第3話 王国へようこそ
数十分ほどかけて、私はリッシャ―王子と複数の兵士たちと一緒に国の外壁へと辿り着いた。
辿りついた国壁には跳ね橋がついていて、誰も国内には入れないように跳ね橋は上がっていた。
背の高い国壁を見上げてから、ふと下を見てみると夜だからか底の見えない溝があった。
静寂の中に水が流れているせせらぎの音が聞こえてきたため、溝の底には水が流れているのだとわかった。
溝がある国壁の前には白の塗料で塗られた人一人が入りそうな小屋があり、とても国壁と比較して可愛らしい小屋に見えた。
その小屋の中に一人の兵士が中に入っていき、すぐに戻ってきた。
「何しに入って行ったんですか?」
早めの帰還を疑問に思い、リッシャ―王子に振り向きながら尋ねてみた。
「ああ、あの小屋には機械が入っていて起動させると水力を使って、橋を下がる仕組みになっているから、それを動かしに行ってくれたんだ。すぐには起動しないが、もうそろそろ動き始めるぞ」
「なるほど……」
リッシャ―王子の言う通り、戻ってきた兵士との少しの差で、ギギギギギッと重い音と橋についている鎖がじゃらじゃらと音を立てながら、ゆっくりと橋が降りてきていた。
ガコンッと板と地面が当たる音がして橋が降りきり、国内に通れるようになってから、リッシャ―王子は馬を進ませると門をくぐり始めた。
そして国内に入ると同時に、私に語りかけるように話しかけてきた。
「ようこそ、フェルナンド王国へ。この国は今、私達の父が治めていらっしゃる。そして今から城へ行くために王族ルートを使う」
「王族、ルート……ですか?」
リッシャ―王子の言葉に首を捻って聞いてみる。
「そうだ。まあ、簡単に言えば、私のような王族関係者とその兵士たちしか知らない通路というやつだな。結構小道に近いが、秘密の通路として、王族たちは秘密裏に外交に出る時などはこの道を使っている。……とはいえ、あまり使われることのないルートに等しいんだけどな。今回使う理由として通常の道では城に着くのに結構な遠回りになってしまうし、今は夜中という事もあるから、ぞろぞろと移動するわけにはいかない。だからこそ、この王族ルートを使って帰還するのさ」
「ふぇ……そんな道があるんですね……」
「まあな。では、行くぞ」
リッシャ―王子は私の質問に答えてくれると、手綱を牽いて馬を動かし始めた。
そして大通りではなく、王族ルートという小道を使いながら、器用に馬を動かしていく。
その後ろで兵士たちはぞろぞろと私たちについて来ていた。
本来、国壁と城の場所にたどり着くまで掛かるとされる距離を、数十分もしないうちに私達は王城の大門前にたどり着いた。
城壁は国壁よりも頑固な作りになっているようで、重々しく数十人が一斉に通れるような横幅の扉が重々しく感じるほど厳重に閉まっていた。
またもや国壁の小屋みたいに一人の兵士が、馬の横を通り過ぎて大門をノックしたのが見えた。
すぐに大門は重々しい音を出しながらゆっくりと開き始めた。
「さて、今から城内に入るのだが、来賓者はしきたりに則って、王宮占い師に占ってもらわなければならないのだ」
「そう、なんですか……?」
リッシャ―王子は説明しながらスッと馬から降りると、手を差し出してきた。
背中から離れた温もりに名残惜しさを感じながら私は彼の手を取る。
占いのことを聞いて、不思議に思いつつ、馬からゆっくりと降りながら王子の話を聞いていた。
「ああ。すごく面倒くさいが、占うことによって来賓者の至ることが分かる。……といわれているが、結局のところ古くからのしきたりなのだ。もしかしたら、君の名前が分かるかもしれない」
閉じていた門が開いていく音を耳に広いながら、リッシャ―王子は私を見つめて言葉を続ける。
「……ぜひ、名前が分かったら、教えて欲しい。名前がないと呼び方に困るしな!」
「はい……!」
少し言葉を止めたリッシャ―王子は、不意に視線を逸らして恥ずかしそうに語尾を荒げる彼に、私は微笑んで大きく頷いた。
「……では、我がフェルナンド城にようこそ。君をお客人として歓迎する。……お手をどうぞ、レディ」
城門が最後まで開くと、リッシャ―王子は視線と表情を元に戻すと、丁寧にお辞儀をした。
そしてもう一度、差し出された手を取って城内へとエスコートしてくれた。
私はエスコートを受けて城内へと足を踏み込み、しきたりとなっている占いが一体どんな事を教えてくれるのかと、不安と楽しみの感情が私の脳内を巡っていった。
続く




