第23話 リッシャー王子の私情視察(1)
リッシャ―王子のことをよく知るために、尾行をし始めます。
しかし――――。
ヴェルさんの授業を二日ほど中止させてもらって、私はキッシュさんと共に屋敷から出ると、朝必ずリッシャー王子が行く場所があるとされるに向かった。
「巫女様、こういうのはとてもはばかられますが、このような事をするなんて、とても大胆ですよね」
「え? そう、ですかね……?」
「えぇ、相手を知るために、相手と一緒にいるのではなく、こっそり探るようにしているのですから、違う意味で大胆ですよ……」
(そうなのかな……)
キッシュさんは小さく興奮しているようで、熱いため息を吐くようにして言った。
そんなキッシュさんとはうらはらに私の心情は豊だった。
「こちらです」
「ここ……ですか……」
敷地内を歩くして、キッシュさんの案内でたどり着いた場所は城内にいくつもあるとされるカフェテラスの見晴らしのいい場所で、遠くを眺めながらカップを傾けているリッシャー王子を目の当たりにした。
「リッシャー様は朝食を取られた後、眠気覚ましに食後のコーヒーをお飲みになられるそうです」
「そうなんですね……あの、キッシュさん……」
「はい?」
何も書かれていないメモ帳をキッシュさんは手にし、今朝方の事だったのに、リサーチ力は完璧で、とてもその情報源について気になって聞いてみた。
「そのメモ帳は一体……何も書かれていないじゃないですか」
「え? ……あぁ! 巫女様が偵察をすると言われたので雰囲気作りにいいのでは、と思いまして」
「なるほど……」
確かに雰囲気的には十分で私の服装も探偵のような格好になっている。
「それで、リッシャー様は何も無い日などはこの後、城下町におりられ、とある場所に行くそうです」
「とある場所?」
「ええ、毎日……いえ、忙しくない時などは殆ど行かれているようですね」
未だのんびりとしているリッシャー王子の方に視線を向けながら、私はキッシュさんの言葉に耳を傾け、首を捻った。
「巫女様、リッシャー様が動き出しましたよ」
立ち上がりウエイターに話しかけて立ち去ろうとするリッシャー王子に気付かれないようにこっそりとその後ろをついて行った。
城下町まで尾行した私たちは、何故か人通りの少ない路地に入ったリッシャー王子の姿を見失ってしまった。
「あ、あれ? 消えましたよ!」
「本当ですねっ! どこに行かれたのでしょうか? ……まさか、リッシャー様は……」
顔を真っ青にしたキッシュさんに私は最悪な思考を振り払うためにかぶりを振る。
「そ、そんなことはありえないですよ……! きっとまだこの近くにーー……って、あ!」
「どうされました?」
首を振ったことにより、私はひっそりと隠れるようにしてある扉を見つけた。
「あのドア、怪しくないですか!?」
「確かに、ちょっと怪しいですね。……入ってみましょうか」
見つけた扉を指差してキッシュさんに教えると、疑るようにして目元を細めて促す。
この扉の向こうには一体どんな世界が広がっているのかと緊張しながら、私たちはちょっと怪しい扉を開けて中に入った。
「いらっしゃいませー」
にゃーんっ!
「へ?」
扉を開いて待ち構えていたのは、扉の雰囲気とはかけ離れた元気な店員さんの声と多種多様な模様を纏ったネコだった。
「ようこそ! 個室ネコカフェ、ニャーデルランドへ!!」
すりすり……
呆気に取られている中で、店員さんはテンプレな挨拶をして私たちを迎え入れ、ネコたちはお客さんを歓迎するように私たちの足元に顔を擦り寄せながら甘えてきた。
「何名様でございますか?」
「あ、えっと……」
ニコニコと笑顔を絶やさず話しかけてくる店員さんにしどろもどろになりながら説明をする。
「なるほど、尾行をしていたとある方がこのあたりで見失ってしまい、扉に気付いたから立ち寄った、ということですね」
「はい」
腕を組んで頷いた店員さんは申し訳なさそうに口を開いた。
「このネコカフェは個室で個ネコを愛でるというコンセプトの元経営しております故、お客様の個人情報などは例え、お知り合いでありしも、お教えできるものではございません……」
「そうでしたか……」
「ですが、出待ち……という事でしたら、ここでお待ち頂いてもけっこうですよ」
「ありがとうございます。でもお気持ちだけでも頂きます」
「秘密裏にしていることなので、その人に出くわすわけにはいきませんし……」
「……ですよね。尾行されてましたものね。また今度、遊びにいらしてください。ネコたちも喜びますし」
法令尊守事情の為、教えて貰うことは難しかったけれど、店員さんの気遣いにキッシュさんはお礼をいうと丁寧にお断りし、私も頷いて断りをいれると、店員さんは気を害することなく苦笑していった。
「それでは、有難うございました。今度は普通に遊びに来ます」
「はい。ぜひ、お待ちしております」
にゅあーん!
手を振る店員さんと見送ってくれたネコたちにお辞儀をして、私たちは店内を後にした。
少し名残惜しさを感じながらも店をでた私たちは作戦を立てる。
「巫女様、これからどう致しましょうか」
「そうですねぇ……。いったんお城へ戻りませんか? もしかたら帰っているかもですし……」
見失ったら原点回帰をするのが得策だと思い、私はキッシュさんに提案する。
「えぇ、そうですね。あ、帰る前に買い物をしてもいいですか? 買いたいものがありますので」
「いいですよ」
私の提案に賛同すると、思い出したようにたずねてきたので、私は頷く。
「じゃあ、キッシュさんの買い物が終わってから帰りましょう!」
「えぇ」
そして、裏道から大通りにでると、私は先頭するキッシュさんの後をついて行くようにして、街の繁華街へと向かった――。
次話へつづく
(よし! ちゃんと月曜日に更新できたぞ!)




