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リディ達の方はやはり廊下だったが、左に1つ、右に2つ扉があり、突き当たりで丁字路になっていた。
「…手前から見ていこうか。」
リディが1番手前にある右のドアを躊躇なく開けた。
先ほどもこの廊下への扉を何の合図も無しに開けたので、優香は危なっかしく思えて仕方なかった。
「……何にも無い。」
リディがそれだけ言うと、今度は左の扉をまたいきなり開く。
それと同時にその部屋から1体のゾンビが飛び出し、リディを押し倒した。
「!!!」
優香もリディも等しく驚いたが、リディはすぐに平静を取り戻し、そいつの首に手をかけて捻った。
ゴキッと嫌な音が響くと、安定を失った首と共にゾンビはリディの横に転がった。
「…ったく、おどかしやがって。」
リディが毒づいているところへ、優香が提案した。
「あ、あの、リディさん?」
「ん? どうした?」
「扉開けるときはもっとゆっくりにした方が……。せめていつでも攻撃できるようにしないと今みたいに―――」
「そうだね。気をつけるよ。」
リディは優香が喋り終わらないうちに生返事をした。
優香は少し困ったような表情をして口をつぐむ。
その部屋は社員用のロッカールームだった。
「ここにもこいつ以外はいなかったみたいだね。」
リディが先ほど殺したゾンビの脇腹を蹴りながら言った。
―――どうしてリディさんはこんなに大胆な事が出来るのだろう?
優香はリディの一挙一動にそう感じた。
自分なら、たとえ化け物でも死体を蹴るような事は出来ない。大胆と言うより、不謹慎な気がして。
リディは最後に奥の右側の扉に向かった。
また勢いよく開け放そうとして、先ほどの優香の言葉を思い出す。
素人に口出しされたのは心外だったが、良薬は口に苦しというヤツだ。
素直に片手でサブマシンガンを構えながら、ゆっくりと扉を開けた。
すぐにそこは備品倉庫であることが分かった。
食料系統の物が置いてあるとは思えないほこり臭い匂いがリディに襲い掛かる。
だが、リディはその匂いを気にかけている暇が無いのに気付いた。
いや、匂いに気づく前に、それを察したという方が正しいだろう。
部屋に置かれたパイプ椅子などの備品などの間では大勢のゾンビが、肉を喰らっていたのだ。
決して新しくは無い死骸に、飢餓を癒すために手をつけたという感じ。
小さな倉庫に圧縮されていた血なまぐささが、ほこり臭さより先にリディを包み込んだのだ。
そして吐き気を催した時には、既にその全ての個体と目が合っていた。
「……。」
リディはゆっくり扉を閉めた。
瞬間、扉を開けようと、中にいるゾンビ全てが扉を叩き、ノブを無茶苦茶に動かし始めた。
「ユカ! そこのロッカールームだ! そこに入るんだ! 急げ!!」
優香は震えながらも小走りでロッカールームへと入っていった。
それを確認すると、抑えていたノブから手を離してその扉に向かって銃を向ける。
扉を開けて出てきた先頭のゾンビの頭に、正確に銃弾を撃ち込んだ。
だが、もちろんそれで事態が収拾する訳ではない。
すぐに振り返ってロッカールームへ走り、扉を閉めて優香と2人で抑えた。
また先ほどのように、扉を連打する狂った音と、ノブを動かそうとする悪魔の握力との戦いが始まった。
ゆっくり開けたって、敵がゾンビなら意味が無いのだろうと、2人は悟った。




