第4話 噴火の余波
翌朝、借りた部屋の窓から外を見ると、案の定あたり一面白い世界が広がっていた。これは前世での知識だが、この状態の外を歩くと、火山灰に含まれるガラス質の物質が肺や網膜に入り、致命的なダメージを与え、肺炎や失明をもたらすんだそう。なので、できればマスクとゴーグルが欲しい。しょっちゅう火山灰が降り積もった鹿児島県の桜島付近なら対策できているんだろうけどこっちはどうだろうか?
「これどうしよう、出て行けと言われたはいいものの、危なすぎて出れないな…」
そういって、考えているうちに部屋のドアが叩かれた。コンコン。
「すでに起きていますかな? 今日外へお出かけになるのなら少しお話があります。」
「はい~、いま向かいます~」
そういってドアを開けるとチャコルドさんが金属製のゴーグルと紺色のバンダナを持っていた。
「火山灰は数と体に悪いですから、出かける際はこれを身に着けてくださいな。」
「ありがとうございます、ちょうどどうしようかと考えていたころだったんですよ」
「ああそれと、昨日ここへいらしたときに来ていた衣類に関しては昨日のうちに洗濯して現在取り込んでいる最中ですので、それも持ち歩くというならもう少しお待ちください。」
「昨日出ていけと言われたので持ち歩きは確定かと。」
「昨日のあれは言葉の綾ですよ。真に受ける必要はありません。ティアは未だに男嫌いと反抗期が収まっていないだけですのでね はっは。」
「まあ、でも彼女の精神衛生上速く出ていったほうがいいことには変わりないですからね、とりあえず朝食を済ませたらこの町からも出発しようかと思います。」
「でしたら、その服はいただいて結構です。もう私はサイズが合わないのでね。はは。これが幸せ太りというやつですな。」
「いつか自分にもそんな時期が来るんですかね?」
「私たちの娘を貰っていただければそう時間はかからないと思いますな。はは!」
「じゃあ時間かかりますね~」
といった感じで軽い冗談を言い合いつつ、リビングへ向かい朝食もいただいた。朝食は牛乳に、昨日と同じフランスパンみたいなパン、バター、マーガリン、レタスのサラダとベーコンエッグ、まさしく洋風の朝食だ~うまそう…そういって、そのご飯を一気に胃へ流し込み、あっという間に平らげた。
「ごちそうさまでした。朝食までいただいてありがとうございます!」
「いいのよ、人数が多いほどご飯はおいしくなるからねぇ~最近はずっと2人だったから久々に増えていつもよりおいしく感じたわ~だから、こちらこそありがとうねぇ~ 後片付けは私がやっておくから出発の準備でも進めててくれれば構わないわ~」
「じゃあそうしときます!」
そういって部屋に戻ろうとした矢先、家のベルの音が鳴り、チャコルドさんが出た。
「新聞配達でーす 新聞をお届けに参りました。」
「いつもありがとうございます。今日はこんな状態なのによく頑張っているね。」
「これが仕事なんで気にして無いっすよ。お気遣いありがとうございます。」
そういって新聞配達の人はこの家を後にした。そもそもこの世界にも新聞のシステムあるんだな。それはさておき、問題はここからである。その新聞の1ページ目に書かれていた内容はもちろん昨日の噴火のことであったが、なんと昨日の噴火は火山地帯のエンゲル地方、ロンキ―山脈で発生したことが判明したのだ。先述の通りエンゲル地方からここまでは直線距離で20000km、地球で言えば半周の距離を火山灰が移動したことになる。さらに言えば、この噴火の規模は地球で過去にあった大噴火『シベリア・トラップ』に匹敵する大きさとなる。(何ならもっと大きいか…?)
「それやばい噴火じゃないですか…? エンゲル地方は大丈夫なんですかね?」
「この記事には続きがあって、実はメクシーの西端以外と、グレープレーズの半分、プレールは影響を受けていないそうですな。つまり、この噴煙は海を渡ってきたということになりますな。」
「ちなみに地動説で、この星の周囲は分かっているんですか?」
「地動説のことはよくわかりませんが、一応一周24000km程度といわれてます。200年前に探検家が海を航行した際、距離を計測したんだそうですな。」
「ということは、実際には海を渡って4000kmほど移動してきたということですね。それでもまだ規模が大きすぎる気がします。」
「何があったんでしょうかね? 今度エンゲルのほうに知り合いがいるので聞いてみようかと思いますな。」
「何かわかったら是非聞きたいですね。」
「もちろんですとも。またここに戻ってきたらお話しするか、行く先が分かるようであれば手紙でお伝えします。」
「そこまでしてお伝えいただけるなんて恐縮です! ありがとうございます!」
「ではもう少ししたら出発ですかな? ちなみにどこに向かうかは決めてますか?」
「このあたりの地理が分からないのでお勧めの場所とかありますか?」
「ならここから200km東に行ったところにフィランデルという大きな港町があります。まずはそこでこの世界に慣れてみてはいかかでしょうか?」
「その道中は大丈夫なんですかね? 冒険者登録とかは…」
「それならこれから職場に向かうから朝一で登録しちゃいましょ、今回は身内のよしみってことで登録料はタダでやってあげるわ~ これがあればこの大陸中どこでも冒険者クエストを受けることができて、お金には困らなくなると思うわ~ どうするの?」
「是非お願いします!」
「そうと決まったら早速ギルドへ向かいましょ~」
そういってオキシールさんが身支度を始めたので僕も身支度を始めてギルドへ向かった。道中、やはりどこの家も灰で真っ白になっていた。なのにもかかわらず、空は快晴になっていた。まるでお出かけ日和って感じだ。中にはあっちの世界と同じように火山灰で家が倒壊してしまう家も何軒か見かけた。結構昨日の噴火でこの村にもダメージはあるようだ。
「さあ、ついたわよ~ じゃあ早速登録しちゃいましょうか~」
「はい、お願いします。」
そしてオキシールさんは受付机の前に立ち、1枚の藁半紙を渡してきた。
「この紙に名前と生年月日を描いてほしいの、とはいっても年が違うものね、今ここの年月日は後神歴1001年3月27日になるわ。昨日19歳って言ってたし、とりあえず19年前の982年3月27日ってことにしちゃおうかしらね。じゃあそれでお願いします。」
少し引っかかることがあった。それは歴のことである。あっちの世界ではキリスト教のイエス・キリストが無くなってからを紀元、その前を紀元前と分けており、それによって西暦が広く使われていた。それを同じように『後神歴』という名前がついており、まるで神がいたかのような名前になっている。それもほぼ1000年前である。このため、名前の由来が気になったが、ここでは一旦気にしないでおくことにした。そして、しれっとこの世界での誕生日が爆誕してしまったのだ。本当は西暦2005年5月15日なのに…(ちなみに転移前の西暦は2025年3月4日)こうして、こっちの世界での新しい生年月日を手に入れて新しい人生が幕を開けることとなった。
今回もお読みいただきありがとうございます。頑張って毎日更新していきます
メモ
・こっちの世界では地球に当たる名前がついておらず、夜に見える星のなどはあまり研究されていない。ただ、あっちの世界と同じように星座のようなものはあるらしい。
・この世界の1年の長さは365日よりやや短い360日であり、二四六九士のように月ごとに日数が異なるのではなく、全て30日とかなりきれいな暦となっている。
・ティアことカボディアはこの時点ですでに家を出発している。




