後日談 サーディス大陸編4
(´・ω・`)一部は書籍版の設定に準じています
「なんだ、もう戻るのかいナオ君」
「はい。僕の決断を、思いを早くスティリアに伝えたいんです……」
翌朝。ナオ君が急に帰国すると言い出した。
即断即決もいいとこだが……昨夜自覚した自分の情熱、気持ちをいち早く伝えたいのだろう。
そんな彼の様子に、見守っていた女性人達全員が、どことなく嬉しそうな、羨ましそうな表情を浮かべていた。
「いいですね、あんな情熱的な人が旦那さんだなんて……」
「……私はよくわからない。アリナは……羨ましそうだね」
「そ、それはまぁ……けど、あの人美人過ぎて奥さん落ち着かないんじゃないかしら」
――とはレン君のところの三人娘の談。大丈夫、奥さんもっと美人だから。
「結婚ねぇ……私は良いかなぁ……牙が鈍りそう」
「まぁヴィオちゃんが子供を育てるお母さんになるってのは、中々今は想像出来ないね」
「でしょ? 私は一代限りの最強の領主になるよ。元々世襲制でもないしさ」
「……俺は、正直いろんな面でナオが先へ進んでいて、少し羨ましいな」
「君だって成長しているさ。それは、他でもない俺が一番よく知っている。出会いがあんな感じだったんだ。その俺が保証する」
「はは……なんだか遠い昔のような気がしてくるな」
「それだけ成長してる証だと思いな」
そうして、ナオ君が足早に魔車へと乗り込み、そして窓から顔を出す。
「レン、それに皆さんもまた今度セカンダリア大陸に遊びに来て下さい!」
「ああ! スティリア嬢とケン爺にもよろしく伝えておいてくれ!」
「はい! では、慌ただしいですがこれで失礼します!」
「じゃあなナオ! 俺も、お前みたいに頑張るから!」
彼が去った後には、少しすがすがしいような、そんな爽やかな空気だけが残った。
……みんな、変化していく。そして、決断をしていくのだ。俺も色々、決める事が増えてきたな。
「……さてと。俺達もそろそろ移動するかな」
「ん、カイヴォンもどこかへ行くのか?」
「ああ。今、旅してきた場所を巡って、エンドレシアに戻る最中なんだ」
「そうだったのか……俺は、どうしようかな。ここで少し修行もしたい反面、そろそろエンドレシア王に報告したい事も増えているし……」
そうか、レン君は元々七星のヒントを得る為にセミフィナルに渡ったんだったな。
……この辺りは俺が直接王に話しをした方がいいか。
「俺が、七星うんぬんの話をエンドレシア王にしておく。君は要請があるまで自由にしていていいんじゃないか?」
「あ、そうかカイヴォンは七星の謎を追っていたんだよな。色々解決したって事でいいのか?」
「ああ。だからまぁ、君を縛る物もほとんどないさ」
「そう、か。……じゃあ俺はここで少し修行したら、また旅を続行するかな。全部、全部見てみたいんだ。お前が旅した世界をさ、全部」
「くく、そうかい。じゃあ、ぶらり旅をする権利を君にあげよう」
「なんだよそれ。けどぶらり旅か……いいな、自由って」
ああそうさ。自由に旅をするのは、最高に楽しいのだ。
「なーに男同士で盛り上がってるのよレン」
「アリナ。いや、改めてみんなと旅を続けられるのが嬉しくてな。ここで少し経験を積んだら、また旅に出ような」
「……ええ、そうね。なんだか一日で少し変わったわね、レン」
「そうかもな」
ああ、まったく……眩しいな君達は本当に。
「カイくん、なんだか嬉しそうだね」
「ふふ、思うところがいろいろありますか?」
「はは、まぁね。……じゃあ、俺達もそろそろ次の目的地でも決めようか」
ヴィオちゃんにそろそろ出発する事を告げると、ついでにミササギに手紙を届けて欲しいと言われ、何やら厳重に封がされた手紙を預けられた。
なんでも、エルダインとミササギは元々同じ獣人の国が分かれた物らしく、その時の貴族の一部がミササギで今も続いており、さらにその一部が今回の放火などを含めた破壊工作に関与している可能性があるのだとか。
まぁミササギは色々水面下のやり取りが多そうだしなぁ……あのなんて言ったか、アリシア嬢達の一族を失脚させようとしていた人間もいたし。……ヒモロギだっけ?
