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ひとくちの魔法  作者: 紫音
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8話

「……私が行く意味があるんですか?」


先輩が用意してくれた馬車に乗り込みフェミルアへと旅立って2日目。

昨日は引継ぎで徹夜をした影響で馬車に揺られて眠っていました。

本日は馬車で移動しながらも先輩がザシド様に提出した報告書に目を通しています。

先輩はまとめきれていないとおっしゃっていましたが、その報告書は同僚が書いている物よりもわかりやすく、重点がまとめられていました。

正直、私が行かなくてもこの報告書を読み解きながら、調査をすれば誰でも問題なくできる気がします。

自分の価値があまりないと言われている気がしてため息を漏れてしまいました。


「満足の行く結果を見せてくれるのではないのか? 昨日は自信があるような口ぶりだったが、もう弱音か?」

「そ、そのつもりですけど」


ため息はルーディス殿に聞かれており、ルーディス殿は私が弱気になっていると思われたようです。

聞かれていた事にバツが悪くなってしまい、視線をそらしてしまいました。


「つもり?」

「け、結果を出します」

「別に失敗をしても良いんだぞ」


ルーディス殿は私の言葉が気に入らなかったようです。

慌てて首を横に振るとルーディス殿は失敗しても構わないと言ってくれました。

その意味がわからずに呆気にとられてしまいましたが、それは私の事を信用していないようにも聞こえました。


「失敗しないように頑張ります」

「すまない。言い方が悪かったようだ」

「い、いえ、私も失礼な態度をとってしまい。申し訳ありません」


少しだけムッとしてしまいました。慌てて、表情を戻すとルーディス殿は謝罪してくれます。

そんな彼の姿にまだ、出会ってわずかな時間ですが噂とはルーディス殿が違うと言う事がわかってきました。

慌てて、頭を下げるとルーディス殿はわずかに表情を緩ませます。


「元々、私達が昨年の内に報告を上げていれば、フロース=フロウライトの手を煩わせる事もなかったのだ。失敗をしても責任は領主代行の私にある。そこまで気を張る必要はない」

「そ、それはそうかも知れませんけど……」


先輩の報告書にもしっかりと書かれていました。昨年の内に来年度は一定の収穫が期待できるまでの物ができていた。

領主代行であるルーディス殿は更なる収穫量を増やす事を考えて動き、領民達は復活のめどが見えた田畑に喜び、報告を失念していたと。

だからと言っても私が失敗して良いと言うわけにはなりません。今回のフェミルアの件次第では国庫からの出費がかなり抑えられる。

小麦の不作により、外国からの輸入の調整をしている先輩達はかなり楽になるはずです。


「私達だってやれる事はやる。すでに限界まで働く準備は出来ている」

「限界までって……ルーディス殿、1つお聞きしても良いでしょうか?」


ルーディス殿はフェミルアの民だけでも限界まで働いてくれるとおっしゃってくれます。

ただ、限界まで民達に働いて貰い、倒れられては5年前や前領主様の二の舞になってしまいます。そんな事をさせるわけにはいかないと思います。

ルーディス殿の兄上である現領主様も体調を崩されているなか、領主代行のルーディス殿まで倒れられてはフェミルアの領民からの国王への信頼を失われてしまいます。

そう思い、説得しようと顔を上げるとルーディス殿は手に小瓶を持っており、その小瓶を外から入る光にすかしていました。

その小瓶の中に入れられている液体はなぜか禍々しい気配がしている気がしました。


……多くの研究実績とともに多くの破壊の実績を残したと言う噂。


学園に通っていた時代に多く耳にしたルーディス殿の悪い噂を思い出してしまいました。

顔が引きつって行くのがわかります。それでもあの液体がおかしいものであっては領民達の命に関わる気がします。

液体が何か聞かないといけないと思うのですがのどがなぜか渇いてしまい、言葉が上手く出てきません。

それでも確認して行かないと思い、1つ深呼吸をして心を落ち着かせます。


「あの、その液体は何ですか?」

「ああ、以前、研究していた薬品なのだがこれを摂取すると脳が覚醒して3、4日なら眠らなくても活動ができる。王都にいる間に学園で研究室を借りて調合してきたのだ。これで労働力は倍増だ」


……予想以上に危ない薬品でした。

これは絶対に使わせてはいけないと思います。下手をすると死人が出る気がします。

しっかりとないといけないと思うのと同時にどうにかルーディス殿の隙を付いてあの薬品を処分しないといけないと思いました。


「その薬品は使わないで良いように努力します」

「なぜだ? 寝ないで働ける労力ができるのだ。収穫も進むぞ」

「……絶対に副作用があるから、使わないでください。これは預かっておきます」


私がしくじれば領民に危害が及ぶ。そう考えて薬品の使用に反対をします。

ルーディス殿は意味がわからないと言いたいのか首を傾げられますがこの怪しい薬品を使われて何かあってはいけないため、ルーディス殿の手から小瓶を奪い取ります。


「何をする?」

「これを使って領民に何かあったら問題になるんです。信頼を失っては領地運営も何もないでしょう」


今年の収穫が上手く行けば終わりではない。フェミルアの民達の信頼がフェルミルア家から離れさせるわけにはいかないのです。

ため息を吐いて考えて欲しいと言い聞かせるようにルーディス殿に進言するのですが、ルーディス殿は意味がわからないと言いたげに首を捻っておられます。


……研究者とは聞いていましたが、このような危ない考えで良くフェミルア復興に動く事ができましたね。

フェミルアの民達も苦労したのではないかと思い、彼らの苦労している様子を思い浮かべてため息を漏らしてしまいます。


「フロース=フロウライト、疲れているのか? それなら、それを1口、飲んでみれば良い」

「絶対にイヤです」


ルーディス殿はこの怪しい薬品の効果を私に見せたいようで飲んでみる事を薦めるのですが絶対に飲んではいけないとわかります。

絶対に飲まないと宣言するとルーディス殿は不満げにため息を吐かれました。


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