ある傍観者の日記
4月×日
始業式。
高校2年にして、早瀬様、九条様と初めて同じクラスになった。
文系進学クラスに早瀬様がいて正直驚いたのだが、婚約者である九条様に合わせたのだろうか…と思ったら、女性は文系だと両親にゴリ押しされたらしい。大学の学部に関しては口出しさせない約束を取り付けたそうだが、何だか大変そうである。
5月×日
最近仲良くさせて頂いている早瀬様に、数学を少々教えて頂ける事になった。早瀬様は古文が苦手だそうだが、わたしとさほど変わらない成績だったはず…。
5月×日
中間考査の成績発表があった。
恒例の各教科トップ10張り出しに、早瀬様は相変わらず名前を連ねていた。総合成績はどう考えてもトップである。九条様もたぶん総合2位だと思うのだが、早瀬様が凄すぎて多少霞んでいる気がする…という考えは少数派らしい…九条様の容姿や家柄といった内容を加味するとそんな事は無いらしい。
各方面からやたらと嫉妬されるらしく、早瀬様は何だか色々大変そうだ。嫉妬するくらいなら、学内の生徒なら、去年の副会長選に出れば良かったのに。
6月×日
転校生がきた。女子である。
この時期に編入とは珍しい事である。
しかも普通クラスでなく、うちの進学クラスとはとても珍しい。
初日から遅刻したり、女生徒から人気の高い異性に対してやたらと接触しているらしいと初日にして噂になっていた。噂に疎いわたしが耳にしたので、相当広まっていると思われる。
あと、クラスでもやたらと九条様をチラチラと見ていた。
6月×日
編入生の相川茜と愉快な仲間達はどう見てもおかしい気がするのだが、気のせいだろうか。
正直、なぜ相川さんがあそこまで愉快な仲間達に気にかけられるのかが謎である。
各種方面でイケメンとして人気があった男性諸君があっという間に愉快な仲間達になったのは別にいいのだが、生徒会や委員会の仕事に支障が出始めているのは問題である。
7月×日
愉快な仲間達、仕事しろ
7月×日
期末考査の結果、早瀬様はいつも通りだが、九条様は成績が落ちたようだ。あれだけ気が散っていたら当たり前である。
早瀬様は心労が増えながらも成績キープで素晴らしいが、流石に疲れている様に見える。部外者だが、もう少し生徒会の仕事を手伝おう。
7月×日
愉快な仲間達に真っ先に入りそうで入らなかった最上先輩は、早瀬様狙いの気がする。
何だかそんな気がするのだ。
相川さんの事も多少は気にしていたらしいが、本格的に関わろうとはしなかった様だ。
女好きはよろしくないが、あの連中に加わらず、生徒会の仕事を手伝っている点で早瀬様を慕う女生徒陣の好感度はアップ中である。
7月×日
終業式。
相川さんのモテる理由がよくわからない。
九条様、ああいう思わせ振りにイケメンに愛想を振り撒く女性は嫌いだと有名だった気がするのだが…?夏休みに入る前にと、複数人と夏休みのデートの約束をしていた。よくわからぬ。
早瀬様もそろそろ注意を止めようか悩んでいる様子である。わたしはサクッと切っていいと思う。
7月×日
何だか色々な事実が発覚した。
九条様が早瀬様へ婚約解消を告げたらしい。何となくそんな気はしていたが、早瀬様は九条様の事が異性として好きという訳ではないらしい。婚約者も仮といった感じらしく、個人的にはかまわないのだが、両親のことと相川さんに引っ掛かった事が気になっているらしい。
相川さんのモテについては魅了の魔法でも使っているかのごとくであるが、最上先輩曰く、本当にそんな感覚を感じたらしい。早瀬様も近くにいくとなぜか攻撃的に注意しそうになるらしいし、他の愉快な仲間達と親しい女生徒の皆もそうらしいので、冗談抜きで何かあるのかもしれない。それもあって九条様の事が心配らしい。
あと、最上先輩はファーストキスもまだらしい。
