猛禽類とドライバー
猛禽類とドライバー
一人山の中で佇む、黒いジーンズに黒いパーカーを着た精悍な顔付きの男は地面に横たわり眠っていた。顔を雀に突付かれ、瞼を二度三度ピクつかせるとようやく目を開ける。
「どこだここ?明らかに山ではあるが、知ってる山ではないな。スズメ君、ここはどこだ?」
チュンチュン鳴く声に耳を澄ませるが、その意味をなかなか感じ取ることが出来ない。
「聞いてて悪いけど、猛禽類以外は何言ってるか分からないな。起こしてもらって悪いけど、あと五分。」
そしてきっかり五分後、おでこに深く何かが刺さり要はしっかりとした覚醒と流血を確認した。
「何だ何だっ!狙撃か?」
目の開いた先には至近距離に鷹の姿があり、思わず立ち上がると息を吐く。
「寝起きにタカは強烈だな。多少おでこえぐれ気味だが大丈夫か俺?それにしても何でこんな所で寝てたんだ?」
一人額から血を流しながらも悩み、要は昨日の行動を思い出していた。
「えっとー、昨日は15人捕まえて、組織を二つやってその後一人でたしかお疲れ様会したよな。いい気分で帰ろうとしたらキャッチに捕まって店入ってぼったくられて、確かその店を解体したような気が・・・。その後公園で鳩相手に飲み直した後から記憶がないぞ。」
二日酔いなのか額の傷のせいなのか分からない頭痛に悩まされながらも、鷹から差し出された瓶を開き飲むと思わず吐き出す。
「焼酎じゃねえかよっ!タカくんじゃないな、君はちゃんだな。しっかり頼むよ。」
ポケットの中では先程から何かを知らせるように携帯が震え続けているが、気にせず再び要は横になる。
「今日は確か非番だし、まあいいか。やっぱり山は少し寒いな、タカちゃん少しいいかい?」
少し恥ずかしそうに寄ってくる鷹を抱き締め、高めの体温を感じながら要は再び眠りに落ちていく。事件に気付く事もなく0班で一番の懸賞金をつけられた男は、追手からも特局からも見つかることなく時間が過ぎていくのであった。
操縦桿を握る着崩した燕尾服が妙に似合う長身の女性は、耳と肩の間に携帯を挟んで何か連絡を受けている。
その横の副機長が座るべき席には大きくて小さい人形が座らされ、更にドアを一つ隔てた客席にはさらにずらりと人形が余すことなく着席していた。
客席の間の通路ではキャビンアテンダントの制服にグラマラスな肢体を包んだ雪がカートを押しながら人形の世話を続けている。
「刀削麺と酸辣湯麺どちらになさいますか?」
すると少し狂気を感じる光景を気にせず、ドアが開くと操縦席から昴が声を掛けた。
「帰ってこいってよ。雪どうする?」
「えーっ、これ乗せるの大変だったんだよ。まず服を着替えさせるのに一日でしょ、その後乗せるのに一日掛かったんだから。」
「今日は霰は特局内らしいぞ。一日レンタルできるらしいけど、さてどうする?」
すると雪は制服姿のままダッシュし、副操縦席に座り膝の上に人形をのせると操縦桿を握り締め特技を使う。
「帰るっ!すぐに帰らなきゃ!世界があたしに追い風だよっ!」
【電脳誘惑】
旅客機のエンジンが唸りながらスピードを上げ機体が軋みながらも、悠々と限界を超えていく。操縦桿を握る昴は一瞬焦りながらも、すぐにワイルドな笑みを浮かべ機体をコントロールし更にスピードを上げた。
「しっかたねえな。二分で帰るぞ。」
旅客機は空気の壁をぶち破り、特局への航路を急ぐのであった。
主人公の出ない三話でした。
次回から通常な感じで話は進みます。




