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後日談 サーディス大陸編5

 朝。一番早く目を覚ました俺は、他のベッドに視線を向け、そしてすみやかに部屋を後にした。


「……寝相が悪いのはイクスさんもだったんだな……」


 ベッドから裸がはみ出しているリュエはいつものことだが、イクスさんもそれに負けないくらい、着衣が乱れ、身体が半分ベッドからずり落ちていたのだ。

 あれは、俺は見ない方が良いでしょう。

 宿の外に出て、まだかすかに朝焼けの残る空に照らされた海を眺める。

 はぁ、水上コテージだったらもっときれいな風景が見られただろうに。




 宿に戻る頃には、皆も目を覚ましていた。

 何故か釣り竿を用意しているレイスと、必死に引き留めるイクスさん。そしてそんな二人を、眠そうな目で見ているリュエ。


「ああ、おかえりなさいカイさん。おはようございます」

「おかえりなさいカイヴォン様。おはようございます」

「おあけりー……おはうゆ……」

「三人ともおはよう。で、レイスとイクスさんは何をしているんだい?」

「あ、朝釣りに出かけようとしていたのですが、イクスがダメだと……」

「海に落ちたらどうするんですかお母様! ダメです、寝ぼけた状態で海なんて!」

「大丈夫です、意識ははっきりしていますから!」

「絶対にダメです!」


 イクスさん、やはり相当海が恐いらしい。こりゃ水上コテージの存在とか認めないだろうなぁ。


「早めに出発するから、海釣りはなしで。朝食を食べたら出発しよう」

「そうですか……あ、それでしたら御昼の休憩はきっと川沿いですよね?」

「ああ、お昼に川で釣りでもしよう」

「ふふ、なら我慢します。リュエ、そろそろシャキっとしましょう?」

「うん……」


 イクスさんが甲斐甲斐しくリュエの面倒を見ている。

 あっという間に全裸になっていたリュエに服を着せ、髪を解かし、温かなタオルで顔を拭いてあげている姿は、まさしく母親や、面倒見の良いお姉さんのようだ。

 ……きっとエルスさんはこんな風に世話をされていたんだろうな……手際が良すぎる。


「ありがとうイクスさ――もご」

「はい、歯ブラシです。自分で出来ますか?」

「う、うん」


 シャコシャコと、さすがに少し照れながら歯ブラシをするリュエ。うむ、可愛い。


「準備が出来たら、朝からやっていた食堂に行こうか」




「なるほど……お魚はあまり食べてこなかったのですが、美味しいですね。川魚とはまた違います」

「そういえば、イクスは海の傍に住んだことはないのですよね。ウィングレストに住むのならば、港町も近いのですが」

「ええ、初めはエルスの元に身を寄せようと考えていたのですが……色々と自分の生きる道を考え始めたら、それもなんだか違うかな、と」

「むむ、冒険者に復帰するっていうのはどうだい?」

「魔物は現在、減少傾向にあります。そうですね……冒険者ではなく、ギルドの職員としてこれからも研究者として従事するのも良いかもしれません」


 美味しそうにアクアパッツァを食べながら、イクスさんが自分の将来について語る。

 ふむ……ギルドの人間として生きるというのならば……。


「ちょっとオインクに色々聞いてみる。アイツ、去年くらいに何かギルド主導で孤児院を設立するとか言っていただろう? もし人手を募集しているようなら、イクスさんどうだい? 子供の相手に慣れているようだし、強いからいざという時子供も守れるだろうし」