女好きも演技の気がする。
わたしたちの中では評価はうなぎ登りである。
8月×日
文化祭の準備つかれる。
生徒会でも文化祭実行委員でもないが、わたしたちが手伝わないと早瀬様が倒れる気がする。
最上先輩がんばれ。超がんばれ。
8月×日
花火大会。
浴衣姿の早瀬様は綺麗であった。
最上先輩がべっとりとくっついていて困惑していたが、一人になると絶対に危険である事を皆で訴え、途中で2人きりにしてみた。
いい仕事をした。満足である。
9月×日
文化祭早く終わらないかな…。
早瀬様を最上先輩が送っていくのを見る事が、心の清涼剤になりつつある…。
9月×日
文化祭終わったあああああ。
早瀬様と最上先輩は何か進展があった様子である。
追及する元気はなかった。
もうねる。
10月×日
庶務の一年生が会長に立候補するらしい。
早瀬様は副会長をするか、一年生に引き継ぐか悩んでいるようだ。わたしにも打診が来たが、3年の10月まで生徒会業務を出来る気がしないので、隼人を贄に捧げたら文句を言われた。生徒会業務に興味があった様なのに何故だ。
幼馴染みと言えど高校生にもなるとよくわからぬ。
10月×日
元庶務の高坂君が会長、隼人が副会長になった。
いい仕事をした。
最上先輩が勇人を脅していたような気がするが、気のせいである。
11月×日
相川さんの周りは、完全にゲームや小説の逆ハーレム状態である。なのに、最上先輩へもアプローチしているらしい。
先輩はかなり辟易としている様だが、それを口実に早瀬様にベタベタとしているので生暖かく見守る事にする。
12月×日
期末考査はいつも通りだった。
相川さんと逆ハー軍団はクリスマスパーティーをするらしい。ここのところ相川さんが早瀬様に突っかかっている様でウザイことこの上ない。濡れ衣を着せられて立場が悪くなりそうな場面を多々見る。
ここは最上先輩に頑張って頂かねば。
最上先輩もクリスマスデートのお誘いに成功した様で、クリスマスに正式に告白するらしいが、色々と準備が整ったとかいう事を清々しい黒い笑顔で言い切っていた。
結婚まで一直線の気がそこはかとなくするが、詮索はしないことにする。
1月1日
初詣。
早瀬様と最上先輩がクリスマスから付き合い始め、この短期間に婚約したと聞いた。早瀬様が卒業したら結婚するらしい。
展開はやっ。
最上先輩の卒業後から花嫁修業と称した同棲をするらしい。学校が別になるとはいえ…最上先輩、そこまでとは思いませんでした。
九条様を警戒しているとはいえ凄いです。ビックリです。
1月×日
九条様が正気に戻った。そしてご乱心。
早瀬様は自分のものとか言い出した。
最上先輩が警戒して外堀を埋めまくったので、どうしようもないと思うのだが…最上先輩グッジョブ。ちょっと怖いくらいの囲いこみとか思ってごめんなさい。
でも、やっぱり凄まじく執着してると思います。
2月×日
九条しつこい。相川うざい。
最上先輩がちょっと情緒不安定。
なんかヤバそう。
3月×日
最上先輩が卒業なのに九条が諦めないから、先輩の思考が妙な方向に行っている気がする。
早瀬様の事は信じているが、九条が無理を通しそうで不安を感じているらしい。
早瀬様の事で手一杯なのに、隼人がウニウニと言ってきて面倒くさい。
4月×日
早瀬様が妊娠した。
先輩による計画的犯行であるらしい。
一通り話し合いは終わったようなので、早瀬様が幸せならもう何も言うまい。
実際は達観が垣間見えるが、ここ数ヵ月で予感はしていたらしい。
最上家としては諸手を挙げて賛成しているらしいし、学校は家の力で何とかしてしまう様なので、早瀬様が幸せならもう何も言うまい。
4月×日
始業式。
早瀬様と最上先輩が入籍した。
やっと、九条が、一応、諦めた。
早瀬様お幸せに。