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特技の使い方 〜吸えない煙草〜  作者: cozy
吸えない煙草 第一章 入局
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覚醒

覚醒


それは8月28日の昼過ぎである。いたって普通に楽しい高校生活をおくっていた橋中 勇司は自宅近くの公園で、2年近く付き合っていた希にあっさりと振られた。


「なんか勇司といくら付き合ってても明るい未来が見えないの・・・・。」


そのような言葉を唐突に突き付けられ、勇司は思わず言葉に詰まる。


(ほうほうほうほう。こんな時なんて言えば良いんだ?別れたくないといえば別れたくないけどいまいち理由も急には思い浮かばないしな。こうゆう日が自分にもあるもんなのか。)


勇司が様々な思考にふけっている内に、希は言葉を続けていく。


「それじゃあ何も言うことないんだったら。・・・またね。」


希はスッと背を向け公園の出口へ去っていく。勇司は遠ざかっていくその背を見つめる事しかできずにいた。


「ハァーーー、フゥ。ハァーーー・・・。」


(タメ息しかでてこない自分に腹がたつな。だけど今になって考えてみても、何て言えば良いのかねー・・・。)


ベンチに座り顔を上げ、夏の雲を見つめていると色々な感情が混じりあい、その目から流れる久々の感触に勇司は驚く。


「マジかっ。これは昔飼ってた金魚のデメタンがお亡くなりになって以来だな。」


どれくらいの時間、そのまま座り込んでいたのだろうか。

ふと肩をポンポンッと叩かれ振り返ると、ご近所の矢島家の次女、明香ちゃんがこちらを心配そうに見つめている。


「お兄ちゃん、どっか痛いの?悲しいの?」


突然のご近所さんの登場により、ハッと我に返ると、すぐさま肩口のシャツで涙を拭い気合いで表情筋を整え、なんとかぎこちないながらも笑顔を作った。


「明香ちゃん心配かけてごめんねー。ちょびっと悲しい事があっただけでどこも痛くないよ。明香ちゃんが心配してくれたからもう大丈夫。」


なんとか勇司がそう言い終えると、明香ちゃんが少し怒った表情を見せている。


「全然大丈夫じゃないよっ!お顔ピクピクしてるよ。そーだっ!ちょっとお兄ちゃん待ってて。」


肩からぶら下げていたポーチの中に両手をいれ、ガサゴソと探し物をし続けている。


「えーっとねー。ハンカチじゃなくてこれでもなくてこの黒曜石の鏃でもなくて、あっ!この前なくした藁人形あったーっ!」


何を探してるか全くわからない勇司が思わず口を挟む。


「明香ちゃん一体何探してるの?石と藁は一緒にバックにいれると中で藁が散乱してなかなか悲惨な状態になる予感が・・・。」


「もーっ、お兄ちゃん静かにしててっ!あっ・・・、ポケットの中だ。」


ポロシャツの胸ポケットの中から多少潰された紙の箱をだすと、中身を取り出し勇司に渡してくる。


「お兄ちゃんこれ一本あげるっ。」


明香ちゃんが渡してきたのは一本のシガレットチョコだった。


「ありがと、明香ちゃん。」


(夏の胸ポケットにシガレットチョコとは、明香ちゃんなかなかのチャレンジャー具合だな。)


明香のチャレンジ精神を尊敬しつつもシガレットチョコを勇司が食べようとすると、明香ちゃんが手を掴み止めにくる。


「ちょっと待ってお兄ちゃん。それはすぐ食べるんじゃなくてこうやってね。」


シガレットチョコをくわえて、息を吸い込みプハーッと一気に吐きだす。


「こうやってね、嫌な事があるとうちのパパタバコ吸ってるんだ。だからお兄ちゃんもプハーッてやってみたらいいよ。」


(そういや矢島さんのとこのお父さんもタバコ吸ってたなー。うちの親父もだけど。)


余計な事を考えつつも明香ちゃんの言う通りプハーッと勇司は明香ちゃんと一緒に空気を吐き出してみる。


(意外と悪くないし多少落ち着いてきたか。こんな小さな娘に心配かける自分は0点だけど。)


ニッコリ笑いかけてくれる明香ちゃんの頭を撫でながら、ふと後ろを見ると矢島さんのお母さんが笑いながら会釈してくる。勇司はかなり気恥しくなりつつも会釈を返し、明香ちゃんを見つめてちゃんとした笑顔で言えた。


「明香ちゃんありがと。これで完全に元気になったよ。」


ニンマリと笑みを返してくれる明香ちゃんを眺めつつ、勇司は再びシガレットチョコをプハーッと吸ってみた・・・。





その時、その瞬間あるものは家事をしていたり、携帯電話をいじっていたり、勉強に励んでいたり、化粧を直していたり、体を鍛えていたり、冗談を言い合ってみたり、手術を受けていたり、部下に指示を出していたり、動物に餌をあげていたり、ご近所の幼女に慰められていたり、と人々はそれぞれありとあらゆる事をしていたであろう、8月28日の夕方に起こった事である。




この瞬間世界は一瞬止まり、色を失い、再び色を取り戻すと同時に、世界は再び動き始めた。これは全世界の人々共通に見たものと言われている。



その時、全ての人類は本当の意味での特技【特殊技能】を手に入れたのであった。




なんとなく書きたくなったので初投稿です。誰かの暇潰しにでもなれば幸いです。

勢いと雰囲気で書いておりますので、誤字脱字、矛盾等々あると思いますが優しくご指摘していただければ嬉しいです。

ご意見、評価、感想などなども気楽にどうぞー。


後無事に四章まで到着して話も落ち着いてきましたので、特技のリクエストなどありましたらそれも気軽にどうぞー。


後、人物紹介などなどの落書きも置いてありますので、気分が向いた方は眺めてみてください。


そして駄文を読んでいただき感謝申し上げます。

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