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ひとくちの魔法  作者: 紫音
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12話

「こんな姿で申し訳ありません。フロースさん」

「そ、そんな事はありません」


ルーディス殿に案内されて部屋に入るとその部屋はどうやらフェミルア領主のエルザード様の寝室だったようです。

すでにルーディス殿から私の事は説明されているようでベッドから身体を起こして私を出迎えてくれました。

体調を崩しているとは聞いていましたが、その顔色は青白く医療の心得の無い私にも彼の体調が芳しくない事はわかります。


……お屋敷のお部屋の貸し出しはお願いしたいけど、エルザード様の体調を考えるとあまり良くはないでしょうか?

王都から贈られてくる者達を領主のお屋敷に一時的に住まわせようと考えていましたが、ここまでふせっているエルザード様に頼んでも良い物でしょうか?

これ以上、体調を崩されてはいけないため、言い出さなければいけない言葉が出てきません。


……後にしましょう。まずはこれからの概要を説明して、領内を見せていただいて領内の状況を確認してから話をしましょう。

私が問題を後回しにしようと決めたのですが、私は1つ忘れていました。このお部屋の中には私とエルザード様以外にもう1人いらしたのです。


「フロース=フロウライト、そう言えば、なぜ、ルチアに屋敷の掃除を頼んでいたんだ?」

「その話は後ほど」

「なぜだ? 兄に聞かせられない事なのか?」


……先ほど、ルチアさんに掃除を頼んでいた事にルーディス殿が疑問を抱いてしまったようです。

今、この状況で聞かないで貰いたいのですが、ルーディス殿は気になる事があると追及しなければいけない性質らしい。


「私の体調を心配してくれているのなら気にされなくても良いです。最近はだいぶ、体調も落ち着いてきています」


ため息が漏れそうになるのですがエルザード様の前では失礼に当たるかも知れません。どうするべきかと頭を悩ませていると彼は私の苦悩に気が付いてくれたようで柔らかい笑みを浮かべてくれました。

……後回しにしても仕方ないと思い直し、深呼吸をした後、わかりましたと頷く。エルザード様は頷き返してくれたのですがルーディス殿は私が話しださない事が不満なのか面白くなさそうです。


「王都でのフェミルア支援の1つに人を送ろうと考えております。ですが……」

「住む場所を確保できるまで、この屋敷に住まわせようと考えたわけですか」


話の途中でエルザード様は私の考えを察してくれました。どうやら、頭の回転は悪くはないようです。

……それはそうか。学園在籍中は災厄扱いされていた事もありますが多くの実績を残したルーディス殿の実の兄なのである。優秀なのは間違いない。

ただ、私の提案を了承できるかはまた別の話でしょう。素性のわからない者も多く受け入れなければいけない。現状では暗殺などをする利点はないため、直接的に命を狙われる可能性は低いでしょうがなれない人間が側にいる事が重荷になる人間だっている。

考え込み始めるエルザード様がどのような答えを出すかはわかりません。


「わかりました。できるだけ、協力をしましょう。ただ、問題は掃除が間に合うかですね」

「そうだな」


エルザード様は私の提案を快く受け入れてくれたのですが、ルチアさんの掃除の能力に著しく不安を感じているようです。

ルーディス殿と顔を合わせた後に2人そろって肩を落とす様子にどのように反応して良いかわからずに顔が引きつってしまいました。


「……あの、ルチアさんはどうしてこのお屋敷で使用人を?」


現在のフェミルアでは優秀な使用人を雇えないと言う事なのでしょうか?

多くの人を受け入れればこのお屋敷に仕える方達にも大変な負担になります。その中でルチアさんの能力が低ければ問題が起きてしまう可能性もあります。

失敗ばかりの人間を雇っていて余計な出費を増やすわけには行きません。わずかな間しか話はしていませんが彼女が良い人だと言う事はわかっています。

それでもフェミルア再興を行わないといけない私は最悪の場合には彼女に退職(クビ)を言い渡さなくてはいけないかも知れません。

そうならないように彼女がこのお屋敷で働いている理由や掃除ができないにしてもそれ以上に雇い続ける理由を探そうと思ってしまいました。


「……ルチアがここで働いているのは趣味だ」

「趣味?」


……なぜか、趣味と言う予想外の言葉がルーディス殿から返ってきました。

意味がまったく理解できなくて声が裏返ってしまいました。


「ルチアは元々、商家の娘なのですが父親とケンカしたらしく、このお屋敷に転がり込んできました。彼女の父親と私達の両親も懇意にしていたため、放り出すわけにも行かず」

「おいて貰うのだから、何かしますと言って気が付いたら、メイド服を着て働いていた」

「一生懸命に働いてくれますし、彼女の父親からもよろしくお願いしますと頼まれています」


……あれ? どう反応して良いかわかりません。

斜め上過ぎる彼女の行動にどう反応して良いのかわからずに眉間にしわが寄ってしまいます。


「わ、わかりました……ルチアさんの名前は確か、ルチア=プロジェート? プロジェート?」

「ルチアを預かっているため、恥ずかしながらわずかばかりですが支援も受けて居まして」

「そうですか」


何とか返事をするのですが無駄な出費を出すわけには行かないため、彼女には1度、生家に帰って貰った方が良いのではと頭が考え始めるのですが彼女の名前に何かが引っかかりました。

プロジェートと言う名の商家には聞き覚えがありました。王都を中心に手広く商売を行っている商家です。ルチアさんはそこの娘?

そう考えるとプロジェート家から多くの融資をいただけるのではと思うのですが、私の知るプロジェート家の当主は娘が家出をしようと他者に頭を下げるような事はしない。

そうすると私が名前の知らない同じ名前の小さな商家の娘さんなのでしょう。

娘1人の生活費くらいは送ってくれていると言う事でしょうがあまり額は期待できないでしょう。

ただ、彼女に退職を言い渡さなくても良いと言う名分は出来たような気がしてどこか安心してしまいました。


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