 何気なしにそんな提案をしてみると、対面した席にいた彼女が目を見開く。


「それは素晴らしい! かつてのお母さまのように、子供達を保護し守る役目なんて……若干、私などがそんな素晴らしい仕事に関わることが出来るのか不安ではありますが」

「うん? 天職じゃないかい? 後でオインクに聞いておこうよ」

「ふふ、そうですね。ある意味ではイクスは経験者ですから」


 そういえば、昨日メールしたのにオインクから返事がこないな。

 余程忙しいか、忘れているか、どっちなのやら。




「あのー! 本当に御者を交代しなくて良いのですか!」

「大丈夫だよー! 私これ好きだからー!」

「ふふ、この魔車は速度もありますし、楽しいんだと思いますよ。イクス、たまには人に任せてのんびりしてください。貴女は人一倍頑張り過ぎるところがありますから」

「ですが……はい。分かりました、では少し外を眺めていますね」


 ミササギまでの道中でも、イクスさんはどこかそわそわというか、落ち着かない様子だった。

 何か気を紛らわせる物でもないかとアイテムボックスの中を調べていると、以前ダリアからぶんどった、もとい譲り受けたキャンディーを発見。

 ……とりあえず皆に配っておこう。


「ありがとうございますカイヴォン様」

「イクスさんもそろそろ様はやめよう。なんなら呼び捨てでも構わないよ」

「では……さん、で」

「ふふ、カイさん、私にもキャンディー頂けますか?」

「どうぞどうぞ。曰く、世界樹の内部から組み上げた水と樹液を配合してあるんだとか」

「まぁ……それは貴重ですね」


 ダリアが言うには、魔力と親和性の高い種族にとっては最高のおやつなんだとか。

 リュエにも一個あげよう。


「あ、ありがと。今手が離せないから口に入れておくれ」

「ほい」

「ん!? ほれおいひい! ん、凄く美味しい!」


 片方のほっぺをリスのように膨らませながらそう感想を言うリュエ。

 やはりエルフには特別美味しく感じるのだろうか。

 どれ……イクスさんは……。


「おいしぃ……」

「ふふ、よかったですね」

「ほんとうにおいしぃ……」


 溶けイクス。なるほど、ダリアとリュエ以外のエルフではこうなるレベルなのか。

 一つ食べてみるも、ただ出来の良いメイプル風味の甘露飴にしか感じないが……。


 そんな珍しい様子の彼女を観察しながら、こちらも外の景色を眺める。

 以前はほぼ何もない草原で、ダリア曰く大陸に刻み込んだ術式の大半がこういった何もない平原の下に刻まれているという話であったが、今はその術式が必要なくなった関係か、少しだけではあるが、農地として活用しようとしているのが見て取れた。

