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ある忠犬担当と従妹の会話

「由香ちゃん、由香ちゃん、メアド教えてください。お願いします。」

「どうして電話の着信拒否をしてきた相手に、メアドを再び聞かれるのか意味不明です。」

「…その節は本当にごめんなさい…。話聞いてくださいごめんなさい。」

「こちらの話を聞かずに拒否してきた相手と話すことは拒否させていただきます。おせちの用意するので向こうに行きます。さようなら。」

「…。」


「由香ちゃん、その男ダレっ!?」

「その男とか失礼ですね。制服見れば私と同じ中等部だと分かるじゃないですか。」

「…。そうじゃなくて…。」

「委員長、ごめんなさい。コレ、従兄。名前は名乗らなくていいからね。」

「別にいいよ。はじめまして同じクラスの委員長してます。」

「はじめまして、由香ちゃんの婚約者です。」

「元、婚約者ね。なにか一つ文字が抜けている気がいたします。」

「…元、婚約者です…。」

「あ、お噂はかねがね聞いてます。元婚約者さん。」

「噂…噂…。」

「高等部で五人婚約破棄して一人婚約したって有名ですよ。」

「!?」

「由香さんは人気があるので、それ以来告白の嵐ですね。」

「!!?」

「委員長、そんな恥ずかしい…。では、私たちは塾に向かいますので、さようなら。」


「由香ちゃん、由香ちゃん、どうして名前呼んでくれないの?」

「『彼女でもないのに、僕の名前を呼ばないでよね』と誰かさんが仰いましたので。」

「…えっ!?そ、そういえば、い、言ったような…。」

「パーティーなんですから、従妹の私なんかに話しかけるよりも、もっと有意義な事に時間を割いてください。お邪魔になる様ですし、私、早瀬様の所に向かいますので、さようなら。」


「由香ちゃん、日曜日に映画見に行こう!」

「その日は高校受験です。さようなら。」

「受験ってなに!?」


「由香ちゃん、由香ちゃん、高校受験ってどういう事ですか!?」

「そのまま、高校を受験するという意味です。」

「…そ、そうじゃなくて…。」

「婚約がなくなり、高等部に進学する必要性が無くなりましたので。」

「…えええ!?」

「声楽部の強い高校で楽しんできても良いと許可を得ましたので、楽しむ予定です。では、さようなら。」


「由香ちゃん、高校外部進学なんて、知らない人ばかりになるから止めない?」

「委員長も同じ高校に受かりましたので、知り合いはいますよ。」

「えっ、なんで!?」

「なんでと言われましても、あそこは吹奏楽部も盛んですから。吹奏楽部も、全国大会に行きたければうちでは無理ですし。あ、委員長は吹奏楽部ですよ。」


「由香ちゃん、由香ちゃん、電車通学ってどういうこと!?」

「普通は電車通学ですよ。」

「いやいや、危ないから。由香ちゃん小さくて可愛いから危ないよ!」

「委員長と同じ電車ですから大丈夫ですよ。」

「また委員長…!由香ちゃんに何かあったら…強くないと!」

「委員長はまだ中学生だから小さいし細く見えるけれど、かなり腕っぷしは強いですよ。細くても筋肉質ですし。」

「なんで筋肉質とかしってるの…!?由香ちゃんは僕のなのに!」

「中等部の水泳は男女混合授業ですよ。あと、もう、あなたのものでは無いと思います。」

「…。」


※※従妹と委員長の会話※※

「由香は、もう従兄氏のことホントにいいの?」

「向こうから婚約してきたのに、サクッと裏切られたからね。また同じことがあるとも限らないし。第一、好きとか言われてないしね。」

「あー…、なんかヘタレワンコってあの人のことを言うのかな…。あんだけ僕のって言うのに、好きは言葉にしないんだ。」

「オトコノヒトってそういう所あるらしいけどね。態度でわかるって言われても、『彼女じゃない』とか『好きとは言ってない』って今回言われたからね。私だけじゃなく、破棄され仲間みーんな。」

「うわー…。」

「最低限は言われないとダメだという事に気付いた訳ですよ。」

「何、言ってくれたら許しちゃうの?」

「無理無理、少なくとも前回の三年は上回らないと無理。その間に『別の子と付き合ったけどキミを思ってた』とかも無しだね。信じられないのが基本になっちゃったし。」

「手厳しい。」

「いや、どっちにも失礼でしょ。忘れたくて頑張ってた最上様とかは、ちょっと別枠扱いしちゃうけど。」

「最上様、線引きはきちっとしてたもんなぁ。あんな例が近くにいたら、まあ、理想上がるよな。」


※※※※


「由香ちゃん、由香ちゃん、これ、ホワイトデーのプレゼント。」

「バレンタインにあげていないのに、頂く理由がありません。」

「僕があげたいだけだから!」

「お菓子なら、頂きます。他は私が困りますのでお引き取りください。」

「じゃっ、じゃあこっちだけ…。」


「由香ちゃん、高校の制服姿、携帯で撮させて!」

「かまいませんが、待ち受けにはしないで下さいね。もししたら、二度と撮らせませんのであしからず。」

「…!わ、わかりました…。」


「由香ちゃん、由香ちゃん、土曜日にお花見にいこう!」

「その日は部活のオリエンテーションがあります。」

「じゃっ、じゃあ日曜日に…。」

「九条家主催の観賞会がある日ですよ。お忘れですか?」

「…。じゃあ一緒に行こう?」

「婚約破棄されて半年足らずの相手にエスコートしてもらうとか、一種の罰ゲームですね。」

「ゴメンナサイ…。」


※※従兄と委員長の会話※※

「どうかしましたか、従兄さん。」

「従兄さんって…いや、キミ、由香ちゃん、の事が好きなの…?」

「好きですよ。」

「やっぱり…!」

「まあ、本人には言ってませんが、色々あって口にするか悩んでるんですよね。」

「言わないの?」

「そんなに嬉しそうに言われると、言いたくなりますね。ま、言わなくても向こうは気づいてますが。」

「…!」

「んー、一つだけ塩をおくると、本当に彼女が好きなら、誠実に思い続けてたら報われるかもしれませんよ。一回でも余所見したら、もう後はないですね。それでも、戻ってくるとは断言出来ないんで、何を選ぶかは自己責任で。」

「…ありがとう。」

「という訳で、告白しようと思うので、諦めないのなら、これから頑張ってください。」

「!!?」


※※※※


「由香ちゃん、彼氏出来たって本当ですか…。」

「本当ですよ。」

「…僕、由香ちゃんにまた信じてもらえるまで待ってます…。」

「別に待たなくていいですよ。それ、別れる前提ですよね。」

「い、いや、そんな…。」



※※※※



「由香ちゃん、大丈夫…?」

「…大丈夫ですよ、ずっと覚悟はしてましたから。」

「今すぐ付き合ってとか、言わないから、彼の代わりに支えさせて…?」

「…何で五年も待ってるんですか。性格的に諦めるかと思ってましたよ。」

「彼からのアドバイスで…。」

「ああ、確信が持てたから、だから踏ん切りがついて告白してきたんだ…。」

「彼の存在に勝てる気はしないけど、ずっと由香ちゃんの事大切にするから、そばで見守らせて。愛してるのは彼でいいから。」

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