出会い
最近始めたスマホMMORPGは、正直あまり馴染めなかった。
画面は小さいし、操作は窮屈だ。しかし、チャット欄には相変わらず煽り厨が湧いている。
その辺は、昔のPCゲーム時代と何も変わらない光景であった。
「スマホでもMMOできる時代になったんだなぁ」と思いながらも、ボクはどこかでずっと物足りなさを感じていた。
やっぱりボクは、“PCの大きな画面で遊ぶMMO”が好きだった。
広い世界を見渡せるあの感覚。
仲間と肩を並べて戦うあの高揚感。夜更かししてまで続けた冒険の空気。
最近はなかなか“大作”と呼べるものが出てこなくて、新しいゲームを試してはすぐに飽きてしまう。
そして結局、ボクはスマホゲームを閉じて、いつものPC MMORPGに戻ってしまうのだ。
その世界は、平和だった。
煽りもなく、PKもいない。
ただ、のんびりとした冒険が続く世界。
そんな穏やかな世界を、二人のプレイヤーが並んで歩いていた。
ボクと――アイ。
アイとは、もう長いあいだ同じゲームをプレイしていた。
会ったことはないけれど、いくつもの世界を一緒に旅してきた仲だ。
出会いは、とあるMMORPGだった。
そのゲームは混沌とした世界観で、ソロでのレベル上げがとにかく大変だった。
効率よく進めるには、パーティープレイがほぼ必須だった。
ボクとアイは、そんなレベル上げPTで偶然一緒になった。
最初はただの野良パーティーの一員だったのに、気づけば意気投合して、そのまま同じクランに入り、毎日のように一緒に旅をするようになった。
最初はチャットだけで話していた。
けれど、とあるゲームでチャット機能ではコミュニケーションが難しく、仕方なくボイスチャットを使ったのがきっかけだった。
それ以来、通話しながらゲームをするのがボクらの日常になった。
アイは、とにかく“強い光”みたいな子だった。
天真爛漫で、誰にでも愛されるような明るさを持っていて、テンションが高くて、調子に乗りすぎて、後から「やっちゃった……」と凹むところまで含めて、本当に見ていて飽きない。
そして、優しい子だった。
困っている人がいれば、迷わず手を差し伸べる。
知らないプレイヤーでも、迷子でも、初心者でも、
「ほっとけないじゃん!」と言って、すぐに助けに行く。
でも――怖い子でもあった。
PKされれば、容赦なく報復する。
相手がギルドごと来ようが、何時間かかろうが、
「まーる、やるよ!」と笑いながら追いかけ回す。
その姿は、普段の明るさとは別の意味で迫力があった。
優しくて、明るくて、
だけど芯が強くて、怒らせると本当に怖い。
そんな二面性を持った子だった。
「まーる、今日も行くよー! ほらほら、置いてくよー!」
そんなふうに、いつもボクを引っ張っていく。
そしてその中心には、いつもアイがいた。
面倒なクエストも、レベル上げも、全部どうでもよくなるくらい、アイと一緒にいる時間は楽しかった。
ボクらは、ただのゲーム仲間だった。
でも、リアルの友達よりもずっと長く話して、ずっと深く笑い合っていた。
夜遅くまで続く冒険。
くだらない話で盛り上がるチャット。
二人で撮ったスクリーンショット。
どれも、当たり前の“日常”だった。




