第26話 ハデン王子の私情視察(2)
前回のつづき
尾行を開始して着いた場所は……。
ハデン王子の後をこっそり付いていきながら、たどり着いたのは書斎だった。
「書斎……?」
「みたいですね」
時間を置いて私たちも中に入った。
書斎は相も変わらず、たくさんの書籍が埋め尽くし、本独特のインクの匂いが鼻を刺激する。
「いました!」
辺りを見渡してハデン王子の姿を探す。先に見つけてくれたキッシュさんの示す方向に視界を写す。
示された先は、書斎にしては珍しく大きな窓があり、そこは太陽の光が差す唯一の場所であり夜には綺麗な月明かりが見れるスポットになっている所であった。
その場所にキッシュさんの教えの通り、ハデン王子は太陽の光を灯りとして黙々と書籍に目線を通してページをめくっている所だった。
「……」
「何を読まれているんでしょうね……?」
「!」
ハウスダストが太陽の光に照らされてハデン王子に、降り注ぐように舞っている空間に見とれていた私はキッシュさんの声で気付く。
「ここからでは、遠くて見えませんね……」
近づけばハデン王子が何を読んでいるのか分かるかもだけれど、尾行しているからなかなか近付くことが出来そうもなかった。
「ここは、偶然を装って問いかけてみてはどうでしょう?」
「流石にそれでもバレそうですけど……」
「うーん……。ではどうされますか?」
「どうしましょう……。 !」
考えあぐねていると椅子の擦れる音が聞こえ、音の方へ向けるとハデン王子はその場所から立ち上がって
書籍を本棚へ戻している所だった。
そして、新しい書籍を取ることなく扉へと足を向けていた。
「あっ!」
「どうなさいました?」
「あ、いえ……なんでも、ないです……(さっき――、一瞬目があったような……?)」
手をノブにかけて書斎から出ようとするハデン王子を眺めていると、扉の影に隠れるようにこちらを見るハデン王子の目を見たような気がした。
首を傾げたキッシュさんに答えるも、私は首を振って気のせいだと頭の隅に寄せた。
「追いかけましょう。巫女様!」
「はい! 行きましょう!」
目が合った事は気のせいかなと思いながら、私たちもハデン王子を追いかけるように書斎を出た。
* * *
書斎から出てハデン王子の姿を探し、そんなに離れていない距離にいた。
尾行をするには丁度いい距離感だと思いながら、私たちは彼を追いかけた。
たまにメイドさんとすれ違うハデン王子は、一人一人立ち止まり会釈を交わしていく。
「私もたまにすれ違いますが、挨拶はきちんとされるお方ですよ」
「礼儀正しい人なんですね。ハデン王子は……」
「ええ、リッシャー様もハデン様共々礼儀正しい方ですから」
そんな様子をみて、微笑ましげに語るキッシュさんを横目に1人の貴婦人がハデン王子と親しそうに会話をしているのを見かけた。
「キッシュさん、ハデン王子と一緒にいる方って、知ってる人ですか?」
「え……。えぇ、あの方は確か――」
「あっ!」
親しげにする二人を見て、何故か違和感を感じた私はキッシュさんに尋ねてみるも、答えてくれる前に、ハデン王子はその貴婦人に詰め寄って顔を近づけた。
そして、ハデン王子の顔が貴婦人を隠すようにして彼女を覆った。
その時、ドキン……。と心臓が音を立てて鼓動した。
とても見てはいけない愛瀬を見てしまったように思え、私は先に見える二人に目を逸らした。
「……あの方は、ハデン王子の元恋人だったような気がしますが……どうしてここへ……」
キッシュさんの不思議そうな呟きは耳に届いていたけれど、少しした視線の先で起きた行為の現実味にショックを隠せなかった。
「巫女様。ハデン王子が動かれましたよ」
「……あ、はい! 行きましょう!」
キッシュさんに急かされて、さっき見たことの場面を追い出すように頭を振って、ボーゼンとする貴婦人を見ないように、ハデン王子の尾行を再開した。
「あ……あれ? …………ひゃっ!?」
角を曲がったハデン王子を見失わない様に追って曲がり角に足を踏み入れると、追っていた姿はなく、代わりに横から急に片手を掴まれ、気付くと私は1つの部屋の中へ誘われてしまった。
「巫女様!? ど、どこに行かれたのですか!?」
「キッ……んぐっ」
扉越しにキッシュさんの驚く声が聞こえ、私を探す様にパタパタとその場所から離れていく気配に応えようと声を出そうも口元を覆われ、できなかった。
そして、キッシュさんの声は遠のき――――外は静かになっていった。
つづく
(3)に続きます(次回で私情視察のハデン編を終わらせたい)。




