49話
「……知っている? これでも、私はこの国の次期国王なんだよ」
「ミルアさん、ルチアさん」
「フロース、良いんだよ。それにこれからする話には女性の意見も多く聞きたいからね」
「そうですか」
ルチアさんを席へと薦めた物のさすがに女性3人に対して男性1人では分が悪いのかレオンハルト様は苦笑いを浮かべています。
しかし、ミルアさんもルチアさんも気にした様子もなく、紅茶の準備をしており、その姿に頭が痛くなるのですがレオンハルト様は気にしないようにと首を横に振られます。
レオンハルト様が気にしなくて良いとおっしゃられているため、私が何か言うわけには行かず、準備されたばかりの紅茶へと手を伸ばします。ただ、ミルアさんやルチアさんの意見を聞きたいと言うレオンハルト様の口元は小さく緩んでおり、その表情に若干、イヤな予感がします。
「私達の意見って何ですか? また、おかしな事を考えているんですか?」
「……ミルアちゃん、さっきも言ったけど、私は次期国王だからね?」
「知っていますけど、あのルーディス様を領主にするなんて暴挙に出るんですから、信じられるわけがありません」
「ぼ、暴挙……そう思われても仕方ない気もしますが、さすがに失礼ではないでしょうか」
ミルアさんに疑いの視線を向けられてレオンハルト様は大きく肩を落とすのですが彼女は気にする事はありません。
ルーディス殿の性格を知っている彼女の言いたい事はわかります。ですがルーディス殿の覚悟を暴挙と言われてはあまり面白くはありません。
「でも、ルーディス様ですよ」
「確かにエルザード様に比べるとルーディス様は領主に向いていませんね」
「それはエルザード様に比べればまだまだ未熟かも知れませんがルーディス殿だって、いろいろと努力しているのですよ」
「フロースも落ち着きなよ」
しかし、ミルアさんは首を横に振り、彼女の言葉にルチアさんまで同意を示してしまいました。
確かにエルザード様と比較してしまえば性格などいろいろと目をつぶっていただかなければいけない事も多い。ですが、領民の事を思う気持ちはエルザード様にだって負けていない。
それをわかって欲しいと思う私は間違っていないはずです。わかって欲しくて語尾を強くしてしまうとレオンハルト様にいさめられてしまいました。
「申し訳ありません。熱くなりすぎました」
「気にしなくて良いよ。フロースもルーディスをあおった人間の1人なんだから、怒っても仕方ないよ」
「……本当ですか?」
冷静になる必要があると思い、1つ深呼吸をした後、レオンハルト様に頭を下げます。
レオンハルト様は気にする必要はないと笑ってくださいますがミルアさんとルチアさんからは疑いの視線を受けられてしまいます。
……私はそこまでおかしな事をしたのでしょうか?
私も最初は不安に思いましたがフェミルアに来て、ルーディス殿の仕事ぶりを見て、まだ補佐は必要だとは思いますが彼ならば良い領主になれると思ったからです。
「2人とも、私達がルーディスを領主になって貰う事はレストやエルザードにも賛成されているんだ。2人の事も疑うのかい?」
「別にそうとは言っていませんけど」
レオンハルト様が先輩とエルザード様の名前を出すと2人は文句がありそうですが納得されます。
その様子に納得がいかないのですがここで私が何かを言って話が元に戻ってはいけないため、言葉を飲み込みます。
「それで意見って何ですか?」
「……やはり、サラも呼ぶべきかな?」
「す、すいませんでした」
レオンハルト様の態度に彼が次期国王だと言う事はすっかり頭から無くなっているのかルチアさんは急かすように言う。
その態度はどこか態度が悪く、レオンハルト様はサラさんの名前を出しました。サラさんの名前に一気にルチアさんの顔から血の気が引いて行きました。
彼女の様子にミルアさんは苦笑いを浮かべているのですが、それだけ、サラさんの恐怖が刻まれている事がわかります。
「レオンハルト様、私もお聞きしたいのですが、お2人に意見を貰いたいと言うのはどう言う事でしょうか?」
「それは2人の意見なんて参考にならないって言いたいのかな?」
「そう言うわけではありませんが……」
レオンハルト様が2人に何を聞きたいのかが分かりません。口ではそんな事はないとは答えたものの、正直な話、領地運営の事で素人の2人に意見を聞く必要などはないと思います。
「いや、領地運営の事を2人に聞きたいわけじゃないから」
「そんな事を聞かれてもわかりませんよ」
「うん。元々、2人にはその辺の事は期待なんてしていないから」
「それはそれで頭に来るんですけど」
私の考えが読まれたようでレオンハルト様は苦笑いを浮かべます。
領地運営の話でないのでしたら何を聞こうとしているのでしょうか?
首を傾げる私の隣でミルアさんはため息を吐くのですがレオンハルト様は先ほどまでの反撃なのか笑顔で毒を吐きます。
ですが、ミルアさんはここで何かを言うと更なる反撃を受ける事が想像が付いているようで不満そうな表情をしながらもそれ以上は何も言いません。
「2人に意見を聞きたいのはね」
「……どうしてでしょうか。その笑顔にイヤな予感しかしません」
ミルアさんが黙ったのを見て、レオンハルト様は本題に移ろうと思ったようでその笑顔を私に向けます。
ただ、その笑顔に背中に冷たい物が伝うのですが話を聞かなければ先に進まないため、眉間にしわを寄せながらも姿勢を正して次の言葉を待ちます。
「フロースはルーディスを好きだと思う?」
「……何をおかしな事を言うのですか?」
待った言葉は意味のわからない物で大きなため息が漏れ出てしまいました。
「フロースさん、ご同類ですよね?」
「私はフロースさんのような方がどうして、ルーディス様をお慕いしているのかが分かりません。ルーディス様はご容姿は悪くありませんが正確に難がありすぎます」
しかし、ミルアさんとルチアさんの物言いは私がルーディス殿に好意を寄せているような言い方です。




