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特技の使い方 〜吸えない煙草〜  作者: cozy
吸えない煙草 第一章 入局
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予感と別れ

予感と別れ


勇司は焦りながらも原付を走らせ、迷っていた。


(どうする。指示通りビルへ向かうか。それとも狙撃を受けている公園へ向かうか。迷ってる時間はなさそうだな。)


勇司は久信に無線を繋いだ。


「久信、そっちは一人でも大丈夫そうか?」


(「もう狙撃現場に到着する所です。あなたが着く頃にはすでに解決してるでしょうから来ても無駄です。公園の方に行ってきて構いませんよ。」)


「一応恩にきる。そっちは頼んだ。」


勇司は公園へと向かう中で勇司の嫌な予感は再燃する。その予感は的中し永遠の別れとなるのであった。




元は反射的に子供の元へと走っていく。走っている最中にも銃を放ち、矢を一発で粉砕する。


(ちっ、大口径すぎて四発が限度だわな。)


【自動拳銃創造】


元の両手に二挺の自動拳銃が握られる。連発で打ち込み、子供に飛んできた矢をなんとか撃ち落とし子供の前に立ちはだかった。


(目に入ったもの、無差別になってきたか。んっ?なんで射ってこない。)


その時、後ろから雪の叫び声が聞こえる。


「橋中班長、右ですっ!」


元が右を向くと、目の前には黒い大型の猟犬が口を開き牙を光らせ、首もとに噛みつこうとしていた。


咄嗟に右腕で元は首をかばうが、猟犬はそのまま右腕に噛み付き、その勢いのまま押し倒され、思わず銃を手放してしまう。


(こりゃあ完全にミスだな。狩人に猟犬とはありがちな組み合わせだ。)


その場に子供が取り残され、矢が襲いかかる。


「させないっ!」


【電脳誘惑】


子供の前に上空から、スパイヘリが落下以上の速度で突き進み、子供の前で停止すると、盾となり矢を受け墜落した。


「みんな頑張って。」


さらにスパイヘリが上空から降りてきて、ホバリングし盾となる。

雪は子供の元へと走りだし、なんとか辿り着くが、しかしその時にはもう飛んでいるヘリは存在していなかった。


雪は子供を抱き締め、目をギュッと瞑る。

その時、先程聞いた記憶のあるエンジン音が近付いていた。


「雪さん、しゃがんでっ!」


勇司は運転しながら銀色のタバコの煙を思い切り吸い込む。


【銀煙・ダーツ】


煙を吐き出すと同時に、銀色の粒子の混じった煙が数本のダーツとなる。ダーツは一直線に飛んでいき、そのうちの一本が矢に当たって軌道が変わり、雪の足元へ深々と刺さった。


勇司はアクセルを一度戻し、雪と子供を強引に抱くと、アクセルを全開に吹かす。

原付は甲高いエンジン音を出しながら、その場を走り去ろうとするが、何か金属が割れる音と共に突然エンジンは止まり、ハンドルがロックされバランスを崩した。


勇司は雪と子供を抱き締め、原付から飛び降りると同時に呟いた。


「ごめんな・・・。」


雪に謝ったのか、原付に謝ったのかは勇司本人にも分からず、反射的に出た言葉である。


勇司は二人を抱いたまましこたま背中をアスファルトに打ち付け、さらにゴロゴロと転がりやっと勢いは止まった。

無人となった原付は勇司達の先で、深々と矢を受け、さらにパーツは飛び散りカラカラとタイヤを回している。


「カハッ、ゴホッ雪さん・・無事?」


勇司はなんとか咳き込みながら確認すると、雪はギュッと瞑っていた目を開けて答える。


「なんとか私もこの子も大丈夫みたい。」


子供は泣きそうな表情で勇司を見ていた。


「じゃあ雪さん、ここから移動しなきゃ。」


力を入れて立ち上がろうとするが、勇司は立ち上がる事ができない。



その時、一発の銃声が遠くで鳴った。


勇司達は目を瞑るが、誰も傷ついてはいない。すると少し遠くの方で、元にのしかかっていた猟犬の体がバタリと倒れ込む。

すると、無線から久信の呟くように小さな声が聞こえた。


(「グッドショット。」)





久信は狙撃銃をケースに戻し、スタン警棒で気絶させた犯人を搬送班に任せると、無事犯人確保となった。勇司達は現場で、そのまま医療班による治療を受けている。

勇司は全身が痛む中、立ち上がり原付の元へ行くと、ボロボロになった姿を眺めていた。


(ムサイクよ。お前は今日はよく頑張ったよ。お前は世界一むさくるしいだけじゃない、俺にとって世界一カッコイイ原付でもあるよ。絶対に治してさらに魅力満載にしてやるからな。)


勇司が原付を眺めてると雪もやってくる。


「ゆうじ君、私助けられてこのバイクの事さらに気に入っちゃったよ。頑張って治療してあげてね。」


「ですよね。こいつ頑張ってくれましたから。」


勇司が雪の優しさに見惚れていると雪が声をあげる。


「あっ、なんかゆうじ君、ここ焦げ臭くない?」


「そう言われてみると・・・・。」


勇司はここ最近で一番の悪い予感がし、原付を見るとエンジン部分から炎があがっている。体が痛む事もあり勇司は動く事もできない。


そして数分後。


「ゆうじ君、あれはさすがに・・・。」


「無理ですよねー・・・。」


勇司は高校時代からの相棒と、廃車という永遠の別れを告げたのであった。




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