番外編リクエスト『創造豚とぼんぼんクッキング』
(´・ω・`)リクエスト一番乗りの方のアイディアを元に書かせて頂きました。
「さて、唐突にやって参りましたぼんぼんクッキングのお時間です」
「また何か作るんですか? 今日はお手伝いしますよ」
「そうだね、じゃあ今日はレイスに手伝って貰おうか」
山菜を採り終えたので一度宿へと戻り、改めて今まで採ってきた山菜を含めた下処理をしつつ、お昼ごはんの用意と行こうか。
今回は最近疲れが溜まっているレイスの為に、あっさりとしていて栄養のある物を作ろうかと思います。
あれだ、たぶん季節外れの『夏バテ』みたいな物なんじゃないかね?
疲れていたり、暑くてダルかったりすると、どうしてもあっさりした物ばかりを食べ勝ちになってしまう。
すると当然、栄養が不足して身体のダルさに拍車がかかる。
そしてダルいからまたあっさりした物――と負のスパイラルに陥ってしまう。
故に、あっさりとしていて、尚且つ夏バテ解消になるメニューを考案せねば。
「昔からこういう時はビタミンBが豊富な豚肉が良いって相場は決まってるんだけど……今切らしてるんだよなぁ」
「そういえば、リュエはどこに行ったんでしょう? 材料の大半は彼女のバッグの中でしたよね」
「そうなんだけど、どこに行ったのやら……」
「む? 魔物が町に入り込んだって?」
レイスとカイくんが料理道具を持って裏山へと向かったので、それを追いかけようとしていたら、宿の従業員にそんな話を聞かされた。
どうやら、町中に見慣れない魔物が現れたらしく、どうしたら良いかギルドの指示を仰いでいる所だとか。
「とりあえず私が無力化しておくから、どこにいるか教えて貰えないかな?」
「そ、それが……この宿の一室に立て籠もっているんです」
「なんだって?」
魔物が立て篭もる……?
問題の部屋の前へと到着すると、中から人の声が聞こえてきた。
魔物が人質でも取っているのかと思い身構えるけれど、どうも聞こえてくる言葉がおかしい。
なんだろう、凄く聞き覚えがあるような、懐かしいような……。
『らんらんはお客様よー! ご飯まだなの!?』
……あ! そうだオインクだ! もしかしてオインクが遊びにきたのかな?
そう思い、周りの静止も振り切って勢い良くふすまを開け放つ。
ふすまが柱に辺り、バンっと大きな音が部屋の中に響き渡る。
するとそこには――
「((´・ω・`))ビビッた死ぬか」
「……ま、魔物?」
ピンク色の小さな豚のような魔物が、座布団に器用に座ってお茶を飲んでいた。
「そうそう、根本の方はトゲがあるから気をつけて」
「この色の違う部分を外せば良いんですね」
「そこは『袴』とか呼ばれてる場所だね。この山菜を採る時とか、枝がトゲだらけでさ、専用の道具がないと怪我するんだよ」
現在、リュエの家で暮らしていた時に採った山菜やらキノコの下処理をしております。
いやはや、春夏秋冬の山の味覚を同時に味わえるなんて、アイテムボックスさまさまだ。
今は去年の春に採った『タラの芽』の下処理をしている。
これ、結構背の高い木の先端部分に生えるから、フックつきの紐を枝に引っ掛けて、軽く引っ張って木をしならせないと採れないんだよね。
まぁ中には高枝切狭でちょん切ったり、非道い人だと木を切り倒してから採るなんて人もいるが。
だが、木に負担を掛けないようにするなら、最初の方法が一番だ。
このタラの芽『山菜の王様』と呼ばれるくらい美味しい事で有名で、中でも天ぷらは格別だ。
地元にいた時は飽きるくらい食べていたが、いざ都心の方へ行くと、その値段の高さに目を疑った物だ。
ましてや、天ぷらにして出してくれるお店なんて、本当に限られてくる。
「そう考えると、随分贅沢してたんだよなぁ……」
「イタっ……カイさん、トゲが刺さってしまいました」
「ん、どれどれ? 大丈夫、中には入っていないみたいだ。じゃあ後は俺がやるから少し見てなよ」
「リュエがいたら治してもらえるのですが……どこにいったんでしょうね?」
いつもならこの『ぼんぼんクッキング』皆勤賞のリュエが、楽しそうにナイフとフォークを持って待っている筈なのに、今日はいつまでたっても現れない。
迷子なんて事は……大いに考えられるが、さすがに宿の裏にすらたどり着けないなんて事はない筈だ。
大方、部屋で軽く寝転がったら、そのまま眠ってしまったとかじゃないんですかね?
そんな不名誉な予想を裏切るかのように、件の迷子の眠り姫の声が聞こえてきた。
「おーい! カイくーん、レイスー! 新鮮な食材のお届けだよー!」
「(´・ω・`)はなして!!!」
知らない声も一緒に聞こえてくるが、近くに他の人の姿も見当たらず首を傾げていると、彼女が脇にかかえている物が目に入る。
ピンク色の、恐らく子豚だろうか?
小さな尻尾をこちらに向け、短い四肢をジタバタと暴れさせている。
俺にアレを解体しろと……? さすがに生きた豚の解体なんて無理だぞ? ただ〆るだけならともかく。
そもそも、解体したらしっかり熟成させないと余り美味しくないし。
「リュエ、それは魔物ですか? それともどこからか家畜を分けてもらったんですか?」
「たぶん魔物だよ。見てくれ二人共、こいつ人の言葉を話すんだ」
こちらにお尻を向けていた豚の向きを変える。
そこには、どこかで見た事のある顔をした畜生の姿が。
……ふぁ!?
