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夏の終わりに君と

作者: 大藪鴻大
掲載日:2016/08/29

似た者同士の僕らは 夏の終わりに約束する

「夏休み、終わるね。」

 

 君は、窓の外に浮かぶ入道雲を見つめながら、夏の空の眩しさに目を細めながらそうつぶやいた。

「結局、何もしなかったなあ。」

 

 僕は、そう返事する。


「花火は見たよね。」

「この部屋からね。」

 

 しかも、ビルで一部切り取られた歪な花火をだ。


「カブトムシも捕まえてたよね。」

「家の前にいたやつをね。」

 

 住宅街の明かりに誘われ、壁にでもぶつかったのか、朝、家の前にカブトムシがいたことがあった。彼女に見せたあと、すぐに逃がした。育て方も知らなかったし、そもそも、僕はそれほど虫が好きではない。


「バーベキューしたりさ。」

「そんなことしてないよ。」

 

 風鈴が鳴る。涼しげな音が部屋に響く。僕の頬を撫でるその風も、随分涼しくなってきた。


「じゃあ、来年かな。」

「ねえ。」

 

 彼女がこちらを向く。相変わらず、感情が読み取れない。小さく浮かべるその笑みが一体どんな感情を示しているのか、読み取ることができない。


 

 君は この夏休み 楽しめたの?

 そりゃあ、僕の知らないところで、いろんなイベントがあったと思うけど

 少なくとも、僕と一緒にいるときは、退屈だったんじゃないかなあ



 そう口にしようとした。けれど、なかなかそれを言葉にできなかった。

 きっと彼女は、小さく笑みを浮かべる。そして、僕はその笑みの意味が分からず、途方に暮れる。ひとり、取り残される。そんな気がしたからだ。


「楽しかったね。」

 

 いつの間にかうつむいていた僕は、覗き込んできた彼女と目が合った。


「君とこの部屋で見たテレビも面白かったし、この窓から見える夏の空を見ながら食べるアイスはおいしかったよ。」

 

 彼女は笑った。ああ、そうだった。君はそういう人だった。だから、今、君はここにいるんだった。


 そして、僕は――


「君は?この夏休み、楽しかった?」

 

 僕は――


「そっか。じゃあ、また来年だね。」

 

 彼女が僕の頬を人差し指でそっと撫でる。


 風鈴が鳴る。蝉の声が夏空に響く。風が涙の跡を冷やす。



 君と僕は、きっと似たようなものを抱えている。

 でもそれは、きっと違うもので

 きっと君は君で 僕は僕で

 それを上手くコントロールする方法を見つけ出して

 それぞれのタイミングで 大人になっていく


 それなのに どうしてだろう


 僕は咄嗟に手を伸ばした。手を伸ばして、彼女を抱き寄せた。




 僕は君と来年もここにいたいと思ってしまうんだ。




 少しでも力を緩めると、彼女が窓からあの夏空に飛んで行く気がして、僕は抱え込むようにして抱きしめた。彼女は そのまま僕の腕の中で静かに息をしていた。



 また、来年だね。



 明日世界が滅んでも 僕らはきっとここにいる

 

 きっと そうだ

 こんにちは。大藪鴻大です。久しぶりの投稿です。陰でこっそり執筆はしているのですが、どうも上手く筆が進まず、現在に至っています。

 流石に、これはマズイ。そう思った私は、無理にでも物語を作ろうと思いました。

 それが、今作です。前作の『明日世界が滅ぶなら』の続編となっています。正確には、前作が物語のプロローグとすれば、今回はエピローグみたいな感じです。

「間はどうしたの?」と尋ねられそうですが、「ご想像におまかせします」と言っておきます。実は、付け焼刃的に書いた2作品ですが、結構思い入れがあります。なので、間に何があったのかも書いてみたいなあと思い始めてはいます。そんなに長くはならなさそうですし。


 みなさん、夏はどう過ごされましたか?充実していましたか?


 それでは、またどこかで会いましょう。バイバイ!

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