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第36話 終わりの始まり

最終話です。

 運ばれたデザートは、スポンジに生クリームと赤いベリーに似た果物が乗せられ、甘さも控えめで食べやすい丸型の小ケーキだった。

 そのケーキを3人で食べながら会話をして、気が付くといい時間になっていた為、話を切り上げてハデン王子とリッシャー王子と一緒に途中まで送られて、あてがわれた自室に帰る為、彼らと別れて帰路に着いた。

 そして、王子たちと別れたすぐ、交代するようにキッシュさんと合流し、自室に戻って入浴も済ませたところだった。

「今回の会食はどうでしたか?」

「最初すごく緊張してたんですけど、料理が美味しくて楽しかったです」

「それは良かったです」

 巫女服から室内着に袖を通した私は、明日の予定について、キッシュさんと打ち合わせをする。

「……それではショーコ様、明日からはヴェルヴァラ様の講習の予定でよろしかったでしょうか?」

「はい。お願いします」

 尾行する為にお休みにしてしまった分を補う為に、伝えてもらう様にお願いする。

「かしこまりました。それでは、失礼いたします」

 お辞儀をして退室したキッシュさんを見送って、私は就寝しようと慣れ始めた布団に潜った。


   *   *   *


「それでそれで!? いったいどうなったの??」

「それで――……」

 翌日、お昼前に書斎に着くとヴェルヴァラさんが肩肘を付きながら、授業前に昨日までの事を知りたいと言われ、思い出すように掻い摘みつつ、何があったのか話していた。

「えぇ!? お休みもらってのんびりしてたのに、そんな面白そうなことになってたのぉ!? アタシもお呼ばれしたかったわ!」

 話し終わると驚きながらも、甲高い声を出して笑うヴェルヴァラさんを見ながら、アハハと乾いた笑みが出る。

「面白いというか焦るばっかりでしたよ……?」

「ふふっ……ゴメンなさい?でも、アプローチ受けてるなら良かったじゃない。仕方なくされてるより、よっぽどいい事だわ」

「そう、なんでしょうか……?」

 未だクスクスと笑いながらヴェルヴァラさんは指を組んで、羨ましそうに微笑んだ。

「えぇ、そうよ。さて、お喋りはこれで終わり。さ、授業を始めるわよぉ!」

 その後、とても楽しそうに手を打って、意気揚々と教材を手渡され、号令で授業が始まった。



「今日はこのくらいにしましょうか。明日は小テストをしますから、復習を忘れずにね♡」

「はい!」

 3時間にも及ぶ授業を、休憩を挟みつつ受けた後、ヴェルヴァラさんは教材を閉じて、終了の合図と、現世でも聞いた事のある言葉を口にした。

 小テストかぁ。なんて考えながら、今日の授業を思い出す。

 ――今回は、空いてしまった授業内容の復習が主だった。地理と社会、それから言語……。

 本来であれ、異世界人の私からして見たら、この世界における言語について、喋る事もさながら読み書きが出来ないべきだと、ヴェルヴァラさんは今更のように話していた。

 私は普通に、この世界に来てからずっと、母国語である日本語を喋っている。

 けれど、リッシャー王子と初めて出逢い、会話をした。

 その事からはっきりしたのは、生まれも育ちも、世界でさえも違う私達は、あの時すでに会話を成立させていた事になる。

 とはいえ、その時の私は自分の事を覚えていなかった。

 もしかしたら、何かしらの補正が掛かったのかと思うぐらいだ。

 だからか、途中から始まった言語について、問題はなかったと言っても過言じゃない。

「まあ、念のためにも言語テストをするわね。一問だけ難しいの入れる予定だから覚悟はしといてちょうだい」

「はい。分かりました」

「じゃあ、また明日会いましょうね」

「はい。ありがとうございました」

 テストを作らないと!と呟きながら、手を振ってヴェルヴァラさんは書斎から立ち去った。

 私は復習も含めて、貰った教材と書き記した字を見る。

 私の書いた字は日本語そのものだけれど、その字をみて不思議な文字ねぇと呟いたヴェルヴァラさんにも読めてるようで、ヴェルヴァラさんの書いた字も読めない訳ではないからか、不思議で不気味な感覚になる。

 この国の文字を習って書けるようになった方がいいような気がして、早速取り掛かる。

 とりあえず、テスト範囲になっている文字を見習いながら、テスト対策をすることにした。


 翌日の小テストは満点は取れなかったけれど、昨日から文字を自主勉した成果が発揮したみたいで、少し書き間違いをしてしまった部分もあったけど、驚かれながらもヴェルヴァラさんに褒められたのだった。