「ルート的には先にノクスヘイムへ向かい、その後ミササギへと向かう事になりますね」
「だね。ノクスヘイムはかなり発展してるって話だし、楽しみだ。一泊するなら俺は是非とも水上コテージに泊まりたいな」
「あはは、カイくんあの宿物凄く気に入っていたもんね」
「そりゃあもう。もし家を建てるなら、ああいう感じが良いよ俺は。そうだなぁ……リュエの家の近くの川に、別荘みたいな感じで、川釣りしながら寝たり、水の音を聞ける寝室なんか作りたいな」
「おー! いいね、夢が膨らむね!」
「確かに……それは魅力的ですね……」
まぁ、エンドレシアで公爵になるって話もあるから、そこらへんも色々考えないとだけど。
……確か北方を治めているのは、俺が昔金をふんだくった辺境伯だったよな。オインクが更正するべきか色々と考えていたようだが。
「じゃあ、ノクスヘイムに向けて出発しようか」
「よーし、じゃあ出発!」
「ふふ、行きましょうか!」
ノクスヘイムはここから魔車で三日の距離ではあるのだが、一日の大半を移動に費やしたお陰か、二日で到着する事が出来そうだった。
そろそろこの世界にも汽車程度なら生まれてもおかしくないとは思うのだが、どうなのだろうか? 蒸気機関の研究もされているはずなのだが。
「ん、海の匂いがしてきたね。もうすぐノクスヘイムかな」
「思ったよりも早くついたな……ファルニルめ、良い魔車奮発したな」
「そうだと思いますよ。車輪周りなどはセカンダリア大陸で見た物と同じでした。恐らく緩衝はセミフィナルの技術でしょうね。高い技術の結晶です」
「なるほど。リュエ、御者変わろうか?」
「ううん、このまま町まで行くよ」
そして、リュエの言う通り仄かに潮の香りが漂う中、以前とは違い気持ち優しい日の光に照らされながら、ノクスヘイムへと辿り着いたのであった。
「じゃあ今回もどこかに魔車を預けてから散策しようか。相変わらず階段も坂も多いからね」
「そうだね。……前に来た時より人多いよね?」
「ええ。前回は水害で一部の居住区画から人が避難していましたが、今回は見た限りですと、空き家や空き店舗も見当たりませんね」
「なるほど……ん、そもそも町が大きくなってないか……? 前はあの辺りは崖だったはずなのに」
見れば、元は切り立った崖だったはずの場所も、岩をくりぬいたかのような家が立ち並ぶ居住区のようになっていた。
こりゃ相当人口も増えている、か?
「ま、まず先に宿をとってから見て回らないかい? 何事も拠点は大事だろう?」
「ふふふ、カイさんったら……分かりました、先にあの宿に行きましょうか」
「水上コテージだね? 確か一番下の方まで降りて、海沿いに移動するんだよね」
「ああ、行こうか」
逸る気持ちを抑えながら、足早に階段を下り、この夏の到来を待ち構えるような爽やかな海の町を駆け抜けるのであった。
「……そんな……馬鹿な話があるか――」
「カイくん……」
「カイさん……」
どこにも、なかった。
海辺にあったはずの桟橋、コテージ、その全てが撤去されていたのだ。
陸上にある、同じオーナーが運営している宿の受付小屋へと向かい、話を聞く。
「お客さん、たしか前に氷の堤防作った人だったね? いやあ……本物の堤防ならよかったんだがねぇ。港が改修されて大型船が停泊するようになっただろう? あれで波や騒音が大きくなってねぇ、もう水上コテージの提供が出来なくなったんだ、すまないね」
「……そう、ですか。では空いている普通の部屋を一つお願いします……」
「あ、ああ……そうか、そんなに楽しみにしていたんですね……確かにうちの目玉でしたからね。っと、一部屋で良いんですよね? 丁度最後の一部屋でした」
「そうですか」
全身の力が抜け、ふらふらと外へ向かうと、リュエとレイスがまるで病人を気遣うように話しかけてきた。
「仕方ないよカイくん……大きい船が来たら、波が立っちゃうから……」
「はい……丁度今も一隻近づいてきています。カイさん……元気を出してください、美味しい物、食べに行きましょう?」
「……そうだね。でもその前に一応……自由騎士団の支部に行こう。港町の支部からなら外大陸に通信可能だから」
「うん? カイくん、メール使えば? 誰に連絡するつもりだい?」
「あ……そうか、それがあった」
「どうしようカイくんがもうダメダメだ……元気出しておくれよ、ほら、シャキっと!」
いやぁ……想像以上にショックが大きいんですわ。移動中ずっとそのことばっかり考えていたんだよ。
『今日は晴れているし、きっと綺麗な景色を見られるぞ』とか『釣り糸たらしてハンモックで寝るっていうのもいいなぁ』とか、妄想していたんです。
「それで、どこに連絡をしようとしていたんですか?」
「ん……なんだっけ……ああ、オインクだ。レン君とナオ君について連絡入れようと思ってね。それと俺達が今サーディスにいるって事も伝えておこうと」
「なるほど。オインクは今とても忙しいと言っていましたが、メールでしたら送っておけますからね」
とりあえず送るだけ送っておこう。レン君とナオ君と会えた事、そしてその結末や、レン君がそろそろ七星について王に報告したいと言っていた事。
最後に、俺が自らエンドレシア王に事の顛末を伝える気だということを。
「よし。じゃあ……どこに行こうか。あまり遠くには行く元気がないけれど」
「うー……ご飯食べてシャキっと! ほら、新しくなった港に行こう? お店も増えてるって言うし、ほらほら」
「これは重症ですね……」
以前よりも遥かに拡張された港は、確かに広くなった半面、海水浴場として賑わっていた浜辺や遠浅で水遊びが出来た海域も潰れてしまい、少しだけ寂しい風景になっていた。
が、その反面大きな港には今丁度客船が到着し、多くの人間が降りてきているところだった。
ふむ、人が増えても遊べる場所が減っては意味がないのではないだろうか?