「(´・ω・`)ここが新しい豚ご……野外キッチンだと……」
「リュエ、大人しく返してきなさい。これは食べられない豚だ」
「そうなんですか? まだ小さいですけど、まるまる太っていて美味しそうですよ?」
「((´・ω・`))やばい逃げるか」
「逃がしません」
どう見てもらん豚です、本当にありがとうございました。
一瞬で逃げ出そうとするが、悲しいくらい足の遅い豚を、レイスがあっという間に捕まえてしまった。
そうだね、君お肉好きだもんね。
嬉しそうに豚を胸に抱えて戻ってくるレイスと、抱えられていやらしい笑みを浮かべる豚。
何故こいつがここにいるのか謎だが、オインクがいるくらいだしいても不思議じゃないのか……?
「(´・ω・`)おほーっ!」
「なんだか顔が他の豚と違うし、人の言葉を話すから食べにくいけど、どうしようか?」
「ふむ……おい、お前は食べられる豚なのか?」
「(´・ω・`)バカにしないでくれる? らんらんはその辺の牛や鶏とは格が違うの。食べられるんじゃなくて、食べさせてもらえるだけありがたいと思って?」
「カイさん、包丁貸してください」
「(((´・ω・`)))ごめんなしあ」
個人的に思うところはあるが、食べられるならば、是非とも食べてみたくはある。
だが、さすがにこいつに包丁を入れるのは戸惑われる。
どうしたものかと考えていると、唐突に豚がレイスの腕の中から離れる。
「(´・ω・`)しょうがないにゃあ……」
すると、豚の全身が眩い光に包まれて、その光が収まると――
何故か発泡スチロールの容器に収まり、しっかりラップもされ、バーコードと商品名まで記載された加工済みの肉が用意されていた。
「(´・ω・`)少しだけ分けてあげるわ」
「む? 少し小さくなったね? 君は魔物じゃなくて、精霊の類だったのかい?」
「(´・ω・`)らんらん豚だから難しい事はわからないよ」
「奇遇だね、私も余り難しい事は分からないんだ」
「(´・ω・`)がっかりエルフ乙」
「なんだと!?」
商品名『らんらん』には突っ込まない。
しかし、内容量600gとかなりの量だ。
見れば、バラ肉だけではなくロース肉、塊からスライスまで揃っている。
これなら色々と作れそうだが、さてはて何を作ろうか。
「じゃあ改めまして、ぼんぼんクッキングのお時間がやって参りました。本日のゲストはさすらいのらん豚さんです」
「(´・ω・`)はじめまして、ゲスト件本日の特選素材です」
「あ、元の大きさに戻っていますね。これならいつでも食べられるんでしょうか?」
だがしかし、リュエが戻ってきたお陰で豚肉以外にも使える食材が増えたので、まずはそちらから作っていこうと思う。
以前、船旅の時に釣りをしていて、大量に余った鯵。
今回はこいつも使ってしまおうという魂胆だ。
今は初春だが、以前の世界での鯵の旬は夏。
夏バテ予防に鯵を食べるという人も多く、実際栄養学的にも理にかなっていると聞く。
なんでも、夏バテに効く『タウリン』と言うものが豊富に含まれているとか。
なんだか攻撃力の基礎値が増えそうな名前である。
「ついでにリュエのお気に入りのイカさんも使わせてもらおうか」
「あ、この間のイカまだ残っていたんだね」
「鮮度が落ちないって反則だよな」
そしてイカとタコにもタウリンが豊富に含まれております。
さてさて、鯵とイカで何を作ろうか。
「(´・ω・`)ちょっと待って! らんらんのお肉はどうしたの!」
「今度な今度」
「(´・ω・`)そんなー」
本日も初夏を先取るかのような熱気。
ここは冷たく食べられるメニューにしようじゃないか。
幸い、今日の山菜採りで使えそうな物があったし。
俺はみつけられなかったのだが、リュエ大先生がしっかりと見つけてくれた。
「それではまず鯵を捌きます」
「でしたら私が。得意なんですよ?」
「お、じゃあお願いしようか」
今回は南蛮漬けを作った時よりも幾分魚体が大きいので、三枚おろしが可能だ。
ただし、そこまで大きくないので手早くおろせる『大名おろし』は却下だ。
あれやると背骨に身が結構残っちゃうんだよね。
だが、レイスは俺の作った小さなナイフを巧みに使い、数度に分けて綺麗に身を捌き切った。
お兄さん、魚を綺麗な捌けるくらい料理上手な人、好きですよ。
「昔、料理を提供するお店だった時代もあったんですよ。『プロミスメイデン』を開店してからは、娘たちにしか作っていなかったんですけれど」
「それにしたってたいしたもんだよ。俺の知ってる人だと、魚は頭と内臓を取って焼くだけなんて人もいたし」
鱗すら取らず、網に乗せて焼くだけの人がいたんですよね。
たしか『リ』から始まる名前で、最後は『エ』だったか。
「へぇ、君はエンドレシア大陸から船でこっちにきたんだね」
「(´・ω・`)そうよー、ある意味聖地巡礼って所かしらね?」
「聖地? まさか七星の封印場所とかかい?」
「(´・ω・`)そんな所ね。氷霧の森からソルトバーグ、マインズバレーから途中の村を経由して首都までいったのよー」
「私達と同じだね。それが聖地なのかい?」
「(´・ω・`)らんらんにとっては意味のある場所なの。まぁ、子供達の軌跡を辿るような物ね」
その焼き魚達人さんは、本日の特選素材様と仲良くおしゃべりに興じています。
後で食べにくくなっても知らないぞ。
(´・ω・`)まさかの続き物