 微妙に海から近い場所だが……何を育てるのやら。


「カイくん聞こえる―? もう少しで太陽が真上に昇るから、どこかで休憩しようー」

「ああ、了解。じゃあ確かもう少し進んだ先に、前に川の逆流の時に人が集まっていた場所があっただろう? あそこなら休めるだろうし行こうか」


 そういえば、もうあの波乗り遊びも出来ないんだったな。ちょっとだけ残念だ。

 俺、地球にいた頃はサーフボードとか使った事なかったし。インテリアでしかありませんでした。

 やがて魔車が道を逸れ、そこで停車した。


「おー……今は野営用の広場として管理されているんだね」

「なるほど……しっかり柵もあるし、道具の貸し出しなんかもやってるね。これはもしかしたら、ミササギ行きの旅行者向けの商売なんだろうか」

「あ、そうかもです。従業員の中に獣人の方、フォクシーテイル族の方がいます」

「お、おお……噂に聞く獣人の皆さんですか……なんと可愛らしいお耳でしょうか……」

「あら、イクスはああいう人が好みなのかしら?」

「いえ、あの耳がとても可愛らしいです。動物は好きですが……人に耳だけというのも可愛いですね、とても」


 ふむ、イクスさんは『才能がある』方の人種でしたか。

 ちなみに俺はケモミミ萌えではないです。


「さて、じゃあ野営の準備をして、お昼ご飯を作るとしようか」




「物凄く手際がよいですね皆さん。私が手伝う余地すら……あの、申し訳ありません、お料理の方はお手伝い出来そうにないのですが……」

「大丈夫よ、片付けを手伝えばいいのですから」

「あ、そうですね。洗い物はお任せください」


 申し訳なさそうなイクスさん。なるほど、料理は苦手なのか。少し意外だ。


「あ、そうだ。イクスさん何か食べたい物はあるかい? カイくんがなんでも作ってくれるよ!」

「え……お母様が作るのではないのですか?」

「ふふ、実はカイさん、お料理の達人なのよ? 私よりもすっごく上手なんだから」

「カイヴォンさんが……なんだか畏れ多いですね」

「ふふ、言いにくいなら勝手に私がカイさんにリクエストするわね? カイさん、この子は卵とナス、それとトマトが好きなんですよ」

「なるほど、了解。じゃあちょっと待っていてくださいね」

「う……お願いします」


 なるほどなるほど、卵が好きなのか。ナスとトマトも……ふむ。

 ちょっと変則的な料理でも作ってみようか。


「よーし、じゃあ久しぶりにアレいきましょう」


 そう口にすると、イクスさんと共に見学モードになっていたリュエが隣にやってきた。


「はい、じゃあ……もう何回目か忘れちゃったな」

「新しく旅を始めてから二回目だから、第二回で良いんじゃないかい?」

「よし。じゃあ、第二シーズン、第二回ぼんぼんクッキングを始めたいと思いまーす」

「まーす」

「ふふ、思います」


 イクスさんそんなぽかん顔しないでください。ちょっと恥ずかしくなってくるので。


「これはお約束みたいな物だよ。ただいまイクスさん」

「お、おかえりなさいリュエさん。ぼんぼん……?」

「カイくんのあだ名だよ」


 恥ずかしくなってきた。こう、何かうまい名前はないだろうか。

 BBクッキング? だめだ、それじゃあブロードバンドみたいだ。


「じゃあ今回はちょっとオリジナルレシピになるかな。スパニッシュオムレツ風茶わん蒸しっていう料理を作ろうと思っているんだけど」

「スパニッシュオムレツは知っていますよ、イクスの好物ですから。しかしチャワンムシとは……どのような虫なのでしょう……ちょっと恐いです」

「ああ、違う違う。虫じゃなくて、蒸すっていう意味の蒸しだよ。これは主食たりえないメニューだから、同時進行でパンプティングも作っていこうか」

「了解です、では私は……」

「今から大きな丸パンを用意するから、表面の皮を削って保管しておいて。今度パン粉として活用するから」

「わかりました」


 ミササギが近い事もあり、純和風っぽいメニューにしたいと思います。

 卵液を出汁で割り、そこに具を入れて蒸しかためるという料理だが、それをアレンジしてみる。

 出汁をスープストックに代え、具をトマトとナス、そして鶏肉を炒めた物にするのだ。

 パンプティングは、まるまる一つの丸パンに、卵と牛乳、バニラビーンズと蜂蜜を加えた液に付け込み、闇魔法で囲い凝縮、強引に内部に液を染み込ませる。

 後はじっくりとバターで蒸し焼きにするだけだ。


「と、いうことで後は待つだけになりましたとさ」

「ふふ、相変わらず凄い手際ですね。冷たい紅茶を作りましたので、少しみんなで休憩しましょう?」

「お母様、魔法が上達したのですね……以前は小さな氷の粒を出すか、種火を出すくらいしか出来ませんでしたのに」

「そういえばイクスには見せていませんでしたね? ふふ、今の私は魔法で戦う事も出来るんですよ?」

「ほほう……さすがお母様です」


 レイスのお茶を飲みながら、親子の親睦を深める二人を眺める。

 いいものだなぁ、家族って。


「ちょっと羨ましいね?」

「リュエ。ああ、そうだね。そうか、イクスさん、昔はレイスと組んで冒険者をしていたんだったね」


 母に魔法を見せてと強請り、レイスもまた、何もない空き地へ向け、魔法を放つ。

 嬉しそうに、楽しそうに。そんな二人を見ているのも、なんだか楽しくて。


「……なんだか組手を始めちゃったよ?」

「ははは……ってイクスさん強いな」

「ジニアちゃんの師匠なんだよね、強くて当然じゃないかい?」

「ああ、確かに……そうか、レイスが独学で格闘術を修めていたんだから、当然彼女も納めていたのか……」

「手足に濃い密度の魔法を纏っているね。たぶん、当たったらレイスでも怪我しちゃうかも?」

「おいおいおい、ちょっと止めてきてリュエ」


 なんて物騒な! いや、でもそれくらい本気で訓練をしていた仲だったのか……?

 とりあえずリュエに停められている二人を見ながら、料理の様子を確認。


「お、固まったな。今回はどちらもプルプルな食感で統一したけれど……気に入ってくれるかな」


 完成した料理をテーブルに運ぶと、イクスさんがまたもひどく申し訳なさそうにしていたので、とりあえず『運ぶまでが料理なので構いませんよ』とだけ言っておきました。

 そうか……なんだか勝手にイクスさんの事を大人の女性だと思っていたが、考えてみれば……アマミと同い年なんだよな。つまり人間換算だと二〇半ば程度なのか。

 なら、当然の反応だ。あまり会えない母親と一緒なのだから、な。




「こ……こんなに美味しい物は食べたことがありません……ふるふると柔らかく、卵の優しい味が……中から出てきたトマトの酸味がこの柔らかなふるふると合わさり……」

「ねー! プリンみたいだけど、全然違うね! おいしいねぇ」

「まぁ……凄く上品な味ですね……」


 好評でした。我ながら中々良いレシピだな、後でノートに書き加えないと。


「パンプティングだっけ、こっちも美味しいねぇ……上にかけてあるの、メイプルシロップって言うんだっけ? この味、なんだか凄く好きだよ私。甘いだけじゃない……なんだろう」