「あれ? みんな向こうの方……岩場で覆われた方に行ってるね」
「もしかして観光客用の遊び場が新たに作られているのでしょうか?」
「ふむ……ならあっちに水上バンガローは……ないだろうなぁ」
ガイドらしき人からパンフレットを一つ頂戴してくる。
どうやら岩場の向こうに新たにリゾート用の浜辺が作られたらしく、お店も向こうの方に集中的に出店しているのだとか。
この港はただの玄関口として、商業的な手続きの為だけに使われているそうだ。
そして残念ながら、水上バンガローはないようです。
「はぁ……いや仕方ないって分かっちゃいるんだ。ああ、分かっている」
「ほら、ここのお店行こう? 串焼きとかき氷のお店だよ。美味しい甘味だよ、ほらほら」
「ああ、そうだね。食べよう……」
「ダメ元で、復活出来ないか提案してみましょう。観光の目玉にもなりえますし、ね?」
「ああ、そうだね。そうしよう」
そうだな、今は無理でもそのうち……絶対にあれは観光名所になりえる物だ。
気分を切り替えようと、リュエが行きたいというパンフレットに載っている店へと向かおうとすると、先程停泊した客船の方から、何やら困った様子の乗務員の一団の声が聞こえてきた。
何かトラブルなら、領主に直接伝えてあげる事も出来るが……善行を積もうか。
きっとそのうち海の神様が俺を水上コテージに……まだ言うか俺。
「ちょっと行ってくる」
「うん、なんだか困ってるみたいだね」
「ふむ……船のトラブルでしょうか?」
一団の元へ向かい、とりあえず話を聞いてみる。
「すみません、何か困りごとですか? ここの領主の男性とは少し縁があるので、何か困りごとでしたら助けになれるかもしれません」
「おお! 本当ですか! ……とはいえ、領主に言う程の事では……あの、この町に医者……いえ、治癒術師がいたらそこまで連れて行ってもらいたいのですが」
「怪我人ですか? それでしたら連れに腕利きの回復術が使える魔導師がいますが」
「呼んだ? 誰か病気かい? 容態を見せてくれたら何かできるかもしれないけど」
どうやら病人がいるようだ。船にもそういう医者や術師は同乗しているはずだが、お手上げ状態なのだろうか。
「病気……というより、目覚めないお客さんがいるんだ。ただ眠ってるのではなくて、どうやら深いこん睡の魔法にかかっているらしくて、覚醒させる事が出来ないらしく」
「ふむ……物取りの犯行ですかね。その人に外傷は?」
「それが、鍵もかかっていたし、荒された様子もなくて」
「むむ、ちょっと不思議だねそれは。じゃあ私が見てみてもいいかな?」
「魔導師の方でしたらもしかすれば……お願いします」
リュエが乗務員に連れられ、客室へと向かう。
随分と豪華な客船だ。これで船旅というのもいいかもしれないな。
「不思議な話ですね。密室となると……眠っているご本人が自分を眠らせたのでしょうか」
「あー、寝付けなくて魔法で自ら……って?」
「はい。部屋も荒されていないなら、そうかもしれないな、と」
「ふむふむ……加減を間違えて熟睡しすぎちゃったのかもね」
案内された客室の前で、止まるように言われる。
「すみません、お客様は女性の方ですので、出来れば男性の方はご遠慮して頂こうと。自分も、今回は術師さんにお任せしますので」
「だってさ。カイくんここで待ってておくれ。私とレイスで見てくるから」
「了解」
なるほど、なら仕方ないな。ふむ……女性となると色々と犯人の狙いが変わってくるが、密室だったらしいしなぁ……。
「え!? なんで!?」
「まさかどうして!?」
二人が部屋に入った瞬間だった。中から突然驚いたような声が響いてきた。
「二人ともどうしたんだい!?」
「カイさん、中へ入ってください」
「うん。乗務員さん、この人私達の知り合いだから、カイくんも中に入れるね」
「知り合い……?」
部屋に入ると、ベッドの上で誰かが静かに寝息を立てているのが聞こえてきた。
そして傍へ向かうと、そこには――
「……すぅ……すぅ……」
「彼女は……イクスさん……?」
「間違いありません、イクスです。どうしてこんな場所に……」
「ははぁん……イクスさん自分で昏睡の魔法かけたみたいだね。イクスさんクラスの術者が使ったら、普通の術師さんじゃ目覚めさせられないよ。随分と強くかけたみたいだけど……よし、ちょっと二人とも離れておくれ。今目覚ましヒール強くかけるから」
するとリュエが、なんだか気の抜ける呪文を唱えながら、イクスさんへと白い光を放つ。
