成人の儀ですがなにか?
ヒュッ
トスン
風を切る音が聞こえ矢が的へと吸い込まれていく。
普段と変わらぬ鍛練であったがカイの心は弾んでいた。
今日で15になる。それはこの国では一人前と認められることでもあった。
「たのしそうですね。若」
次の矢をつがえたカイに後ろから女性の声がした。
急に声をかけられたのにも関わらず集中力を乱さずにカイは矢を放った。矢は狙いを違わず的へと当たる。
「シノ、そんなことで驚くほど俺は子供ではない」
カイは急に後ろに現れた女性に笑みを見せる。
シノと呼ばれた女性はくすっと笑い、カイにタオルを渡した。
彼女はカイの守役にして優秀な護衛でもあった。
「ですが、あんなにワクワクとした顔で鍛練を致しては精神統一はまだまだじゃないですか?」
「そうはいっても俺も今日で大人として数えられるのだ。そして何よりも、爺さまから頂く武器が何なのか楽しみで仕方ない」
彼の心の弾みは、この国の人間の誰しもが持つものであった。
成人の儀として男女を問わず身を守るための武器を授ける。
それはこの国が小国であり、緊急時は国民の成人全てが兵として徴収される。その軍事力が小国でありながらこの国の支えでもある。
そし子供たちはその為に鍛錬を欠かさない。カイももちろんその一人であった。
カイの場合は祖父の強い要望で祖父がカイに武器を授けることになった。理由はとても簡単でどの兄弟よりもカイがの面影を残していたからだった。
「」