「なんというか、どこかカラメルにも似た風味がありますね。確かエンドレシアの特産品でしたっけ……」

「らしいね。俺が向こうにいた時は知らなかったけど、ちょいちょい他の大陸で売っているのを見たよ。もしかしたらリュエのいた森でも採れるかも」

「な、なんだって!? こんな美味しいものが……」

「ほほう……パンプティングは食べたことがありますよ、私も……なんと、私が食べた物とは比べ物になりません……本当に上手なんですね、お料理が」


 久しぶりに、身内だけで料理をして食べた気がする。やっぱりいいな、こういう時間。

 そういえば以前使った鮫がまだ残っていたなぁ……今度あの時のレイスのエピソードを添えて振舞おうか。


「ふぅ……美味しかったです。そういえば私は船に乗った時、何も食べずに眠っていましたので、昨日からずっとお腹が空いていたんですよね」

「あ……そうか、昨日はあんまり食べていなかったけれど、我慢していたのかイクスさん」

「もう……イクス、もう少し自分の希望を言っていいんですからね? たくさん食べたい時はいつでも言いなさい? お母さん、食べ物沢山持っていますから」

「はい、お母様。ふふ、お母様は昔から沢山食べる人でしたが、今はもう食べ物に困っていないのですよね。嬉しいです、それが」


 ああ、レイスがその言葉に感動してイクスさんを抱きしめた。

 そしてイクスさんが本気でタップしてる、呼吸が出来ていないみたいなのでやめてあげてください。






 夕方。昼休憩を終えて移動し始めてから三時間程で、ミササギの都のある山の麓までやって来た。

 丁度夕方ではあるが、ミササギは周囲を山の斜面に覆われている関係か、暗くなるのが早いのだ。故に、ここからはラストスパートとして少し急ごう。


「確か前回は式典の関係か宿泊施設が閉鎖されて伏屋に泊まったんだったか。今回は営業中だろうし、アギダルで泊った旅館みたいな場所を探そうか」

「アギダルの旅館というと、物凄く高級な事で有名ですね。あの、さすがにそんな場所に泊まるのは……私だけ他の宿に……」

「大丈夫ですよイクスさん。こう見えても俺、結構甲斐性あるんです。奥さん二人に義理の娘一人、何年だって泊まれる程度には」

「む、娘……」

「すみません調子のりました。ごめんなさい」

「い、いえ……娘……ふふ、父親ですか。なんだか不思議な感じです」


 俺もそう思います。しかし娘か……はは、なんだかそう思うと照れてしまうな。


「じゃ、じゃあ私の事もお母さんでいいよイクスさん!」

「リュエ様は……お母様と言うよりは……」

「リュエ、さすがにそれは無理がある」

「むー、それもそっか」


 などと笑いながら道を行く。

 以前街の中を見て回ったおかげか、ある程度の地理が頭に入っているので宿のある場所には見当がついている。

 どんどん街の灯りが灯っていく中、ようやく魔車が高そうな旅館の前に到着したのであった。


「ちょっと代表して泊まれないか聞いて来るよ」


 こういう場所は、事前予約がないと満足なサービスを提供出来ないから、と、当日にいきなり宿泊するのが難しいものなのだが、さて、この世界でもそうなのだろうか?


「すみません、少し宜しいですか」

「はいはい、どうなされましたか?」

「実は、先程この都市に着いたのですが、予約が無くてもここに泊まる事は出来ますか?」

「ええと、今日この時間からとなると、それこそ寝床を提供することしか出来ませんが……それでもお代の方は通常通り頂く事に……」


 やはりそうか。しかしまぁ、この領地には最低三泊はしたいので……。


「今日から三泊、四人で泊りたいと考えています。部屋の方は……この山中にある別館の部屋を利用したいのですが……」


 そう告げると、目の色を変えた受付の娘さんが、建物の奥から女将さんと呼ばれた女性を連れ出して来た。

 いやぁ、さすがに値段が値段なのか、少し困惑気味だった様子が一転、『是非泊ってください』という歓迎ムードに変わってくれた。

 現金な話ではあるが、それがいい。サービスと金額は比例するのが世の常だ。




「おお! これが噂に聞くタタミですか! 良い香りです……落ち着きます」

「ふふ、私もこの香りが好きなんだ。イクスさんこれ、これザブトンって言うんだ。飛ばして遊ぶものなんだよ」

「なるほど、柔らかいので当たっても痛くありませんね」


 シュシュっとザブトン手裏剣で遊ぶイクスさんの姿に、つい噴き出してしまう。

 リュエ、ナチュラルに嘘を教えるんじゃありません。


「――リュエ様、ひどいではありませんか」

「ほ、本当に遊ぶ物だと思っていたんだよ……クッションにもなる道具かと……」

「さ、とりあえず食事の事を考えようか。さすがにここの旅館も急に料理を増やす事も出来ないって話だから、ちょっと知り合いのやっているお店に行こうかと」

「知り合い?」

「あ、もしかして以前カイさんが働かせて貰った……?」

「そ。人気の店らしいけど、ダメ元で行ってみようか」


 いやはや懐かしい。

 この都市は一年でそこまで変化していないように見えるが、前回は式典の関係で無駄に豪華に飾り付けられていた建物が、今は大人しくなっているので、幾分……京都っぽさが増しているような気がする。

 はは、懐かしいな本当に。京都旅行、か。


「では荷物を置いたら出発……いえ、そういえばお母様に預けていましたね。いつか、その収納の魔法も解明出来たら便利だろうな、とは他の研究者の方々も言っていました」

「そうね、これだけは本当に助かっているものね。ふふ、昔荷物の運搬の依頼で荒稼ぎした時代もあったわね、イクス」

「ふふ、懐かしいですね。確かギルドから色々と疑われるようになり自粛したんでしたね」


 なんと。中々に色々な経験をしてきているんだなレイス。

 ……この世界に来て直ぐの頃、ちょっと俺も考えていたんですよね。

 ただリュエ曰く『非情に希少な力で、利用されるたりするから危険だ』とか言われたが……まさかそれも経験則だったりするのだろうか?