その瞬間、ベッドの上でイクスさんの身体がビクビクと跳ね、最後に一際大きくガクンと身体が跳ねたと同時に目を覚ましたのであった。
「あは……あう……んん……はて……?」
「おはよう、イクスさん」
「イクス、おはようございます。どうしたのです、こんな場所で魔法まで使って眠るなんて」
イクスさんがベッド上で起き上がり、とても眠そうな、それでいて何故か赤い顔でキョロキョロと辺りを見渡している。あ、目があった。
「お久しぶりですイクスさん、おはようございます」
「あ、カイヴォン様……それにリュエ様にお母様まで……ああ、夢ですかこれは」
すると再び枕に頭をトスンと起き目を瞑る。
「起きなさいイクス! どうしたんです、人様に迷惑をかけるような事をしてまで眠るなんて!」
「いひゃ!? 本当にお母様ですか!? 何故こんな場所に!」
「それは私のセリフです。先程乗務員さんが――」
レイス、説明中。さすがのイクスさんも、母親であるレイスの軽いお説教に、しゅんとしてしまっていた。
「なるほど……そういうことでしたか。私の魔法の調整が満足ではなかったのでしょう……実は、少し前にギルドから命じられていた研究、解析が終わり、暇を出してもらいました。それで少し大陸の外へ向かおうとしたのですが……私は知っての通り海も船も苦手ですから……」
「そうでしたね……イクスもエルスも海、嫌いでしたものね」
「はい。そこで、なんとか乗り込んだ後、そのまま到着するまで眠ったままでいようと、仮死状態になる魔法を使い、部屋に閉じこもっていたのです。加減を間違えたようですが」
「はぁ……そういう事でしたか。まったく……一人旅でそれは無謀と言うものです。誰か一緒に行ってくれる人はいないのですか?」
「はい……自慢ではありませんが、私に友人と呼べる人は……弟子としてジニアはいますが、彼女は今任務でオインク様の身辺警護ですし」
「へー! ジニアちゃんオインクと一緒にいるんだね」
「ええ。それで任を解かれた私は、まとまった報酬や時間も手に入りましたので、旅行に……このある意味では因縁の地であるサーディス大陸にやってきたのです。大勢が変化し、閉鎖的な土地ではなくなったと聞きましたので……」
なるほど……因縁の地、か。
しかもここは……ノクスヘイム。アマミ、レイラ、そして……イクスさんが生まれた施設の跡がすぐ近くにある場所だ。まさかどこからかそれを聞いてここに……?
「とりあえず船を降りましょう? 乗務員さんが困っています」
「そうですね。あの、申し訳ありません、お騒がせしてしまいました」
「いえいえ、無事で何よりです。預かっていたお荷物の方は下ろしておきましたので、港でこちらのタグを見せて引き換えてください」
「了解致しました」
イクスさん……寝起きで髪をセットしていないと、結構長いな。
そしてこうしてみると……やはり似ている。アマミやレイラに。
多少、イクスさんの方が大人びた表情ではあるが、確かに似ている。
……だが、別にアマミ達とイクスさんには血の繋がりなんて……。
「カイヴォン様、どうしましたか。私の顔に何かついていますでしょうか?」
「いえ、なんでもありません。すみません、ジロジロと」
「ふふふ、イクスさん美人だもんねー?」
「ええ、そうですね。ですがカイさんといえども……」
「いや本当そういうんじゃないんです」
「ここがサーディス大陸……聞いていたのと大分港の印象が違いますね」
「聞いていたっていうと?」
「ジニアです。彼女は一度ここに寄ってから船を乗り換えたと聞いています。大きな運河や広大な森が見えると聞いていたのですが……」
「ねぇ、それってもう一つの港じゃないかい? さっきの船って全部の港に立ち寄るらしいし、イクスさん眠ったまま最初の港で降りられなかったんじゃないかな?」
「なんと! あの、この港町の名前は……」
「ノクスヘイムですね。セリュー共和国の最近出来た港町です」
「……乗り過ごしたみたいですね。私はサーズガルドの港に着くはずでした」
「イクス……貴女が船も海も苦手なのは分かりますが、魔法で眠るのはやめなさい? 帰りは私達と一緒に帰りましょう?」
「……はい。あの、旅のお邪魔になってしまうのではないでしょうかカイヴォン様」
「いや、そんな事はないよ。それに……ここで会えたのは、ある意味運命……かもしれないからね」
そう言いながら、レイスに視線を送る。
「……そう、ですね。イクス、とりあえず私達の宿にいらっしゃい。そこで色々お話ししましょう?」
「はい、お母様。久しぶりですね……色々、お話したい事もあります」
