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特技の使い方 〜吸えない煙草〜  作者: cozy
吸えない煙草 第二章 26班
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死者

死者


久信の目は驚愕に染まり、一度落ち着くために足の取れた犬型のロングコートを着た粘土を脱ぎ去り普段のロングコート姿に戻った。そしてロングコートの中から目薬と眼鏡拭きを取り出すと、落ち着いて一滴づつ差し眼鏡を綺麗に拭き始める。


「さて、ついに私は見てはいけないものまで見えてしまう特技になってしまいましたか。お化け屋敷などは苦手なのですがね、そういえば20番目の内ポケットに塩が入っていたはずです。」


肩口と足元に塩を軽く撒き、手を軽く合わせ勇司の冥福を祈ると、いつの間にか立ち上がって噛みにくる寺塚の喉に手首を入れて防ぎ、逆の腕を首の後ろから回すと防いでいた手の袖を握り一気に絞め上げた。


(これを続けても気絶する気配もなしですか。麻酔銃も聞かず絞め技も効果ないとなるとこれはもしかするともしかしますね。)


視線すら合わせず寺塚の相手をしている久信を見ながら、勇司はノロノロと甲冑を脱ぎ始めスーツ姿に戻る。そして全身を伸ばしながら体の調子を確かめていくと、特に不調のない事に自分自身で驚いていた。


(なんで感染しなかった?噛んだのが小さな女の子だったからか?いや違うな、違うと信じたい。特技の影響か?特技は喫煙だからある意味体に毒物を入れる特技であると。その影響で体の抵抗力が上がったのか?まあ、感染してないなら問題ないな。)


久信は寺塚の足にも手錠をはめると、空からゆっくり要が降りてくる。


「やっぱり屋上のは先に片付けといて正解だったな。勇司君も下の階のベランダで助け求めてたからとりあえず屋上に連れてきたし、とりあえずその娘が今回の感染源なのかい?」


「間違いないかと。それで勇司さんとは?言いにくいのですが勇司さんは先程下の階で・・・。」


「いやいや久信っ、俺は少しアゴがヒリヒリするだけで元気だよっ!」


勇司の声を聞くと久信はチラッと一瞬見て、急に近付き平手打ちをすると、屋上には乾いた音が響いた。


「何するんだよ久信っ!」


「本物でしたか?それは申し訳ありませんでした。しかし、なぜまた無事なのでしょう?」


「それは俺にも分からねえよ。小さな女の子に噛まれたと思ったら・」


「ロリコンだからですね。」


「違うわっ!あの時何やら気が遠くなっ・」


「ロリコンだからですね。」


多少呆れ顔をしながら話を聞いていた要が、床に転がりながらも未だに噛み付こうとしている寺塚を見ながら話しかける。


「感動の再会中に悪いんだが、どうやってこの騒動止める?さっき空から見てたんだが首を締めても無駄みたいだな、やはり呼吸はしてないか。」


「そうですね。麻酔銃も意味がないですし、これは止めるにはやはりあれしかないのでしょうか?」


「ああ、そうだな。」


言葉少なに真面目に返す要を見て、勇司はあれという言葉に予想がついた。


「要さん、あれってやっぱりあれですか?」


「ああ、この娘には悪いんだがな。下がっとけ、俺がやる。」


勇司と久信が目を合わせると一歩ずつ下がる。そして要が足の鉤爪で寺塚の喉を掴み、立たせるが恐怖の表情さえ見せずに暴れ続けていた。


「二回目なんてついてないな。せめて綺麗な姿でな。」


そのまま掴んでいた足の前の鉤爪を長く伸ばすと、首を離し要はその場で一回転する。それは要が放った後ろ回し蹴りであり、勇司の目には何もうつらず、久信はピクッと体を震わせ反応した。


そして要が上げたままにしていた足を床におろすと、寺塚の首から上は胴体から離れ転がっていき、体はその場に崩れ落ちる。


その時全ての感染者達は目の色を戻し、体からウイルスは解き放たれこのウイルス感染事件は終わりを迎えたのであった。


「もっといい方法があればよかったんだけどな。ごめんな。」


「しかし、これしか方法がなかったのも事実です。事故なども多数発生して少なくない被害がでているはずですし、これが最良だったかと。」


要と久信は手と足にはめていた手錠をはずし、手を合わせる。勇司は転がった寺塚の顔と目が合うと、近付いていき瞼を閉じさせた。その時近付けた勇司の手に寺塚が鈍いが確実に反応を示す。

勇司はもしかしてとおもむろに落ちた頭を持つと、倒れているが血も出ていない胴体と傷口同士をくっつけてみる。


すると寺塚の体は再び動き始め、手を頭に添えて位置を微調整すると再び立ち上がろうとしているが、まだ回復していないらしくその動きは緩慢であるが傷口は少しずつ目に見えて回復していた。


三人が多少驚きつつも寺塚を囲みながら警戒していると、搬送班がやってきて寺塚は厳重に搬送されていく。


「なあ久信、連れて行かれたけどどうなるんだろうな?」


「難しいですね。あの方が喋れるのかも分かりませんし、そもそも死人を裁く法律がありませんしね。」


「まあ、生きてても死んでても家族の元に一度は帰してやりてえな。そういや実家にもうじき帰らない俺不味いぞ、だけど北だから実家寒いんだよ。行きたくないけどたまには顔出さなきゃなー。」


すると要が、鳴り始めた携帯電話を慌てて取り出し何かに悩み勇司に渡してくる。


「どうやって使うんだこれ?」


多少呆れながら勇司が電話に出ると、元からの電話であり指示が済むとすぐに切れる。


「さて、今から元感染者の皆さんに楽しい炊き出しだとさ。今池中さんが料理出来るトラック作成中だって。」


三人はマンションから特局に戻ろうと飛び立つ。肩に刺さる鉤爪の痛みに、甲冑と粘土を脱いでしまった事を後悔する勇司と久信であった。




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