 知り合いの店、もといシミズさんが料理長を務める料亭『紫水庵』へと向かうと、予想とは裏腹に、行列が出来ている訳でもなく、ただ立派な門が静かに来客を待ち構えているような風体だった。

 そうか、俺いつも裏口からしか入っていなかったもんな。ここって完全予約制だったのだろうか……これじゃあ入れそうにないが……ダメ元で行ってみるかね。


「それじゃ今回もちょっと代表で受付行ってきます……ダメそうなら他の店って言いたいところだけど……時間も遅くなるし、作り置きの料理でガマンしてくれるかい?」

「我慢もなにも、私達がしまった料理って時間が止まってるよ? 実は私のアイテムボックスには私の家でカイくんが作った料理も隠してあるんだけど」

「まじでか! すごいな、あとで少し分けてくれ」

「えー! ……まぁまた作ってくれるなら」


 なんと、あの時代から君はそんないやしんぼさんだったのか。

 ともあれ、料亭ののれんをくぐり、いざ店の中へ。

 どうやらここの受付はフォクシーテイルの女性らしく、毛の色は栗色だ。


「すみませーん……四人なんですが、お部屋は空いていますでしょうか……」

「申し訳ありません、当店は完全予約制でして――って、あら? 貴方『ぼん兄さん』ではありませんか!? どうしたんです、こんな突然! ちょっと板長と話してきます!」

「え? ぼん兄さんってなんですかそれ――」


 行ってしまった。ぼん兄さんってなんですか、まさかそんな名前で呼ばれてたんですか俺。

 ここに通っていた時はたしか……あ、あの時周りに『ぼんさん』って呼ばれていたわ。

 アリシア嬢の影響ですね、わかります。


「カイヴォン殿! カイヴォン殿ではありませんか! どうしたのです!」

「あ、シミズさん。いえ、ちょっと旅の途中でここに滞在する事にしたのですが、食事を摂ろうとダメ元で立ち寄ってみたのですが、予約制だったのですね、すみません、また後日お邪魔させて頂きます」

「そんな事を言わず食べて行ってください。少々料理の提供にお時間を頂きますが、是非! 失礼、この方達を奥の間にお通しなさい。オーナーには私から言っておきます」

「分かりました。四名様でしたね。どうぞ、お連れの皆さまと一緒にご案内させて頂きます」


 言ってみるもんです。早速外の三人を呼び、料亭の奥へと案内されるのだった。




「おお……完璧な和室……アギダルの旅館を思い出すな……」

「ここって美味しいご飯が出てくる場所なんだよね!楽しみだなぁ」

「ここはアギダルで食べられているという、異世界の食事に似たお料理が食べられるのですね……少々緊張してしまいます」


 案内された部屋の調度品や飾られている掛け軸に目を凝らしていると、店員の女性がお茶を持ってきてくれた。そういえばここ、お茶の産地だったっけ。


「これは緑茶と言うのですよイクス。初めてですよね?」

「はい。紅茶の淹れ方は学びましたが、これは初めてです。色が緑というのは少々慣れませんが……良い香りです」

「ありゃ? これって前はもの凄く甘くなかったっけ?」

「それは間違った認識だよリュエ。本来砂糖は入れないものなんだ」

「えー……甘い方が私は好きなのに」


 後で抹茶オレでも作るんで我慢してください。ダリアめ……お前の所為でこの領地に甘い緑茶なんてものが根付いてしまったじゃないか。

 お茶の感想を言い合いながら、この都市についてイクスさんに説明している間に、料理が運ばれて来た。

 コースとして一品ずつではなく、全ての料理が一度に運ばれてきたが、その方が助かる。

 お腹が空いているんです。懐石コースだとご飯系が最後の方に出てくるので辛いんです。


「わぁ! カイくんテンプラだ! テンプラがあるよ! 私これが好きなんだ!」

「おお……川海老と山菜のかき揚げか。これは美味しそうだ」

「相変わらず色彩豊かなお料理ですね……盛り付けの冴えが際立っています」

「これが異世界の料理……あまり思い出したくはありませんが、あの男の屋敷にいた時も、ここまでの料理を見た事はありません……なんと美しい……」


 すると、料理を運んでくれた店員ではなく、なんとまさかのシミズさんが直々に料理の解説をしにきてくれた。


「失礼します。お料理の解説をさせていただきます。まずは先付けの『川海苔と若竹の白和え』でございます」


 いやぁ畏れ多いです……しかし俺が残していった基本的な和食のレシピが、見事に独自の工夫が凝らされた一品に昇華されていたので、とても楽しく新鮮な食事だった。

 そうして一品、また一品と料理が解説され――


「――そして今回は略式ですので、こちらの焼き物で〆となります。大海老のアギダル風テルミドールとなっております」

「おお……ホワイトソースの代わりに……これは豆腐と味噌、木の芽と卵黄のソースですか」

「ふふ、さすがカイヴォン殿、香りだけで分かりますか。こちら、ノクスヘイムで水揚げされた『ライジングシュリンプ』の身を炭火で炙り、豆腐とアギダル産の味噌、そしてエンドレシアより取り寄せた酒を使ったソースであえております」


