暴走
暴走
勇司達は埠頭に到着し第3倉庫へと入ると、そこには携帯を力一杯握りしめた雪が座り込んでいた。その横には見た覚えがあると言うより、完全に勇司の原付がある。
「雪さん、どうしてこんなとこに?」
雪はうつむいたまま何も答えない。
「雪嬢、これはもしかして局長にやっちまったか?まあ、それはいいんだが、雪嬢ここまでしてどうしたいんだい?」
雪は涙を拭きながら、上を向き答えた。
「あたしのせいで、あられちゃん誘拐されたのにあたしだけ、安全な場所で待っとくなんて無理だよっ!」
雪の叫び声に合わせて、勇司の原付が全てのライトをパッシングさせさらにはエンジンを吹かしている。
「雪嬢落ち着こうや。特技が暴走しとるよ。」
元はハンカチを出し、雪の顔面をワシワシ拭く。大人しく拭かれていた雪はなんとか多少の落ち着きを取り戻していった。
「橋中班長、お願い!あたしも連れてって。あたしがあられちゃんを助けたいの。」
「どうする、勇司、久信。局長の助けは借りられないからここにいるメンバーだけでやらないといかんが。」
元は苦笑いを浮かべながら質問してくる。
「情報班にやられるような、父の手伝いなんて必要ないでしょう。」
表情すら変えずに久信は言った。
「雪さんのおかげでその原付貰えたんで恩返ししなきゃだしな。そういやまだ、霰にX定食奢ってないし。」
勇司は頭を掻きながら答える。
「じゃあ、やるしかないか。まずはお嬢ちゃんの居場所をなんとかしなきゃだな。」
その時、倉庫の扉が開き屋台をひいたツナギ姿の老人が入ってきた。元と久信は銃を抜き、勇司は雪の前に立ち、懐から煙草ケースをだしている。
白いツナギをきた老人は勇司達の前に屋台を止めた。
「なんにする?」
元は銃を降ろすとホッとした表情を浮かべる。
「池中さん、やめてくださいよ。じゃあ醤油ラーメンと、スタングレネードをいくつか。あとダイナマイトもあれば。早くお前らも頼めよ。」
元は椅子に座り、ラーメンと頼んだサイドメニューを待っている。
「じゃあ、あたしはつけ麺とパソコン下さい。」
雪も当たり前のように注文し、椅子に座る。久信と勇司は戸惑っているがすぐに二人に習うと注文をしてみる。
「じゃあ塩ラーメンと、スナイパーライフルと弾をお願いします。」
「味噌ラーメンと強力なターボライターを、っていうかなんで池中班長が?」
勇司の質問は無視され、海人はラーメンを作る手を休めない。
「やめとけ、勇司。池中さんは何か作業している時、質問に答える事はないぞ。」
そして四人は揃ってラーメンをズルズルとすする。ラーメンを食べ終わる頃には、サイドメニューも出来上がり、海人は再び屋台を引いて帰っていった。
「あの人相変わらずだな。じゃあ腹も膨れたしやるか。とりあえず雪嬢、犯人は多分彗星会の連中だ。」
「なんか不思議な名前ですね。じゃあ探します。お願い、パソコンさん」
【電脳誘惑】
少しでも彗星会に関連する施設を片っ端からパソコンは調べていく。全ての関連施設の防犯カメラから、組員の携帯電話にまで全て侵入していった。
「あられちゃんのいる場所分かりました。ここのビルです。」
「おいおい。ここ彗星会の本部じゃねえか。」
元はビルの場所を見て驚く。
「相当、隠蔽に自信があるという事でしょうね。」
久信の言葉に元は頷き、腰を一度叩くと気合いを入れる。
「まあ、そうゆう事だろうな。とりあえず今回は出し惜しみなしだ。全力で潰しにかかるぞ。」
その言葉を聞くと勇司は煙草ケースの中でも、特に苦手な煙草が頭に浮かぶ。
(出し惜しみなしって事はあれ使わなきゃいけないのか?あれ、使うとしんどいんだよな。だけど使わなきゃいけないんだろうなー。)
勇司は局長に報告しようかと、本気で少しだけ考えるのであった。




