「最高の珈琲」を求めて…
そいつはいつも尾いてきた。
「コレ デ イイ ?」
わたしの傍を離れずに
ぴったりと寄り添っている。
「コレ ガ イチバン カ ?」
ふと姿を見失ったとしても
振り返れば後ろにそいつはいた。
「コレ ガ コタエ カ ?」
どれを飲んでも変わらず、わたしの傍でそいつは問い続けた。
いつになっても消えないそいつ。
齢四十にして、出逢いは突然やってきた。
ついに答えを見つけた。
鼻をくすぐる芳醇な香り、
口内に広がる深い味わい、
喉奥から湧き上がる歓喜の雄叫び、
そして永遠とも思われる陶酔。
そこには一つの答えがあった。
真っ白な陶磁のカップの中に、答えはあった。
これこそ、わたしが求めていた珈琲だ!
「マンゾク カ ?」
けれどもそいつは、まだわたしの傍にいる…