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ひとくちの魔法  作者: 紫音
45/64

45話

「それで、どう思う?」

「そうですね……」


シュークリームを食べ終えて一息ついた時、ルーディス殿は再び、口を開きます。

摂取した糖分を使って頭を動かします。


領主としての適性で言えば、エルザード様と比較してルーディス殿は遥かに劣る部分もあるのですが……エルザード様の助けになろうと領地運営で自分の出来る事には精力的に動いています。

領民の誰もが認めている事で、不可思議な実験をしていてもそれが領地のためになるのならばと警戒しながらも手伝う者もいます。

そして、ルーディス殿は結果を出している。今回の領地復興の見通しが立ったのは間違いなく、ルーディス殿の功績とも言える。

そこから考えればルーディス殿が領主になるのは問題ないとも言えます。ですが……領地を運営して行けるかどうかは別問題です。


「ルーディス殿が領主になる事自体には問題はありません。エルザード様の体調や王都との繋がりを考えればルーディス殿が正式に領主になるべきでしょう」

「そうか。フロース=フロウライトもレストと同意見か」


領地を運営するには力不足かも知れませんが、先輩やレオンハルト様との繋がりを利用すれば優秀な人材を派遣して貰えるでしょう。研究者として結果を残しているルーディス殿ですから優秀な人材が付けばすぐにその辺りも覚えてしまいそうです。

そのような希望的な物を加えてもルーディス殿が領主になる事には賛成の意志を見せる。

ルーディス殿は私の言葉を聞いて、目を閉じて小さく頷きました。


その様子にはどこか自分が領主になるべきではないと否定して欲しかったようにも見えます。

それでもフェミルアやこの国の事を考えれば決断は早い方が良い。


「……私が領主になった方が良いと言う事は理解が出来る。ただ、私はこのような性質だ。領主が務まるとは思えないのだが」

「そうかも知れませんが、それでもルーディス殿は王都からフェミルアに戻り、この地の事を考えて尽力しました。その事を多くの領民達は認めています。自分達のために尽力してくれた方への恩を領民は忘れません。必ず、領民達はルーディス殿を領主と認めてくださいます。現在、能力に不安があるのでしたらこれから学んで行けば良いのです」


ルーディス殿はフェミルア復興の目途が立った事はすべてエルザード様の功績だと考えているようにも見えます。

不安を拭っていただけるように言葉を探す。領民達からの信頼を得られている事、将来性を考えても充分な資質をルーディス殿は持っている。


「これから学んで行けば良いか」

「はい」

「……そうなると私にいろいろと教える人間が必要だな」


私の言葉にルーディス殿は小さくため息を吐きました。

そのため息は逃げられないと判断したようにも見えてしまいますが見ないふりをしておきましょう。

そう考えて頷いて見せるとルーディス殿は小さく頷いた後、なぜか、私の顔を見ます。

その視線になぜかイヤな予感がします。


「……どうして、私を見るんですか?」

「これからは領地運営の事はフロース=フロウライトに学ばなければいけないな」

「これ以上は無理です」


話の流れからイヤな予感が何を示しているのかが分かってしまうのですが認めたくないため、視線をそらしてしまいます。

しかし、無慈悲な言葉が耳に届きます。現在でも私は多くの仕事を抱えているのです。これ以上の仕事を任されてもさばき切れる自信はない。

その事を伝えてみるのですがルーディス殿が視線をそらす事はない。


「私に領主になれとたきつけておいて自分は何もしないつもりか?」

「そう言う問題ではないです。だいたい、私は客観的事実を言っただけです。現状で忙しすぎて無理です」

「その状況を見ながら、覚えて行けば良いのだろう」


視線をそらす事無く、言われてしまうのですがここで退くわけには行きません。

無理だとテーブルを叩いて見せるのですがルーディス殿の中ですでに決定事項のようで退いてくれる気は無さそうです。


「どうして、私なんですか?」

「他の人間が来ても私との会話が成立すると思うか?」

「……思いません。ですが、領主になろうとしているのですから必要な事です」


諦めさせる理由を作るために彼の言い分を聞いてみると他に適任者がいないと言われてしまう。

認めたくはありませんが確かに初対面でルーディス殿と会話を成立させるのは困難です。

ですが、それはルーディス殿が領主になると決めたのであれば避けては通れない道です。

強く言ってみるとルーディス殿は少し考え込みます。


これでわかってくれないでしょうか?


希望的な考えを持ちながら、ルーディス殿の答えを待ちます。

その時間はどれくらいだったのでしょうか? すごく長い物に感じられました。


「確かに必要かも知れないが、最優先で覚えるべきは領地運営の実務だ。それが出来なければ来客があっても対応ができない。何を言っているか理解できていないのだからな」

「それは……確かに」

「私は兄上の体調の事を考えてすぐに領主の仕事を引き継がなければならない。そのような悠長な事は言ってはいられない。それに私が1つでも領主の仕事を出来るようになれば、フロース=フロウライトの仕事も減るだろう」


状況把握をされた上で優先事項を決められてしまいました。

言われてみればその通りなのですが、なぜでしょう。不安です。


「……納得が出来ていないようだな」

「そう言うわけではありませんけど……酷く不安です」


不安が表情に出てしまったようでルーディス殿は視線を鋭くする。

言い分としてはルーディス殿が正しい気もするのですが不安が消えない……むしろ、なぜか背中に寒気がします。

何かまたおかしな企みの中に巻き込まれているようなそんな感じです。


「……とりあえず、レオンハルト様と先輩に頼んで人を送って貰う事も視野に入れさせていただきます。ルーディス殿が領主を引き継ぐ件で報告するべき事が滞ってはいけませんから」

「そうしてくれ。とりあえずは兄上のところに行くか。この件について話をしなければならない」

「わかりました」


方針が決まってしまえば、ルーディス殿の行動は早い。

すぐにエルザード様のお部屋に向かい、今回の件を報告するとエルザード様はすぐに領主をルーディス殿に譲ってしまいました。

それだけ信頼し合ったご兄弟だと言うのはわかるのですがこんなに簡単に進んで本当に良いのでしょうか?


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