 ……口には出さないけど『うめぇ』しか出てこないくらい美味しいです。

 凄いな……さすが本職の一流店。素材のこだわりが俺とはくらべものにならない。


「プリプリで香ばしいねー!」

「これはベシャメルではなく……確かにアギダルで食べたお味噌の香りがしますね。それに仄かな緑の香りが……」

「……微かな甘い香りが……これが異世界料理……料理人さん、私は初めてこういったお料理を口にしましたが、とても美味しいです。人の手がここまでの物を生み出せるとは、感服しました」


 いやまったくその通りです。いやぁ美味しい……頭が冴えてくるような鮮烈な美味さだ。


「これも、偏にカイヴォン殿が我々に貴重な知識を残して行ってくれたお陰です。ご満足いただき、とても嬉しく思います」

「いえ、こちらこそ俺のつたない知識をここまでの品に昇華して頂き恐縮です。ありがとうございます、シミズさん」

「いえいえ、ではどうぞごゆるりとお楽しみください」


 彼が去り、少しだけ緊張がほぐれる。

 いやはや、あのクラスの本職の人間がいると、どうしても緊張してしまうのだ。


「カイヴォンさんは、こちらの料理人の方とお知り合いなのですね」

「ふふん、実はカイくんはここの料理人集団と勝負して勝ったこともあるんだよ!」

「いや、あれは条件がよかったんだ。純粋な技術の高さでは勝てないよ」

「しかし、カイさんは知識と工夫、そして手際の良さで先程の料理長さん達に認められ、このお店でその知識を伝授するまでになったんですよ」

「なんと……カイヴォンさんが料理をする姿には驚かされましたが、まさかそこまでとは……ふふ、しかし思えばカイヴォンさんは、アルヴィースの街でも保護区の皆さまにお料理をふるまっていましたね。……懐かしいです」

「あ、そういえばあの保護区って今はどうなっているんですか?」


 イクスさんは一時期あの領地を統括する立場にもなっていた筈。

 聞いてみたところ、初めの半年程は暴走する魔族の姿も見られたらしいが、徐々に事件も減り、ヒューマン保護区は新たな家が建ちならぶ住宅街となり、平穏を取り戻したという。

 レイスの初代『ぷろみすめいでん』も、今は子供達が手芸を学ぶ教室となっており、他の住人の方々との交流の場にもなっているのだとか。


「私はカイヴォンさんが残した政策を引き継いだだけですよ。評価されるべきはイル様でしょう。彼女のお陰で、アルヴィースの街は子供の集う遊具の街へと変わりつつあります。大きな公園や玩具の製作所、子供の為の施設が増えているのです」

