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電電校舎

 マサタカはフラれてよかったと心底思う。

 二人でいるのを見かけても、どうしても不釣り合いだった。だってあの女の子は間違いなく、相手が誰でもよかったんだと思う。

「だからと言って、会う人会う人全員に祝福されるとへこむ」

「でも実際、元カノとは話も合わなかったでしょ?」

「確かに会話のキャッチボールは暴投三昧だったけど」

 ほらねやっぱり。完結おめでとう。


 マサタカの元カノは清楚なフリをしたキョニュウのギャルだった。同じ沿線沿いにあるお嬢様大学の二年生で、しかしその二人が付き合っていると聞いた学部生全員が

「マサタカは将来の保険だな」

「取り置きだな。」

 そう激しく分析した。

 だってマサタカは電気電子工学科のエースだもの。生涯年収二億コースは固いと踏まれたんだろう、きっと。


「で、フラれた理由はなんて?」

「他に好きな人が出来たって。経済の小田さん」

「ああ、あの人素敵だよね。優秀だってもっぱらの評判だし」

 あっマサタカがまた溶けた。

「……泣いたらダメだよ、マサタカ」

「泣かねーよ」

 でもかなりキてるよね。ごめんごめん。


 実験棟は古い。今日も研究室は厳しい。

 せめてもの気分転換に、誰かの白衣をなびかせ廊下をカツンカツンと連なり歩く「白い巨塔」ごっこなど。

「あーもーキョニュウはいいやー」

「そーね。元カノは見る目ないね」

「おざなりにありがとう!」

 でもマサタカも見る目なかったね。自分、わかってるよね。


「それよか俺、昨日チョコケーキ焼いたぜ、炊飯器で」

「炊飯器?」

 確か先週ゴミ捨て場から拾ってきたって言ってた?

「そう」

 ふうん。壊れてたヤツ、ちゃんと直ったんだ。

「後さ、トマトパスタがだいぶ上手く作れるようになった!」

「あっ、」

 農学部の皆さんごめんなさい、犯人はこいつです。確か掲示板に警告書が。

「ちょっと待て、俺はちゃんとコープで買ったぞ!」

 ああ、おなかすいた。もうまともに話聞くの辞めた。


「この時間、ミールランチって混んでるよね」

 ここから学食までがまた遠いんだよね。近くの食堂も列なんだよね。

 そうしたら残念なマサタカが飄々と言った。

「うちに食べに来いよ」

「え」

「思い出したけど、俺は元々手のひらサイズが好きだった」

 最初はどうしてもビジュアルしか見えないんだけどさ、でもやっぱ性能が大事だと思うんだよね、フォルムとかさ、こう、長く使う事を考えると。

 マサタカが理解したくない薀蓄をかまし始めた。


 手のひらサイズで悪かったな。

「私、今日はアボカド丼にしようっと」

「え、だからトマトパスタ旨いって」

 チョコケーキも冷蔵庫で冷えているとかなんとか。


 今年も遠くで雲雀が泣いている。南には青い海がのたりと見える。




 おしまい


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