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第32話 準備

7話と同じようなタイトルですが、様々な事象に対しての題名にしたつもりです。

「まあ、それでリッシャー様とハデン様にお名前を教えられたのですね。今更ですが……巫女様はミヤナガショーコ様と仰られるのですね」

 私は今、自室で正装に着替えさせられていた。


 あれから名前を王子たちに伝えて雑談していると、私たちの目の前にメイドさんがやって来た。

 彼女は準備の為に部屋へ戻るようにと、忙しいのかキッシュさんに伝言を受け取ったらしく、私はあっと思い出してメイドさんにお礼を言った。

 送ろうかと提案してくれた2人に首を振って断ると、待ってくれていたのか、伝えに来てくれたメイドさんに声をかけると、部屋へ戻るべく、それぞれに挨拶してガーデンテラスを離れた。

 そして自室に案内されて着くと、キッシュさんが仁王立ちで待っていた。

 キッシュさんの命令で最初に浴室に案内されると、2人のメイドさんがスタンバっていて、あれよこれよと脱がされて、至る所までその2人に頭からつま先まで洗われてしまった。

 ――まさか、お手を煩わせるわけには、と息巻くメイドさんに遠慮した所、却下されるとは思いもよらず、私は施される間、恥ずかしさに俯き、くすぐったさを我慢することしか出来なかったのだった。

 浴室から出ると、下着と肌襦袢に着替え、そのまま髪のセットとお化粧も施された。

 そうして、久方ぶりに見る光の巫女の正装である洋風の巫女服を手に、待っていたキッシュさんの号令で、着替えさせられた。

 その間に、さっきまで何をしていたのか聞かれたので、考えをまとめようとして外出したら、リッシャ―王子に出会い、一緒にガーデンテラスに行ったこと、そして思い出した事をハデン王子とリッシャー王子の2人に伝えた事を教えた後だった。


「名前の由来は分かりませんが、響きがステキです」

「ありがとうございます。輝けるような子供になって欲しいという意味合いらしくて……」

「そのような意味なのですね。名をくれた方に感謝しなければなりませんね」

「はい……」

 目を伏せつつ手を動かして、着付けしながら名前のことを褒めてくれたので、由来を教えるとキッシュさんは、優しさを含むように柔和に言われた言葉に私は頷いた。

「さて、終わりました。これで完成です」

「ありがとうございます」

 キュッと紐を結ぶ音と、キッシュさんの一言によって巫女服に着替え終わったことを察した。

「……巫女様のちゃんとしたお名前が呼べるようになりました。ショーコ様、これからもよろしくお願い致します」

 そうして立ち上がり、一歩離れていくキッシュさんは、嬉しそうにお辞儀をして微笑んだ。


   *   *   *


 長い廊下を連れ立って歩き、謁見の場の近くまで案内された。

 前回待った場所とは違い、待合室として宛がわれた部屋に通されて、私は向かい合って置かれていた長椅子に座っていた。

 国王と王妃、それからリッシャ―王子とハデン王子の準備が整い、揃い次第で謁見は始まると聴いているのだけれど、まだ準備が整っていないようで待つことになっていた。

「……すぅ……はぁ……」

 緊張で騒ぐ気持ちを深呼吸で治めるために、空気を吸って吐いた。

 それでも、逃げない緊張感に手汗がかいたので、手のひらを乾かすように両手をひらひらと動かす。

 少し落ち着いてきたのか、視野が広がったような気がして室内を見渡す。

 必要最低限のモノしか置かれていないように見えた内装だったけれど、よく見ると肖像画や瓶のような物置、それから暖炉台の上には二つの燭台と、その間に小さいブリキ人形が二体寄り添ったように置かれていた。

 そのブリキ人形に微笑ましく思いながら、私は謁見について、それから今の気持ちの現状について考えてみた。


 今日の謁見内容は、国王様と王子二人と二度目の顔合わせで、前回の謁見の際に国王様に頼まれたことに対して、考えた結果を返事をしなければならない。とはいえ、まだ気持ちの整理はつかなくて、どう答えていいべきなのかわからない。

 「断る」という考えもあるにはあるけど、断ったら断ったらでのその後のことが心配だったりする。

 おそらくいきなり国外追放にはならないだろうけど、私自身には何も持たなくても光の巫女という役職が持つ力があるからこそ、返答次第では私の今後が決まってきてしまう可能性がある。それでも私は覚悟を決めて返事をしなければならないのだと唾を飲み込む。


 ――リッシャ―王子とハデン王子の二人について……やっぱりまだ――――。

 コンコン。

「!?」

「巫女様、ご準備が整いましたので、移動の程よろしくお願いいたします」

「は、はい! わざわざありがとうございます」

 王子二人について考えようとした矢先、ノックの音とドア越しから声が聞こえた。

 室内に入らず扉越しだからこそ、声がくぐもって聞こえた声に返事をして私は、長椅子から立って服のしわを伸ばすようにして、ところどころ叩いたり抑えたりした。

 ……結局、彼らについて考える時間が無くなって肩を落としそうになったけれど、今からのことを考えると落としていられるわけはなく、もう一度深呼吸をして気を直す。


 だけど、やっぱり――……


「(すごく緊張する……)」

 二回目だとはいえ、落ち着かない気持ちを握りしめた。

「(そうだ……!)」

 色々考えて不安になってしまうより、国王様との期日の返事をするためにだけに設けられた謁見だと思うことで気持ちを軽くしながら、私は今日一日に覚悟を決めて、謁見の場に向かうためにまずは部屋から出たのだった――。

次話は謁見内容の話です。

メイドさんが来る前の王子二人との話し合いは機会があれば、

31.5話分として書いていきたいと思います。

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