「それは私もよ。ところで、元々はどこに向かうつもりだったのですか?」
「ブライトネスアーチへ。私の名に含まれたダリアの名、そしてブライトという苗字について、自分でも調べていました。別段、生まれを気にしている訳ではありませんが、一目見ておきたいと思いましたので」
なるほど。イクスさんもさすがに、外の大陸から来た人間と話す機会も多かったのだろう。それでついに、自分の名前について知ってしまった、と。まぁ本当の親を探したりするつもりはなさそうだが。
宿に戻ると、どうやら他に部屋があいていないらしく、追加料金を支払い、イクスさんも同じ部屋に泊まる事になった。俺はまぁ……適当に安宿を探すか、魔車の中で眠るから問題ない。
「イクス。私達は……この大陸で、この大陸の闇、裏の歴史、その全てを見てきました」
「うん。イクスさん。私達はイクスさんの事も……ある程度分かっているんだ」
「私の……ですか? すみません、出来るだけ詳しく教えて貰えないでしょうか」
「ああ。残念ながら貴女の両親の情報は知りません。ですが、貴女は幼少期、どこかの施設で、なんらかの教育を施されていた。それは、なんとなく覚えていますよね?」
「はい。そこで私は、高度な魔導知識を教え込まれました。ですが……不穏な空気が漂い、幼心にあの場所が、何かおかしいと感じていました……」
イクスさんは、最後の世代において、最も高い素養を持っていたとダリアが言っていた。
そんな彼女だからこそ『収獲』の対象外になったのだろう。
そしてそんな境遇の彼女を、妹であるエルスさんと共に逃がした人物がいる。
「……誰だったのは分かりません。ですがその人物は、定期的にエルスを私のところまで会わせに来てくれていました。ある日、その人物が私を連れて建物を出ました。決して外に出てはいけないと言われていた私は、そこで船に乗せられ、そして……」
言い終えた時、イクスさんがブルリと身を震わせる。
……彼女にトラウマを植え付けた嵐、難破、だろう。
そうか、だから彼女は海も船も嫌いなのか。
「……どこまで話すべきか……」
「うん……」
「イクス。私達は残酷な運命を、深い闇を見てきました。私はその全てを貴女に話していいか、正直迷っています」
「ですが、私がその深い闇の中に生まれ、一人抜け出したという事実は既に知っています。その闇がなんであったのか……それを、知りたいと思っています」
その覚悟があるのなら。話そう、君以外の子供達がどうなったのか。
そしてその闇を生み出した外道がどうなったのか。
最後に……この国で起きた、その闇に起因する、一人の男の恐るべき執念を。
「……そう、ですか。私は生き残り、なのですね」
「はい。初めは、祝福の子供達だったんだ。次代を築く、聖女の加護を受けた」
「けれども、途中からそれは一人の術者の思惑に利用される事になったんだ。たぶん、イクスさんはあの事件の直前に逃げられたんだと思う。だからたぶん……」
「タイミング的に、この闇を知る人物の一人が、貴女を逃がした。どうして貴女だけが逃げ……いえ、エルスと共に逃げられたのかは私にも分かりませんが」
「……もしも知りたければ、もう一人確実に俺達より事情に詳しい人間を紹介出来るけれど、どうしますか?」
「……是非、お願いします。知りたい、私は私の事を。そして……せめて覚えておきたいのです。お母様と出会う前の私達、エルスと私を救った人の名前だけでも」
それは、確かにそうだ。
レイスに救われる前に、そもそもその地獄と化す寸前の研究施設から外へ逃がしてくれた人物が何者なのか。それだけでも……知っておくべきだろう。
「よし、じゃあこのまま一緒に旅を続けようか。どの道その人間とは会う予定なんだ」
「不束者ですが、宜しくお願いします」
「よろしくねイクスさん! じゃあ今日はー……どうしようか?」
「そうですね……領主をしていらっしゃる方に、あの島へと渡る許可をもらってはどうでしょう。慰霊碑……ありましたよね、確か」
「そうだね。イクスさん……事件で亡くなったり、行方不明になった子供達の慰霊碑があるんです。そこに、いってみませんか?」
行くべきだ。ここで、彼女と再会したのはもはや偶然とは言えない。
……何かの意思を感じるのだ。
「慰霊碑……そう、ですね。行きます、その場所へ」
「分かりました。じゃあ俺は領主に話しをつけてくる。三人は……お昼でも食べていなよ」
「宜しいのですか……?」
「ええ。それにリュエやレイスと話もあるでしょう? 大丈夫、領主と言っても……そこまで偉い人じゃないですから、個人的には」