「へぇー! 楽しそうだね、私もいってみたいなぁ」

「まぁ……あの街が子供の為の街に? ふふ、なんだか感慨深いわ」


 その後の街の様子を聞き懐かしい光景を思い出しながら、静かに食事が進んでいく。

 いやはや……釜めしがとてもうまい……鮎に似た川魚の焼いた身がまぜられているのだが……ううむ、いつかダリアやシュンも連れてきたいな。






 翌日。宿で布団を並べて眠っていたのだが、俺の腹を枕にしている人物が。

 隣にいたのはリュエのはずだが、この子は本当に寝相が――


「何故イクスさんがいるし。端っこの方で寝ていたはずなのに」


 そっと抜け出し、今回も一人部屋の外に。

 さすが高級旅館、お洒落で雅なラウンジが用意されていたので、そこから山の風景を眺める。

 太陽が徐々に山から顔を出し、都を照らしていく様がよく見える。

 ううむ……この景色の為だけにここに泊まる価値があるな。


「ふぅ……落ち着くな」

「そうですね。この建物の独特の装飾は、不思議と落ち着きます」

「っと、おはようございますイクスさん」

「おはようございます。申し訳ありません、気がついたらとんでもない場所で眠っていました。やはり広い場所で眠るのは苦手です」

「はは、大丈夫ですよ。気にしないで下さい」

「今日からはそうですね……押し入れなるスペースで寝ましょう。あの場所はかなり寝心地が良さそうです。きっと私のような人間の為に用意されたのでしょう」


 ノーコメント。リュエが前に同じような事を言っていた気がする。


「今日はちょっとみんなが起きたら俺だけ領主のところに届け物に行ってきますので、三人で観光を楽しんできてくださいね」

「お届け物……そういえば、皆さんはこの国の各領主様と面識があるのですね」

「ええ。以前ここを旅した時に、色々と……この大陸の根底にある問題に首を突っ込んじゃったので」

「ふふ……そうですか。思えば、皆さんはそうして行く先々でトラブルを解決してきたのでしたね。……お母様や私も、それに救われました。改めてお礼申し上げます」

「いえいえ。俺は俺とその周り、そしてさらにその周りの大切な人を守っただけです。それにたまたまイクスさんが含まれていただけ、ですよ」

「ええ、そういう事にしておきましょう。……貴方は、随分と広い間合いを持っていらっしゃりますから、ね」


 そう、シニカルな、けれどもどこか優し気な笑みを浮かべた彼女が部屋へと戻る。

 はは、さすがに俺じゃああの人の親にはなれないな、俺よりずっと大人だ。








「やー……これくらいなら伝書の魔物を使えば済む距離でしょうに、あの人は人使いが荒いですねぇ。ですがお陰でぼんさんが来てくれたと思えば……?」

「まぁどの道ここに寄る予定だったからね。久しぶり、アリシア嬢」


 ぱっと見名古屋城な領主の館へと向かい、領主代行として居残っているアリシア嬢に件の手紙、ヴィオちゃんに託されたソレを手渡す。

 どうやら領主であるコウレンさんは、それこそ今都に住む貴族……旧家と呼ばれる人間達との会合の為、都内にある料亭に足を運んでいるのだとか。

 まさか昨日俺達が行った店だろうか。


「ははぁ……以前から誰かしらうちの領内の者もエルダインで非合法な行為をしていたとは噂されていましたが、ようやく尻尾を見せ始めましたか。まったく……母様が即処断するでしょうねこんなものを見ては」

「ん、俺の助力は必要ないかい?」

「大丈夫じゃないですか? 恥さらしな人間をはじき出し処断するのは得意ですからね、我々」

「おっかないな……じゃあ俺に何か手伝える事はないのか?」

「おや? 今回は随分と協力的ですねぼんさん。やはり時間に余裕があるからですか?」

「そうだね。三日程滞在するつもりだよ。今未来の義理の娘と旅をしていてね。ここを案内してあげるつもりなんだ」

「なんですと! 義理の娘ですか! となると、リュエさんかレイスさんは実は子持ち!?」

「ああ、レイスは昔孤児院のような事をしていてね。その時の養女の一人とこの大陸で再会したんだ」

「ほほー、それは立派ですね。我が領地にも孤児院というか、幼い身寄りのない子に術を学ばせ、働き口を紹介するという施設がありますが……やはり良いものですよね、子供って」


 アリシア嬢が、しみじみとそんな事を言いながら、うんうんを首を縦に振る。

 意外だ。かなりスケベなお狐様だと思っていたのだが、こう、母性本能のような物も持ち合わせていたとは。


「ぼんさんぼんさん、協力できること、一つありましたよ! 子種をください!」

「一瞬で評価ひっくり返ったわ。嫁入り前の娘がそんな事言うんじゃありません」

「えー! いやぁ……次代で優位に立つには優秀な子孫が必須なんですよねぇ……まぁ半分冗談です。そうですねぇ、手伝いと言いますか、私からも一つ伝言もとい、書状を一通運んでもらいたいと言いますか」

「ん? なんだ、それこそ伝書魔物でも使ったらいいんじゃないか?」

「いえ、魔物では届けられない場所なんです。ほら、以前ぼんさんの紹介で共和国の会合に参加した『隠れ里』の里長さん、彼女への書状なんです」

「里長への? ちょっと内容を聞いてみても?」


 あの場所は今も隠れ里と呼ばれてはいるそうだが、一応、その存在だけは知る人ぞ知る地となり、その特殊な土地のお陰で極上の作物がとれるからと、少し話題になっているらしい。

 で、アリシア嬢もとい、コウレンさんが、あの場所の畑の一角にこの領地の茶葉を植えてみて欲しいとのこと。

 採れた茶葉の品質次第では最高級品として取り扱い、取り分の三割を譲るとかんなんとか。


「結構アコギと言うか……三割って……」

「ぼんさん、うちの茶葉舐めて貰っちゃこまりますね? キロで四〇万はくだらないのですよ? それがさらにあの土地でうまく育てば、その価値は計り知れません。その三割ですよ?」

