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第35話 会食(2)

分割最後です。

 全員が揃った事で卓上にたくさんの料理が並べられ初めた。

 料理の種類は沢山あり、残してしまう可能性しか見いだせないと思うほど、ズラリといい匂いのする料理が並び終わる。

「遠慮することは無いさ、手をつけてくれて構わないぞ」

 国王様はにこやかに両手を広げて勧められる。

 その隣の王女様は正反対に鋭く睨むように向けられた視線が、チクチクと私に注がれて、手を出そうにも緊張で身体が動かなかった。

「母上、視線視線」

「!(ニッコォ……)」

(ひっ!)

 ハデン王子から注意を受けた女王様は、一瞬目を見開き、不器用に口角を上げられる。

 失礼に当たるけれど、凄みが増したような気がして逆に落ち着くことも出来ず、王女様の視線から逃げるように俯くことになってしまう。

「……巫女様に数点ほど見繕ってやりなさい」

 不穏ではないにしろ、俯く私を見越してか、国王様は隣に控えていた支給係さんに指示を出す。

「どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 コトリと差し出された皿の上には、目の前に並んだ料理の縮小版のように、色彩豊かな野菜の中心に、丸く一口大に切られて炙られた肉がゴロゴロと入っていた。また端の方にはレモンのような輪切りにされた黄色い物が添えられている。

 丸められたナフキンに数種類のカトラリーが置かれた場所からフォークを手に取って、女王様の視線を受けながらお肉を一口含んだ。

「! 美味しい……」

 炙られているからか、お肉を噛む度に肉汁が口の中に広がり、固くも柔らかすぎくないお肉が咀嚼するほど味が出て、食べた事の無い食感に陥った様に覚えた。

「だよな! 我もその料理はとても好きだ!」

「え?」

 急に声を出した事に驚き、自分でも分かるように目を丸くして女王様を見た。

「あ……、おほん。すまない。気にしないでくれ……」

 彼女は驚きに見開く私を見て、恥ずかしそうに顔を赤くされた後、視線をフイッと外された。

「……素直になればいいのに」

「ハデン! 性分では仕方がないだろう!!」

 ボソリと呟いたハデン王子の言葉が耳に届いたのか、王妃様が焦りを含んだ声を発する。

「まあまあ、リシャ。巫女様を困らせるものではありませんよ」

 国王様は間に入るように王妃様を宥める。

「そ、そんなつもりは……だが、すまない。別に困らせるつもりはなかったのだ……」

 王妃様は肩を落とすように落ち込む姿に、私の方こそ申し訳なさを感じた。

「いえ……大丈夫です。美味しいですよね。このお肉……なんの種の鳥なんですか?」

「! そ、それはだな……!」

 王妃様に向けて、ぎこちなく思われないように、精一杯の笑顔を作る。

 パッと表情を明るくされ、料理の説明をしようと口を開けるも、言葉が出ないようでバツが悪そうに顔を歪ませる。

「そちらのお肉は、国内で飼育した食用鳥でございまして、健康そうな鳥を使いました。素材をそのままに素揚げした後、味付けをしましてバーナーで二度炙ったものでございます」

 王妃様の代わりに壁沿いに控えていたコックが恭しく教えてくれた。

「そう! そうなのだ! 我が作ったわけではないが、この国に昔からある調理方法なのだよ!」

 王妃様は嬉しそうに高揚した頬を震わせた。

「そうなんですね。ありがとうございます」

「あぁ! どういたしまして、だ!」

「さて、話しあえるようになったので、ここらへんで我、妻の紹介をしよう」

 私と王妃様の間から気まずさが抜けると、国王様が微笑みながら会話を開始した。


「彼女はこの国の王妃であり、ハデンやリッシャ―の母親でもある、フェリシアント・フェルナンドだ。私は親しみを込めてリシャと呼んでいる」

「巫女殿、先ほどは失礼した。ルーベルの仰る通り、我の名はフェリシアントである。お主も気軽にリシャと呼んで頂いても構わないぞ。……それに、第二の母と思って貰っても……」

 王妃様――リシャ王妃は一度頭を下げると、隣に座る国王様を横に見て自己紹介をしてくれた。

 最後はどうしてか、どもっていて聞こえなかったが、私は笑顔を生やしてお辞儀をする。

「王妃様、お初にお目にかかります。宮永輝子と申します。……私の方こそ、御無礼な態度をしてしまい、申し訳ございません」

「い、いや! 巫女殿の事を無礼等と思っておらぬ! それより、ふ……普通に接して欲しいのだ……。頼まれてくれぬか?」

 頭を下げたまま謝る私に首を振った後、恥ずかしそうに王妃様は口元を覆いながら言葉にされた。

「…………」

 頼まれてしまったとはいえ、流石に今から普通に接する事が出来るのか不安になる。

 その為、すぐには返事が出来なかった。

 沈黙した事で勘違いしたのか、王妃様はしょんぼりとわかりやすく落ち込まれた。

「そ……そうだよな……。急にあんな事言って嫌だったよな……。すまない、先程の言葉は忘れてくれ」

「ち……違うんです! 嫌って言う訳じゃなくてですね……!」

「母上、彼女は急な誘いで戸惑っているだけです。だから、返答を直ぐには出来ないだけです。……な?」

 焦った私を支えるように、手助けしてくれたのはリッシャー王子だった。

 リッシャ―王子の言葉に甘えるように私は、首を2、3度、縦に振る。

 その様子を見て王妃様は安堵された表情で、ホッと息を吐かれたのを耳にした。

「そ……そうか。では、ゆっくりでいいのだ、時間をかけていく中で、生じる感情もあろう。その時になったら親しく話しかけてくれたら嬉しい」

「はい!」

 頷く私に女王様は少女のように優しく微笑まれた。


 先ほどの笑みに優しさを見出したことで、王妃様に慣れてきた私は、様々な料理に手を付けた。

 味付けは実に好みで、食べたことのない料理でも、安心して提供されたものはすべて完食することが出来た。

 卓上に並んでいた料理が殆ど無くなった頃、国王様は口を開いた。

「さて、私たちはそろそろ上がろうと思う。皆、それぞれ退席して構わないからね。さ、リシュ行こうか」

「え。ルーベル! 我はまだ……!」

 そういって、国王様は椅子から立ち上がり、まだ居たそうにする王妃様を引きずる様に退室させ、従者が開けた扉の前で立ち止まれられると、顔だけをこちらに寄越してウインクをされた。

「じゃあ、後は私たちはこれで、失礼するよ。デザートがあるそうだから君たちで頂いておいてくれ」

 そして、私とリッシャ―王子とハデン王子が残された。

「デザートだって。楽しみだねぇ」

 ハデン王子が私の方を見ながら、にっこりと頬を膨らませたのだった。


つづく

王妃様は王族生まれで、国王になるように教育を受けていたので、口調は固い(?)です。

一方、国王様は元平民生まれなので、口調はですますで親しい感じにしています。

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