「分かりました。では、お願いしますカイヴォン様」
なんだか少し緊張してしまうんだよなぁイクスさん。一時従者というか部下みたいな感じで接してしまっていた所為か、こう、なんともいえない関係なのだ。
それにレイスの娘でもあるし。
相変わらず街全てを見下ろす場所に居を構えている領主の元へと向かう。
以前は監視用の魔術やらなにやら仕掛けだらけの屋敷だったのだが、今は普通に門番や庭師が働いている様子に、少し『真っ当な人間になったのか』と失礼な印象を抱く。
門番にはとりあえず知り合いだから取り次いでもらえないか声をかけるも『紹介状がなければだめだ』の一点張り。参った、どうしようか。
「……ちょっと急いでいる。悪いな門番さん、押し通らせてもらうけど、反撃はしない。好きに攻撃してくれ」
「な! 貴様、侵入者か!」
どうせ、ダメージなんて入らないので。
案の定、突きつけられた剣を無視し屋敷へ向かうと、背中からバッサリと切りかかられてしまう。
が、そもそもコートにすら傷はつかないし、首にも蚊が触れた程度の刺激しかこない。
掴みかかるが、何か綿でも絡みついたような感覚しかしないので無視させてもらう。
屋敷内部へと入り、以前一度いった事のある領主の部屋へと向かう。門番を引きずりながら。
「領主さんや、いるかね? ちょいとお願いがあってきたんだけど」
『何者です。無断で屋敷に立ち入るとは……』
「カイヴォンだ」
その瞬間猛烈な足音と共に扉が開き、そして顔を真っ青にしたコーウェンが、俺にしがみついて剣を何度もたたきつけてる門番を見て卒倒しそうになる。
「お前達! 今すぐこの方を解放しろ! いいか、この人は……この街の恩人にして、聖女ダリア様のご友人だ!」
「いや、良いから。無理やり入ったの俺だし。で、少し話があるんだけど、いいかな」
「はい! な、なにか不興を買ってしまったでしょうか! どうぞ中へ……!」
お邪魔します。なんだか随分と物が増えたなぁこの部屋……模型だらけだ。
「まさか……この街を滅ぼしにきたのでしょうか……私は何か、間違ってしまったと言うのですか……」
「いんや、ちょっと悲しい事は会ったけど、立派に成長した良い街になったんじゃないか?」
「さ、さようですか……それで、お願いとは……?」
「それだ。あの島、元研究施設があった島に渡りたい。船を手配してもらいたいんだ」
「あの島に、ですか? あそこは人が近づけないようにした後、あの廃墟を清掃し、そのまま自然に返そうとしていますが……」
「なるほど。ちょっと慰霊碑にな、用事があるんだ。まぁ墓参りみたいなものだよ」
「そういうことでしたか。ダリア様からは何人も近づけるなと言われていますが、カイヴォンさんでしたら問題ないでしょう。すぐに手配させます」
「感謝する。コーウェン、そう心配するな。事件は解決して、こうしてこの大陸もどんどん発展しているんだ。この街をどうこうしようなんて思っちゃいない」
「それを聞いて安心しました。して……悲しい事とは?」
あーそれ聞いちゃう? ちょっと長くなるから先に船の手配してください。
この心の叫びを君にぶつけることになってしまいそうなので。
俺は、とりあえずこの悲しみを癒すように、水上コテージをそのうち大々的に建設してリゾート地区の目玉にした方がいいと提案だけするのだった。
イクスさんやリュエ達と合流し、用意された船に乗り島へと向かう。
なお、イクスさんはリュエに眠らせてもらい、今レイスの腕の中で目を覚ましました。
「お母様……もう、着いたのですか?」
「ふふ、こうしていると昔と変わりませんねイクス」
「あ……すみません、起きます」
「イクスさんの寝顔可愛いね」
「リュエ様……」
俺もそう思います。クール美人のあどけない寝顔は、こう……ぐっときます。
「この森に入っていって、途中で曲がると慰霊碑があるんだ。そこへ向かいましょうイクスさん」
「あの……先程から気になっていたのですが、私はともかく、カイヴォン様は私に敬語なんて使わない方が良いかと思います。……将来、義理の父になるのでしょう?」
「あ……そうか、レイスを奥さんにしたらそうなるのか」
「あらあら……イクスったら少し気が早いですよ?」
「むむ……じゃあその場合は私はどうなるんだろう? 私もカイくんの奥さんになるから……イクスさんのおばさん? は違うか」
「確かに、どうなるんでしょうね」
それはとりあえずまた次の機会に考えましょう。もう一人のお母さん……?
