表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/59

書籍版四巻特典SS3

(´・ω・`)同じくボンボンがナオ君PTに合流して最初の休日の早朝のお話です

ナオ君一行との合同訓練




「うちの娘さん達と訓練を?」

「はい。察するに、あのお二人も相当な手練。私もマッケンジー老も、ナオ殿の護衛を務める以上、修練を怠る訳には参りませんので」

「了解。じゃあ明日は探索も休みだし合同訓練といこうか」

 町に来てから早いもので二週間。現在俺がお世話になっているパーティーのまとめ役であるスティリア嬢からそんな提案を受ける。

 ううむ、せっかくの休みなので惰眠を貪ろうと画策していたのだが、こちらは契約金を支払われている身。しっかりと雇い主の為に働くとしましょうか。


 翌朝。寝ぼけ眼の二人を引き連れ、宿の裏山を登っていく。

 ふらふらと覚束ない足取りの二人の手を牽いて山頂の広場へと辿り着くと、すでにスティリア嬢を始めとする一行が準備体操をしているところだった。

「おはようみんな。待たせてしまったかな?」

「おはようございますカイヴォン殿。レイス殿、リュエ殿も朝早くに申し訳ない」

「……うん……もっとあやまっておくれ……凄く眠いんだ……」

 なんかごめんなさい。うちのリュエさんがなんかごめんなさい。

 昨日早く床に就いたというのにこの有様である。

 頭が冴えるまで彼女は近くの切り株に座らせておき、レイスと二人で準備運動をする。

 やはり身体を起こすと目が冴えてくるのか、終わる頃には彼女もまたいつも通りのシャンとした顔つきになる。

「なんだかスティリアが無理を言ってしまったみたいで……ごめんなさいカイヴォンさん」

「ん? いやいいんだよ。休みだからってダラダラしていちゃ身体がなまるからね」

「ほっほう、儂としては綺麗どころ二人と交流が出来ただけでもう大満足じゃ」

 本日も髪をアップに纏めるナオ君と、珍しくローブを脱いだマッケンジー老。

 向上心あふれるスティリア嬢に休日の朝を奪われた彼らもまた、申し訳なさそうにこちらへとやってきた。

 どうやら、定期的に彼らは三人で訓練を行っているそうだ。

「……でも、リュエさんはまだ眠そうですね」

「ううむ、やはり美しいエルフの女性は切り株がよう似合うのう……」

「ケン爺に同意。どうだ、うちの娘さんはかわいかろう」

 するとその時、レイスとスティリア嬢が、広場の中央へと向かいだした。

 お互いの手には訓練用の木剣。まさか模擬戦でもするのだろうか?

 防御を主体にするとはいえ、騎士として戦うスティリア嬢と、冒険者に復帰したばかりのレイス……そもそも彼女は魔弓闘士。畑違いだろうに。

 すると、側にいた二人が『また始まった』とでも言いたげな表情を浮かべ出した。

「ほっほ……嬢は実力のありそうな人間を見ると誰彼構わず模擬戦を頼む癖があるでの」

「あはは……僕もこの世界に来て最初のうちは毎日しごかれました」

「あのあの、俺は一度も挑まれた事がないんですがそれは」

 なに、俺ってそんな弱そうに見えるのか。それとも避けられてるの? やばい泣きそう。

 そんな内心を他所に、二人が木剣を構え距離を取る。

 だがしかし、二人共構えたまま一向に動こうとしない。あれか、非常に高度な心理戦でも行われているのだろうか?

 隣では、ナオ君が固唾を飲んで二人を見守っている。そしてケン爺もまた、熱心に……なんでレイスの方ばっかり見ているんですかね? あれですか、なにとは言いませんが揺れるのを期待しているんですか。では俺も見させてもらいます。

「どうしましたレイス殿。来ないのですか?」

「ええ。少々攻めあぐねています。どこから打ち込んでも防がれてしまいそうで」

 二人の会話がこちらに届く。そしてそのレイスの考察は正しく的を射ている。

 彼女は『堅牢騎士』のジョブを持つ防御特化型の騎士だ。

 今は模擬戦の為盾を所持していないが、恐らく木剣を使った防御もお手の物。

 剣士でもないレイスでは、下手に切り込んだところで防がれてしまい、カウンターを貰うのは目に見えている。

「む、どうやら動くようじゃぞ!」

「それはどちらの意味で」

「もちろんあのたわわな――」

 無言のチョップ。自重しろエロ爺さん。

 大きく踏み出し、やや大振りな動きで木剣を振り下ろすレイス。

 俺の目から見ても隙だらけの動きは、防御をするまでもないとスティリア嬢を突き動かす。だが――レイスが途中でその木剣を放り出してしまう。

 そして剣を突き出したスティリア嬢の腕を抱き込むようにして掴み取り、そのまま流れるような動きで一本背負いを決めたではないか。

 地面に叩きつけるのは不味いと思ったのか、途中で空中に投げ出されるスティリア嬢。

 そして、こちらに迫る彼女の身体。うむ、これはいけない。

「ナオ君交代」

「え!?」

 隣で握りこぶしを握っていた彼を身代わりにする。そして予想通り彼女の身体がナオ君へと向かい――

「ほっほう、粋な図らいじゃなカイ」

「そうだろうそうだろう。いい思い出が出来てなによりだ」

 地面に押し倒される彼。そして覆いかぶさる彼女。

 うむ。傍目から見ると『タワー』が建築されそうな絵面である。

 案の定互いに赤面する様子を見ながら、勝者であるレイスに向かい静かにサムズアップをするのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