プロローグですがなにか?
喧騒に包まれる街中を男は気だるそうに歩いていた。
いや実際に二日酔いに悩まされている男は、今日の仕事を本気で休もうかと真剣に考えているのであった。
「あーもー、今日は会議があるっつたのに」
男は自分を飲みに誘った人物を恨みながら重い足を仕事場に運ぶ。
目的地は自身が所属するギルドである゛豊穣゛。
この国の五大ギルドの一つ。
彼はそのギルドの役員なのだ。
彼の名はカイ。
この国のトップギルドの役員だけに顔も多くの人に知られている。
「カイさんまた二日酔いかい?」
そういって市場の売り子がトマトを投げ渡す。カイはそれをキャッチすると銅貨を1枚投げ渡した。
「あんがと」
トマトをかじると果汁が口に広がり爽やかな気分になるのをカイは感じた。
(確か三日前も同じようにこの道を通ったけ)
週に二回ある会議の度にこんな姿を見せるのはギルドの役員としていかがなものかと思うカイだがいかんせん彼は忙しい。
住民もそんな彼を知っていてあれこれ世話をやくのだ。周りがそういう風にするのもカイの人徳によるものだった。
特に何事もなくギルドにつくと受付嬢のミリーが掃除をしていた。
愛想のいい性格と少女っぽさが抜けない顔つき、その愛らしさはこのギルドの看板娘と言っていいだろう。
「あ、カイさん、おつかれさまです。今お茶を用意します」
そういうとミリーはパタパタと奥に引っ込んでいく。
どうやら他の役員はまだ到着していないらしい。
カイは会議室の自分の席に向かうと冷たいお茶をミリーが持ってきてくれた。
「昨日は大変だったみたいですね?」
カイは頭をかきながら頷く。
「何が悲しくてクソジジイ達と酒を飲まなきゃいけないんだ」
彼がクソジジイ扱いしているのはこの国の重鎮達、武官もいれば文官もいる。
カイが呼ばれたのは文武官とギルドの代表者が国の今後について話し合う場である。
本来ならギルドマスターが出るべきなのだが、
「強敵が私を呼んでいる」
と戯言を抜かし逃走。
誰を代理人を勤めるかを話し合った結果。
本来ならNo.2でいいのだが
No.2脳筋
No.3無口
No.4KY
No.5天然
No.6引きこもり
となんとも堅い場には向かない人間が上層部を閉めている。上位ギルドとしてこれはどうなのよと言う連中ばっかりだが卓越した戦闘能力を持っている為なかなか順位の変動が起きない。
そこで白羽の矢が立ったのがNo.7のカイである。
戦闘能力は他の上層部のメンバーとも遜色がない。
また事務職のトップとしてお偉いさんとの会合などにも出席しているので問題ないと仕事を押し付けられたのである。
そもそもギルドマスターがギルドを立ち上げた際に事務の募集で入ってきたのがカイである。
本人はデスクワークのみを希望していたのだが東方の国から旅をしてきた腕を買われ、ギルドの人手不足解消の為に、ギルドマスターがあの手この手を尽くしてしてギルドのメンバーとして迎え入れたと言う経緯がある。
「とりあえず、ギルマスは減給と・・・」
「勝手にギルドの長の給料を差し引いて大丈夫何ですか?」
減給と明言したカイにミリーが聞いてくる。彼女にとってギルドマスターはギルドのメンバーに対して最高の権限を持つ人物であり、カイはギルドの幹部とはいえギルドマスターとの権力が違う。
「ミリーはギルドに入って3ヶ月ぐらいだっけ?どうせ他のメンバーがくるまで時間がかかるしギルド'豊穣'の成り立ちを話そうか?」