帰宅
帰宅
初日の勤務を終えると、勇司はエンジンを載せ変え、二人乗りできるように改造した原付で帰宅している。
(ハァー・・。口の中がイガイガする。極力特技は使わずいきたいけど、この仕事じゃそうゆうわけにもな。)
少しローテンションで帰宅すると先に帰宅して、リビングでテレビを見ていた元に話しかけた。
「親父いつの間に、教師から特局になったんだよ?」
元々警視庁で刑事をしていた元は、変革記念日の後設立され、勇司も通っていた特技養成学校で教師をしていた。
「今の特局の局長に頼まれてな。しょうがなくだよ、しょうがなく。昔の借りを返せって脅されてな。」
意外と頼まれ事に弱い親父に呆れつつ、母親のほうを見ると、母親は夕食の調理をしているが、それはあまり普通の光景ではない。
母親の特技は【家事加速】と言う分かりやすい特技である。母親が二人にも、三人にも見える速度で料理が作られていく。お米を研いでから炊けるまでわずか二分というスピード調理だ。母親のあまりのスピードに調理風景を眺めていた勇司は、少し目が回り気分が悪くなってくる。
変革記念日より人々の生活に特技は欠かせないものとなった。
特に大きかったのはエネルギーと食料問題である。
政府は特技という存在に気付くと、まずは誰が何の特技をもっているかというリスト作りに入った。
リスト作りは難航したが、それを解決したのは一人の元機械音痴の女性である。
政府からのリスト作りの指示があらゆる機関に回った頃、とある地方支所に勤めていた彼女はパソコンの戸籍謄本のページを開いていた。
(この欄のどっかに特技もかいてくれてたら便利なのになー。)
彼女がそう思いながらパソコンに触れると、パソコンから強い光を放たれる。すると、全ての戸籍謄本に特技の欄が作成され、さらには全てが記入されていたのである。
そこからの政府の対応は早かった。国民の特技を把握し、まず手始めにエネルギー問題、そして食料問題に取り掛かったのである。
リストが出来上がっていた事で人選はあっさりと進み、政府は必要な人員の囲い込みに成功した。
エネルギーも食料も既存の施設を使い、人力で作るというクリーンな施設を人々は喜んで迎えいれられた。
そうして解決した問題もあれば逆に起こる問題もある。その一番手が、特技を悪用した犯罪である。
こうした内容は特技養成学校で最初に習う事であり、今は小学生でも理解している話しであろう。
勇司はわずか三分半でできた夕食を食べるとすぐにその日はベットに入ったが、体は疲れているというのになかなか眠りにはつけなかった。
(今日初めて実戦で特技使ったけど、自分の特技は実生活には全く役立たないよな。なんとか特局で頑張ってみるしかないか。とりあえずこんな事考えてないで、寝なきゃだな。)
勇司は一日をそう振り返り、さきほどの母親の動きを脳にちらつかせながら、なんとか眠りにつくのであった。