ぶ事にして … 報復をされたら困るので、引っ越しを全て終えてから、私達は国の相談機関に行き、相談と言うより起きた事を話し

た 。


私と隼人は、この程度で済んだけれど …


もっと悩んで苦しんでいる人も、沢山居ると思うし、皆さんの周りでも、民泊問題が身近になると日は、遠くないと思います。


結局、私達の借りていたマンションの、隣に住んでいる筈の人は、誰なのか解っていません… 管理会社の人は居なくなり、連絡が取れないと言います … 私達は管理会社も疑っています… 隣の部屋は引っ越して行った後、誰かが越して来た形跡は、在りませんでしたから…


もっと、確りとルールを決めてから、始めるべきだったのではないかと、思っています。


違法民泊は大反対です!




お読み頂きまして

ありがとうございます。


読書の皆さんに感謝致します。



MiYA

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