侵入
侵入
勇司と久信は一室のベランダに投げ込まれると、二人とも着地地点近辺に置いてった物干し竿に体が当たり、周囲に激しい音が響き渡る。
二人は慌ててしゃがみ込み、声を潜めて当たりを探るが近くに感染者はいないようだ。要は口元に人差し指を当て、空中から二人を見つめている。
「騒がしいぞっ。じゃあ空中から周囲を見張っとくから頼んだ。外に追い出してくれたらこっちに任せてもいいからな。」
要はそう言い残すと、一気に羽ばたき上昇すると勇司にその姿は見えなくなった。
「まだこの体のサイズに慣れていませんね。動き辛くはないのですが、このままでは支障が出ますか。」
久信は狭いベランダで粘土で出来たロングコートを着た犬の着ぐるみの口から顔を出し、軽くシャドーを始め体を慣らしていく。勇司はベランダの窓に手を掛けると鍵は閉まっておらずあっさりと開き、室内にこっそり入った。
「・・おじゃましまーす・・。」
部屋の中に人の気配はなく、お風呂場、トイレも確認するが人も感染者の姿も見当たらない。その部屋は女性の一人暮らしらしく、少しファンシーな雰囲気に包まれ勇司は多少ドギマギしながら部屋を捜索していた。
(おうっ、多少見てはいけないものが部屋のあちらこちらに。動揺を隠すんだ俺っ!洗濯物なんかに気を取られんじゃないっ。)
勇司は気を取り直してドアスコープから覗き込むとばっちり感染者と目が合う。そのまま静かにしゃがみ込み、四つん這いでベランダまで戻ると久信とばっちり目があってしまった。
「女性の部屋でハイハイしながら甲冑姿で赤ちゃんプレイとは、高度過ぎる変態姿ですね。」
「誰がそんなプレイしてるんだよっ!ドアの前に感染者いてここから出るのは辞めたほうがよさそうだな。」
二人はベランダから隣の部屋に移動し、窓の鍵が閉まっている事を確認するとさらに隣の部屋へと移動する。そこの部屋は幸いにも鍵は掛けられておらず、二人は窓から部屋に入って中に誰もいない事を確認すると玄関にむかった。
「さて、ここからが問題です。寺塚がどこにいるかを判明させねばなりませんね。勇司さんはどっちにいると思いますか?」
「うーん、後ろ手に手錠だからな。動き辛いから下の階じゃないか?」
久信は少しも考えることなくすぐに結論を出す。
「では上にいきましょう。変態さんの勘は宛になりそうもないですし、信じたら縁起が悪くなりそうです。」
今日の久信の犬の格好のせいか、いつもより余裕をもって勇司は聞き流す事に成功する。そしてドアスコープから久信は外を見ると、ゆっくりドアを開けた。ドアを開けた二つ隣の部屋の前に感染者の姿があるが久信は手にした麻酔銃を撃ち、感染者はその場に崩れ落ちる。
勇司は反対側の通路から、襲いかかってくる目を白く濁らせた大柄の男の感染者を全身で受け止めると、口に咥えていた紫色の煙草の煙を吸い込み、顔に向かって吐き出した。
【紫煙・麻痺】
組み合っていた感染者から力が抜けていき、床に崩れ落ちていったが、まだ意識はあるらしく歯をカチカチ噛み合わせながら低いうめき声を出し続けていた。
「そういえば勇司さん、甲冑の頭のデザイン変えたんですね。」
今までの勇司の甲冑姿は顔が全て覆われたデザインであったが、今は口元を露出したデザインに変わっている。
「ああ、特技使うたびに面を上げるのは面倒くさくてな。生身を出しとくのは不安があるけど仕方ないってやつだよ。」
「よくお似合いだと思いますよ、高度な変態っぽくてロリコンさんにはピッタリです。」
「どこらへんがピッタリなのか聞かせろよっ!」
軽口を叩きながらも、二人は階段を上がり途中にいた感染者三体を麻酔銃と紫煙で無力化していく。そして上の階にたどり着くと、そこは感染者達の巣窟と化している事実を知るのであった。