森を進み、途中で獣道のような細い道に逸れる。
そこを進んだ先、海に面した崖に、小さな原っぱのような場所がある。
そこに安置されている石碑の前に立ち、そしてイクスさんに見せる。
「これが慰霊碑。全ての子供の名前が刻まれているんだ」
「これが……こんなに沢山、いたのですね……」
「イクスさんの前の世代も、その前の世代も、全部、全部、ね」
ダリアが一人一人、名前を付け、そして……ここに掘り刻んだ。
その名前達に祈りを捧げるようにし、瞳を閉じる。
風のそよぐ音と波の音を聞きながら、瞼の裏で、この子達が天へと昇る光景を思い描く。
「……これが最後の世代……私の名前も、刻まれていますね」
「そうですね。これ、この部分だけ削ってしまいましょうか?」
「え、いや……お母様、さすがにそれは……」
「でもここ見てごらんよ。一番最後、アマミの名前だって消されてるし」
「アマミ……? 消されているというと……」
「はい。実はここの施設が閉鎖された事件で、生き残った方がもう一人いるんです。その名前が消されたんです、恐らく聖女……ダリアさん自らの手で」
「……どうせ会うんだ。この際、イクスさんが生きているって教えて、この名前を消す許可でももらうかい?」
「そう、ですね。以前は秘密にしていましたが……言う時がきたのでしょうね」
レイスの許可を貰いダリアにメールを送る。
すると爆速で返信が来た。
From:Daia
To:Kaivon
件名:今すぐ
今すぐそちらに向かいます。テレポでホームに穴あけておいてください。
「あ、なるほど。まぁ有効活用だしいいか」
「ねーダリアなんだってー?」
「ああ、今すぐ来るって」
とりあえずテレポ発動。これでホームへの転送ポイントが出来る。
後はダリアが自分のテレポでホームに戻って、俺のあけた転送ポイントからここに来るだけだ。
「……お、来た」
「っとと……この場所は……カイヴォン、それでイクスはどこに!」
突然現れた幼女、もといダリアの姿に驚くイクスさん。
だが、彼女は静かにこちらに歩み寄り……。
「迷子ですか? どこから来たんです? 危ないからお姉さんと一緒にいましょうね」
「え、あの……」
「イクスさん、そいつがダリアです、聖女ダリア。そんなんでも齢五〇〇オーバーです」
「っ!? 失礼しました。では……貴女が、私の名にある『ダリア』の……」
「……貴女が、イクスですか……そうでしたか……生きていたのですね」
色々とお互いに思うところもあるのだろう。
けど、まずは……ダリアを下ろしてあげてくださいイクスさん。
隙の無い完璧なムーブでダリアを抱っこして持ち上げてしまいましたよこの人。
「まぁとりあえず……なんで俺達が前に彼女の事を話さなかったのかは察してくれ。彼女はレイスの養女として生き、遠い地で暮していたんだ。けど今回、彼女は自分の出生について調べる為にここに来たんだ。だから……全部話した」
「そういうことでしたか……」
ダリアが心の底から申し訳なさそうに語ろうとする。
が、どうやらイクスさん的にはあまり気にしていないのか、ただ『謝罪は必要ありません、ただ私を逃がした人間について心当たりがあれば教えて欲しいだけです』と言い。ダリアを抱えたまま放そうともせず、普通にどこか満足気な表情を浮かべるのみだった。
「イクスはその……小さい子が大好きなので。昔、まだ彼女も小さかった頃は、自分より小さい子全員の面倒をみていてくれていたんですよ」
「へー! じゃあイクスさんはみんなのお姉さんだったんだ」
「そ、それでも一度放してください……名前を削り取りますから」
そう言うと、ダリアが地面におろされ、そして指先からレーザーのような物を出し、イクスと刻まれた文字を削り取ってみせた。
「ありがとうございます聖女ダリアさん。すみません、つい抱きしめてしまいました」
「大丈夫です、子供と間違われるのはよくある事ですから……」
「ところでいきなり来てよかったのか? お前今暇なのか?」
「ええ、今魔術師養成学校で臨時教師として出向いていたのですが、先程授業が終わりましたので」
「へぇ、学校があるのか。ウィンガーディア〇なんとかーみたいな?」
「微妙に分かってしまう……そういうのじゃありませんよ、ほぼ普通の学校です」
「なるほど。ちなみに俺はどこに組み分けされる?」
「監獄で」
「てめぇ」
あれか、スリ〇ザ〇〇は嫌だって思っていたら『アズガ〇ン』送りにされるって。
「しかしカイヴォン達がこちらに来ていたとは。この後はどうするんです?」
「ここへはお参りにみたいな感じで立ち寄ったんだ。本当はここに二、三日滞在するつもりだったんだが、水上コテージがないから明日にでもミササギに移動するよ」
「なるほど。さて、それで先程のイクスさんの質問ですが……今すぐここで答えるよりも、しかるべき場所で答えたいと思います。カイヴォン、絶対にブライトネスアーチに寄ってください。そこで……イクスさんの質問に答えたいと思います。それで構いませんか、イクスさん」