「マジでか! 茶葉には詳しくないんだよ俺……それこそレイスとか、その娘さんの方がその道のプロなんだよなぁ」

「ほほう、それは良いことを聞きました。是非我が領地の茶の苗を見て貰って、セールスポイントを見つけて貰わないと。試供として完成した緑茶葉と苗木も渡しますから」

「了解。じゃあこれで終わりかな? それならそろそろ俺も観光に戻るけれど」


 俺も一緒になんちゃって京都を見て回りたいのです。俺が伝えた知識がどう変化して伝わっているのか、それも是非確かめてみたい。


「あ、最後にもう一つ。新しい油揚げのお料理のレシピくださいな。そろそろマンネリ気味なんですよねー」

「えー……んじゃソバ稲荷で」

「ほう! なんですかそれは! 是非作っていってくださいよ!」

「言い出したのは俺だしなぁ……OK分かった。材料とかはこの城に……」

「ソバと油揚げならありますよ?」

「さすがにあるか。んじゃ厨房少し使わせてくれアリシア嬢」


 つい流れで厨房へ。そば稲荷か。そういえばこの世界に来てからそばって食べてなかったな。ちゃんと存在はしているのだが、ついつい選択肢から外れてしまっていた。

 とりあえず自前のかっぽう着に着替え、厨房へと向かうのだった。






「はい完成。結構簡単に作れるんだよこれ」

「本当にあっというまですねぇ。そばを入れただけで美味しいのですか?」


 稲荷の油揚げは、通常通り甘めの味付けだが、中のそばは甘さ控えめの醤油味で、強烈に出汁をきかせてある。外の甘みと中の醤油味と出汁の味が合わさって完成する味付けだ。

 小さく刻んだネギと海苔も混ぜ込んであるので、作る手間がそうでもない割に、口に入れた時の味の複雑さが凄いのだ。そばのプリプリの歯切れの良さも相まって、どんどん次に手が伸びてしまう魔性の一品である。

 ……懐かしいなぁ、学生時代よく買い食いしたっけ。


「悔しい! こんなに簡単そうなのに手が出ちゃいます!」

「なー、これ美味しいんだよ。稲荷寿司より気軽にパクパク食べられちゃうし」

「止まらない……止まりません! いやぁ、このレシピうちに置いて行ってくださいね。きっと母様も気に入ると思いますから」

「了解。じゃあ幾つかお土産にもらったから、今度こそ俺はお暇するよ」

「ようふぁいしまひは」

「食べながら話すんじゃありません」




 ミササギの領地は、結界の影響で一年中春のような気候なのだが、やはり今の季節が本当に春に近い関係か、街の中で見かける住人の皆さんも、心なしか浮かれているような、楽しそうな様子だった。

 やっぱり春はテンション上がるよな。なんでかわからないけど。


「さて、リュエ達はどこにいるのかな」


 困ったときのメール機能。地味に助かる、こういう時。

 送信を押してから返事が来るまでわずか二分足らず。そこには『お茶畑に向かう山道の途中にある甘味屋さんにいるよ』との文が。

 なるほど、そういえば人気のアイスがあるとか言っていたな。


「さてと……明日と明後日、もう少しここを観光したら、隠れ里に行かないとだなぁ」


 久しぶりのあの場所は、どんな風に変わっているのだろうか? ただ内心、そこまで変わって欲しくないという二律背反にも似た思いもあるのだが。




「お待たせ、三人ともお昼はもう食べたかい?」

「おかえりなさいカイさん。ええ、先程ここのお店で頂きました」

「うん、ここって甘味だけじゃなくて、軽い食事も出来るんだってさ。私は天丼を食べたよ」

「私は稲荷寿司を頂きました。カイさん、今ではこのお料理は都のどこのお店でも食べられるようになったそうですよ」


 件の甘味屋では、三人それぞれがお茶を飲みながら、山の斜面に咲いている一面の芝桜を眺めながら、まったりとした空気を醸し出していた。


「私はタマゴドンというものを頂きました。良いですね……ここの料理は卵が多く使われるメニューがあるみたいです」

「確かに言われてみれば……」

「イクスさんイクスさん、なら今度私が温泉卵を作ってあげるよ」

「温泉卵……? 温泉の卵とは一体……」

「ふふふ……魔法の茹で卵だよ。びっくりするからね、初めて食べた時は」


 ああ、懐かしいなぁ……確かアギダルで作ったっけ。

 リュエが俺の隠していた卵を見つけて、それを勝手に沸騰している方の温泉にいれちゃったんだったな。あれではただの茹で卵になってしまう。


「ふふ、楽しみにしておきます。世界には沢山の食べ物があるのですね、お母様」

「ええ、そうですよ。旅の間、色々と食べたことのない物を一緒に食べに行きましょうね」


 慈しみを込めるように、レイスがイクスさんに微笑みかける。

 ……そうだよな。再会してから、またすぐにレイスは俺と旅に出たんだ。今回はたっぷりと親子の時間を過ごしてくれるといいな。


(´・ω・`)暇人魔王10巻、好評発売中です

あと電子版も今だとkindleとかDMMでも一月遅れじゃなくて普通に同日発売なのね

前はBookwalkerだけだったのに

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