   *   *   *


 誰の姿もいない室内にたくさんのモニターが対角面に置かれ、次々とモニターの電気が付き始める。

 数分もしないうちに、それらのモニターは三つだけ残して全て点灯された。

 モニターが着いてから誰一人、一言も言葉を発せられることもなく、ただただ静かな無音が室内に満ちていた。

 集まっているのは大陸にある各国の王たちであり、次期国王になる王子たちでもあり、各月に行われる国議会の集まりであった。

 しかし、今回の国議会は臨時議会と表されていた。

「た、大変だ! 光の巫女が現れているそうだ!」

「なに!? それは誠か?」

 そして、残り三つのうちのモニターが一つ付くなり、焦りに焦った声が開口一番に発せられた言葉に、1人だけ席を立つ音を響かせて驚く。

 2人以外の人物たちは周知の事実だと言うように、沈黙が続いた。

「あぁ本当だ。しかも現れた場所がフェルナンド王国付近だったそうだ」

 沈黙を破るように、その中の1人が頷くように言葉を発すると、黙っていた人達が会話に参加し始める。

「だった……って、もしかして、もう向こうに拾われたってこと?」

 他の人物たちよりも威厳さのある男性の言葉に、おずおずと尋ねる声にその人物は頷く素振りをする。

「そうなる。それに約一週間程、隠し匿っていると聞く。それに他国に声明を出さず、自国で王位後継者の2名のうちが娶るという噂もある」

「なんだって? それじゃあ、あの国は個人で世界を統べようと企んでいるって事?」

「……まあそうなるだろうな」

「…………」

「……生意気な国家。国王が変わった直ぐに襲うべきだったかな」

 息を呑むようにして沈黙した数分後、とある一人が面白くなさそうに拗ねた口調で、こと恐ろしい言葉を口にする。

 その人物に対して、淑やかな口調でたしなめる声が続く。

「まあまあ、その巫女は異世界人だとも聞く。教養を用いらせるのならばあそこも適国だ。もう少し様子見をしてもいいんじゃないか?」

「へぇ……異世界人、ねぇ……」

 たしなめる言葉に別の声が楽しそうに反応する。

「そうだな、それがいいだろう。それに我が国のスパイがあの国にいる。逐一連絡するように申し付けている。何かしら進展などがあれば、今後も召集して情報を共有しようと思う。それで宜しいか諸国方」

 威厳のある男性は淑やかの人物に賛同の声をあげ、まとめる様な言葉を皮切りに、全員が頷く。

「はい! 質問です!」」

 その中で、一人が声を上げてモニター越しではあったが挙手をした。

「なんだね?」

「今、様子見するのは賛成だけど、向こうに見に行ってもいいですか?」

 声が高く年端のいかない少年が、少しわくわくしながら問いかける。

 怪訝な表情で少年にその理由を伺う。

「悪いとは言わないが……見に行ってどうするつもりだ?」

「それは――……内緒!」

 考える素振り少しして、質問者は明るく答えをはぐらかした。

「そうか……。では、ほかに何か質問などがあれば承る。無ければ今日は終了しよう」

 納得するわけでもなく質問者に一言呟くと、あたりを見渡すように尋ねる。

「特に質問が無いようなので、今回の国議会は終了とする」

 少しの沈黙を暗黙の了解として受け付けたのか、静かに言葉を続け、片手を挙げて終了の合図をだす。

 その合図から、それぞれ言葉を交わしながら、モニターの電源が次々と切られていく。

 数分後、最後の一つを残して室内は暗くなる。

「光の巫女ってどんな人なんだろう? 会いに行くの楽しみだなぁ……!」

 残った一つのモニターの主は、一人の質問者の”シュナイザー・ルクス・ベル”だった。

 まだ声変わりをしていない彼は、幼いながらにして国王となった今、まだ見ぬ輝子に期待を馳せる。

 シュナイザーは会議中継を停止するようにモニターの電源を落とし、会議室に使われていた部屋は静けさを取り戻し、()()()()()()()()()()()()臨時会議は終了したのであった。


おわり……?

 二部につづく


長い間、閲覧してくださってありがとうございました。

また、いつか再会するかもしれない、二部でお会いしましょう!

(設定は後程……)

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