「了解しました。その必要がある、と貴女が言うのでしたら、それに従いたいと思います」
「……はい。イクスさん、改めて言わせてください。生きていてくれて……ありがとうございます」
「はい。私も……生まれてよかったと思っています。だから……貴女がそんな顔をする必要はありません。元凶はもう……罰を受けたのでしょう? それで、終わりです」
そうイクスさんが告げると、ダリアは最後に一際大きく頭を下げ、そして再び消えたのだった。
こんな大急ぎで現れるなんて、よほど……心に残っていたのだろう。この件が。
たとえフェンネルが死んでも、元凶が消えたとしても……ダリアが関わっていたのもまた事実。
知らなかった、では済まされないのだ。当事者、亡くなった子供からすれば。
「イクス、本当に大丈夫ですか?」
「はい。同じ境遇の子が何名も犠牲になったという事実は揺るぎません。ですが、私は……よく覚えていないのです。不憫だとは思います。ですが、それではこの名前を刻まれた子がいつまでも浮かばれません。きっと……他の皆は少しだけ早く、天国に旅立ってしまったのでしょうね。だから……今はもう、何も言う事はありません。いつか私が死んだその時は、かわりに沢山、お話をしてあげたいと思います。幸い、小さな子供の面倒を見るのは得意ですから」
「そう……偉いわ、イクス。じゃあ旅を続けましょう。貴女の知りたい事を知る為に」
「そうだね。じゃあ船に戻ろうか。そろそろ日が暮れるよ、その前に行こう。暗くなってからあの研究所跡に行くのはお勧めできないんだ」
「ん、なんでまた。あそこの地下は俺が浄化したはずだけど」
「うん。でも、それとは関係のない、あの場所で亡くなった人間や、それに引き寄せられた魔物の霊とかはいるかもしれないし。ああいう場所は集まったり溜まりやすいんだ。自然に還るまでは近づかない方がいいよ」
え、マジで。完全に心霊スポットなのかあそこ。
「なるほど……霊場になってしまったのですか。では……浄化に行きましょうか? お母様」
「いえ、帰ります。自然に戻るのを待つ方がいいのでしょう? では帰りましょう」
「うん、帰ろうか」
レイス、必死である。かなり苦手だもんね、この手の話。
宿に戻り、三つあるベッドを彼女達に明け渡し、俺は魔車で夜を明かそうとしたのだが、そこでイクスさんが『では私がそこのロッカーの中で眠ります』と言い出した。
曰く、狭い場所が好きらしく、本当に狭くないと眠れないのだとか。
そういえば船のベッドも大きかったな。案外魔法で眠ったのはその所為もあるのだろうか?
「相変わらず貴女は……イクス、では久しぶりに一緒に眠りますか?」
「う……あの、さすがにこの歳で親と一緒に眠るのは……」
「じゃあ私と寝ようよイクスさん! 私ならいいだろう?」
「い、いいのですか? では……ふふ、なんだか懐かしいです」
「スペルちゃんを思い出すのかい? 私、スペルちゃんと遊んだ事あるんだよ」
「まぁ、そうだったのですか。スペルは最近……すっかり政治に関わるようになり、毎日忙しそうで、中々話す機会がないのです」
「まぁ、そうなんですか? あの子、ウィングレストの町の方は大丈夫なのかしら」
「治安の面では問題ありませんね。ただ、少し前に娼婦の方々がかなり町に流入したらしく、少しトラブルも起きたようですが……今はスペルとイル様主導の元、新しい女性の為の組織という物を結成したそうです」
「まぁ、イルさんまで巻き込んで……なんだか心配だわ」
ふぅむ……もしかしてその流入した娼婦というのは、エルダインの再開発で行き場を失った娼婦の皆さんなのではないだろうか。
聞いた限りじゃ、スペルさんとイルは、昔のレイスのような活動を政治的に行っている様子だが。
女性の保護や活動支援か。なんだか地球でも似たような話を聞いたことあるな。
何か大きな問題にならなければいいが。……オインクがいれば問題ないか。
「それにしても、まさかダリアさんがあんなに小さな子供だとは思いませんでした。なんとも抱き心地が良くて、温かくて……本当に子供というのは素晴らしいです」
「ぐぇ……イクスさん私は子供じゃないよー」
「すみません、リュエ様も私より小さいのでつい……リュエ様は良い香りがしますね」
「そ、そうかい? じゃあ私もちょっとだけ」
エルフさん同士がイチャイチャしている姿は眼福ですな。
イクスさん、あんな表情も出来るのか。もっとこう……鉄仮面とまでいかなくても、氷のような印象を持っていただけに驚きだ。
「では、明日はミササギという場所へ行くのですね。私はそろそろ眠りにつきます。眠りの間は何をされても起きませんので……その、ご安心ください」
「イクス……変な気を回さないで下さい。私達も寝ますから」
「うん? どういう意味だい?」
ノーコメントで。イクスさん……確かに彼女達とはそういう関係にはなりましたが、そこまで節操なく致したりしませんよ僕達は。
(´・ω・`)明日発売の書籍版10巻では、イベントの圧縮と一部追加のイベントなどがあります
(今回の慰霊碑とか)




