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特技の使い方 〜吸えない煙草〜  作者: cozy
吸えない煙草 第一章 入局
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リベンジ

リベンジ


翌日、勇司が26室に入ると、いつも通り霰がパソコンを前に作業していた。


「おはよ、勇司君。お腹は大丈夫だった?」


「大丈夫大丈夫。拳の形のあざができて、食べたもの全部口からでてくるくらいで、後は元気、元気。」


霰はその発言に少々引き気味のようだ。


「それより、昨日の犯人は分かりそう?」


「それはもうばっちりだよっ!はいこれ。」


一枚の書類を勇司に渡してくる。上島 学 29歳 特技【拳闘】他、様々な情報が書いてある。


「もうわかったんだ。そいつはすごいな。」


「でしょー。なんとか20人くらいにまでしぼって久信君に見てもらったらすぐ分かったよ。」


(そう言われてみたら、確かに昨日の男に似てる気がするような、しないような。しかし、次逢ったらどうするもんかね。)


勇司が書類とにらめっこをしていると、元と久信が二人で26室に入ってきた。


「よーし、とりあえず最近は夜までお疲れさん。とりあえず腕試し事件というか、この傷害事件をお前らに任せてもいいか?」


「私は構いませんよ。」


久信の答えの後、皆が勇司を見ると何かを決断したように立ち上がる。


「よし、やろう。まだ時間あるよな。少し訓練室行ってくる。時間になったら呼んでくれ。」


勇司は足早に26室を出ていった。


「昨日あっさりやられたわりにはなんか妙に元気そうだな。」


「すごいやる気満々だったねー。必殺技でも考えたのかな?」


元と霰が意外そうな顔をして、勇司が出ていったドアを見つめていた。



夜になり、ワンボックスには三人が座っていた。上島の自宅、職場と行ってみたが空振りに終わり再び腕試しの現場を押さえる事にしたのだ。


「勇司君、なんか今日はやる気が違うね。一人で訓練室なんて珍しいよー。」


「さすがに昨日のはあんまりだったからな。ちょっと特訓してきたよ。」


霰の言葉に勇司は多少表情を硬くして答える。


「たしかにあんまりでしたね。開発班から戦車でも借りてきたほうがなんとか勝率上がると思いますよ。」


「素手に戦車か。たしかにそれもありだな。」


久信の冷やかしにも冷静に答える姿に、普段とは違う様子がかいまみえる。

そして、ワンボックスから警戒を始めて二時間ほどたった頃、久信が上島を発見した。


「見つけましたよ。どうやら今日はまだ獲物を探している段階のようですね。じゃあ行きますか。霰さん、車は任せます。」


久信は勇司と共に、車を降り上島へ近付いていった。


「久信、悪いけど一人でやらせてもらってもいいかな?」


「構いませんけど、容疑者が逃げそうになった時は容赦なくスタンガン撃ち込みますよ。」


久信が銃タイプのスタンガンを持ちながら答えると勇司は軽く頷き、歩みを早めた。そして上島の前へと立つと勇司がIDカードをみせる。


「上島 学。特局だ。悪いが腕試しも今日までにしてもらおうか。」


上島はすぐさま踵を返し、逃げようとするがそこを霰の運転するワンボックスが道を塞ぐ。上島は振り向くと勇司に向き合った。


「よく見たら昨日の兄ちゃんか。特局のというわりには一発だったな。またダウンしたいのか?」


「ダウンはしたくもないし、痛いのも嫌だけど、一応最後の腕試しをしてもらおうと思ってな。」


勇司はそう言って構えると、久信は一歩下がる。久信の横に車から降りた霰もやってきた。


「なんか今日の勇司君違うね。みなぎってる感じするよ。」


「たしかにそう見えますが、赤煙でも使うつもりですかね?」


上島と勇司は向かい合うと、二人とも構えているが、明らかに上島のほうが様になっている。


「兄ちゃん、張り切ってるとこ悪いけど昨日みたいに手加減はできないからな。」


勇司は懐から煙草ケースを取り出し、白い煙草に火をつけた。


「こっちも悪いけど特技使わせてもらうよ。」


上島が滑るように勇司に迫る。勇司は一杯に吸い込んだ白い煙を上島の顔めがけて吐きだす。


【白煙】


視界をうめつくす白煙によって、上島は勇司の姿を見失う。頭を下げながら不格好な姿で突き出された拳をかわすと、勇司は上島の右足の膝の内側に右足でインローを入れる。さらに離れ際に外側の膝横に左足でアウトローを入れ、再び距離をとった。

軽く上島はぐらつく、そして勇司の猛攻が始まった。


【白煙】

インロー、関節蹴り


【白煙】

アウトロー、インロー


【白煙】

インロー、インロー


【白煙】

アウトロー、関節蹴り・・・・・。


上島はたまらず地面に倒れ込んだ。勇司は大きく息を一つ吐くと、上島に手錠をかける。




「ねえねえ、久信君。なんて言うんだろ。なんていうか・・・。」


「・・・地味ですね。」


「だけどなんか満足そうな顔してるし、言わないでおいてあげようか。」


「霰さん、大人な考えで素敵ですよ。」


久信と霰の会話は勇司の耳には届かず、搬送されて行く上島を見ながら満足げな笑みを浮かべるのであった。



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