エピローグ、またはプロローグ
(´・ω・`)これは、続く世界のプロローグであり暇人のエピローグです
世界に急激な変化は訪れなかった。
だが、それでもその長い歴史の中で、大きく世界は変わっていった。
神話は消え、伝説が神話となり、歴史が伝説として伝えられ、そして事件は歴史に残った。
国は何度もその形を変え、国境線が幾度も引かれ、そして消え。
それでも、確かに残った新たな神話の残滓が、今も世界に根付いていた。
真なる解放者の伝説は神話となり誰もが知るお伽話へ。
救済の女神の献身は今も世界中の信仰を集め。
偉大なる母の物語は世界中の親子の心に根付く。
ってね。
「俺は、死んだんだな」
顔を触れると、ボコボコと四角い跡の感触が指を伝う。
ほのかに涼しい早朝の風が、むき出しの腕を優しく撫で上げ、心地よい。
そして、前を向くとそこには――
Ryue:さようなら、カイくん
Raith:おやすみなさい、カイさん
今際の際に聞いた、愛する二人の妻の言葉がただパソコンの画面に映しだされていた。
ああ、そうだとも、夢じゃないとも。
俺の生きたあの数百年の時間は、今も俺の心の中に。
喪失感もある。けれども同じくらい、俺の心は充実感と幸せな思い出でいっぱいだ。
二人も、たぶんもう長くはなかったんだろうな。
そりゃそうだよな、二人共玄孫が三ケタに突入する程いたんだし、当然だよな。
けれども、二人は最後の瞬間まで、とても、とても美しかった。
俺が愛したままの、何も変わらない愛しい二人のままだった。
ああ、だめだな、良い歳して泣いてんじゃねぇよ俺。
「……明日から、また旅に出るかな」
転職はまた今度な、今度。
俺のぶらり旅は、どうやらまだ続くみたいだ。
そうして、まだ日の低いうちに、もう記憶に殆ど残っていない実家の階段を下っていく。
するとそこには……。
「おそよう、ヨシキ兄さん。そろそろ生活スタイルを正したらどう?」
懐かしい顔が、そこにいた。
チセが、妹が、微かな記憶としてしか残っていなかった家族が、いた。
「ちょ、何いきなり泣いてるのよ。 なに? 私が東京に行くのがそんなに心配?」
「東京……何の話だ?」
「は? ちょっと寝ぼけているの? だから秋宮カンパニーの新人研修で明日から東京に半年行ってくるんだってば」
「は? え? 秋宮? あれ、就職先って決まってたんだっけ……?」
「……本当大丈夫? また徹夜でメニューでも考えてたの? お店、来年から始めるんでしょ、そんなんで大丈夫なの?」
なんだ? どういうことだ? 俺の記憶違いか? なにかが……おかしい。
すると、今度はテレビから聞きなれない単語が飛び出して来た。
『続いてのニュースです。今年度の受験生向けに開かれる召喚実験にて、なんと未確認の魔物が――』
は? え? は? 何このニュース、どうなってんだこれ。
「へぇ、まだグランディア産の魔物が召喚される事ってあるのねー。私も向こうに行ったら受けてみようかしら、召喚実験」
「な……なに言ってるんだ……?」
……どうやら、俺が元の世界だと思ったこの世界は……一風変わった異世界だったようだ。
(´・ω・`)この世界の物語は、パラダイスシフトでのみ語られていく予定です
主人公は違うけどね




