破壊
破壊
二人は新しく被害の出た場所の情報が入り、急行していく。サイレンを鳴らしながら黒いセダンを走らせ、現場に到着するがそこには六人の男女が倒れていた。すでに救急が到着し、急いで搬送が行われている。
「こりゃあ雰囲気的に連れってわけでもなさそうだよな。」
「確定はできませんが、たまたまここを歩いていた人達という可能性が高いでしょうね。今ならまだ追えます。」
久信が特技を使おうとするが、無線で次の被害が出たとの連絡が入り、二人はすぐに次の現場へとセダンを走らせていく。
その現場にはまたも、見た目も雰囲気も共通点の見当たらない四人が倒れていた。周囲には野次馬が集まり、現場は騒然とした雰囲気に包ませている。
二人は車から降りることなく更に車を走らせ、久信は特技を使っていた。
【思金神の眼鏡】
ハンドルを握る久信は迷う事なく車を進め、容疑者の痕跡を追いかけていく。そして左の歩道を走るジャージ姿の男の背中を捉えたのであった。
その背中は洋服越しでも分かるほど筋肉が発達しており、ジャージをはちきれんばかりに押し上げている。そして上下共に明らかに丈が足りておらず、手首と足首が完全に露出していた。
「見つけましたよ。だいぶ様子が違いますが間違いないですね。」
「えっ?あれがかっ?後ろ姿の時点で違うだろ。それにしてもかなりの速度で走ってるな。」
セダンはスピードを上げて男を追い抜いていくと、勇司は資料にあった写真と見比べてみる。その顔は心なしか面影があるような気もするが、勘違いの一言で済ませられるほどの微細な面影であった。
「やっぱり違うんじゃね?この写真ってたしか三ヶ月くらい前のやつだろ。第一次成長期でもこんな変わらねえよ。」
「討論している場合ではなさそうです。次の標的が見つけたようなので勇司さん、お願いします。」
走り続ける男は目の前を歩く学生の集団にむけて、さらにスピードを上げて襲いかかろうとしていた。
スピードを緩めたセダンからタイミングを図り、助手席のドアを開けると勇司は一気に飛び出し男の膝にしがみついていく。そのまま倒し、男を倒すと勇司はすぐに立ち上がり、IDカードを提示する。
「特局だが。保田 人輝なのか・・・?人違いだったら問題になるけどそうなんだよな?頼むからそうだと言ってくれよ。」
男が立ち上がりながら体に見合わないほどにか細い声を出す。
「ああ、そうだよ。あと二つなんだ、あと二つで千に届くんだよ。」
「何するんだよ?そんな集めて。趣味か?それとも性癖か?だけどすでに死人も出てるんだ、止めさせてもらうぞ。探すのにも苦労したしな。」
保田は何もないはずの背に手を伸ばすと、いつの間にか巨大な木槌が握られ、驚く間もなく振り下ろされる。慌てて勇司は後方へと転がり木槌を避けようとするが、転がっている最中にポケットから何かが抜けおちる感触に気付いた。
「あっ!」
地面には勇司が一ヶ月前に変えたばかりでポケットから逃げ出した携帯が落ちている。そしてその場所に上から木槌が勢い良く叩きつけられる瞬間を、勇司はスローモーションに感じながらしっかりと見つめていた。
携帯に手を伸ばす暇もなくバラバラに破壊され、元の姿に戻す事はできそうにもない。
「これでやっと後一台。」
勇司にも聞こえないほどの小声で保田は呟くと、壊した携帯を見向きもせず、先程見つけた学生達に迫ろうとするが近辺にその姿はない。
セダンを降りた久信は学生達を逃がし、壊れた携帯を見つめる勇司の元に歩いてやってくる。
「これは派手にやられましたね。勇司さんも被害者の仲間入りですか。」
「目の前で携帯が壊されるのはなかなかに切ないな。そしてあと一台で千台に到達らしいぞ。」
すでに保田は次のターゲットを久信に絞ったらしく、木槌を握り力を込めていた。
「たしか特技は【弁慶】で、携帯を千台ですか。奪われるのは全力で阻止した方がよさそうです。」
「ああ、そしてかなり悲しい気持ちになるから守り切ったほうがいいな。」
久信を特局の局員と判断した保田は、木槌を振りかぶり携帯を奪おうと一気に襲いかかっていくのであった。
ここからしばらくは落ち着いた話が続く予定です。
登場人物を極力少なく、そして分かりやすくいきたい。
とりあえずここまで読んでいただき感謝です。
誤字脱字、感想、リクエストなどなどおまちしております。




