【ボツネタ救済】『遅刻常習犯が立派なテイマーになるまでの物語。』②
~前回のあらすじ~
遅刻常習犯の高校一年生である鷹見葉太は、未来から来たという自信の使い魔リーフに遭遇する。
どうやら未来で葉太の生命は大ピンチらしく、リーフはそれを助けるためにタイムスリップをしたという。
ライトノベルによってファンタジー知識を身に着けていた葉太は、早々にもその事情を信じて、リーフと契約を結ぶのだった。
リーフと正式に契約を結んだ俺だが、正直全く自覚がない。
契約のために握手をしたが、それ以降に体には顕著な反応は起こっていない。
強いて言えば、握手の時にリーフがふわっと光ったくらい。
色々と疑問は残るが、一段落ついたようだ。
後の説明によるとどうやら、リーフと契約をした瞬間にタイミングよく力が覚醒していたらしい。
その時点でまだ覚醒していなかったら、契約がうまくいかずに恥を晒すことになっていたそうだ。
危ない。
彼が未来から来た故に、能力の覚醒するタイミングを知っていたから成功した技である。
「正式に協力することになったはいいけど、俺は具体的に何をすればいいんだ?」
1番大事なことを聞き忘れていた。
「とりあえず学校生活は送ってもらうよ。ただし、優秀な成績を取ってもらわないと困る。」
「それは…国家機関がどうたらって話か?」
「うん。だから遅刻も許されないんだ。」
「なるほどな」
「ちなみに今日君が遅刻をしていたら、国家機関に入るための評定がギリギリ足らずに生涯危ない人間に狙われ続けることになってしまったところだったんだよ」
そうだったのか、物騒すぎる。
というか、普通に起きたときから遅刻する気満々だった。なんか申し訳ない。
「気にしないでおくれ、今日から頑張ろうじゃないか!」
リーフはサラッと俺の心を読んで元気に俺を励ましたのち、新たな話題を切り出した。
コイツ、性格は良さそうだな。
「そういえば、僕が持っている能力をまだ全て説明していなかったね。」
そうだった。それも聞きたかったのだ。
「ああ。聞かせてくれ。」
「まず1つは時空の壁を乗り越える力だ。」
「その力でこの時間まで飛んできたわけだな」
「そういうこと!」
リーフは少しご機嫌な調子でさらに説明を続ける。
「2つ目はテレパシー及び心を読み取る能力だ。これは君の前でも使ったね。」
姿が見当たらないのに話し声が直接脳に聞こえたり、声に出さずとも疑問に答えてくるあたりはこの能力を使っているのか。
「ご名答!」
「また読まれたな」
俺はクスリと笑いながら返答する。
「そして3つ目は、一般人の前から姿を消す能力。『出現』と唱えると見えるようになるよ。」
「それも俺の前で使っていたな。その力は俺も欲しいところだ。」
だって男の夢を叶えられそうだから。
「君、今よくないこと考えてただろ」
「そういうことは読まなくていい!」
俺は羞恥から即座にツッコミを入れた。こいつといるとヒヤヒヤするな…
「……そして、一番大事なのはこの能力だ。」
そう言って、リーフは俺の頭に小さな前足を乗せる。
すると次の瞬間、今朝体験した浮遊感と疾走感、さらには、視界を覆う光。
なんとなく想像はついた。これは、俺を遅刻から救ってくれた能力、
「瞬間移動か!」「念力さ!」
俺がそう声を上げたと同時に、リーフは大声で声をかぶせる。
「「え!?」」
視界は学校前から反転、目の前には自宅であるマンションが立ち尽くす。
起こった現象はわかっている。物や人を移動させたり、自分が移動する能力だろう。
私も今朝実体験したからわかる。
しかし、念力という言い方は絶対に違うだろう。
瞬間移動が適切だ。
「おい!これはどう考えても瞬間移動と呼ぶべきだ!だって、念力ってものを浮かすような超能力のことだろう?」
「だから、それをやっているじゃないか!」
俺は訳が分からず、ポカンと口を開けて立ち尽くす。
「僕は君を念力で持ち上げて、高速で移動しただけだ!」
まじかこいつ。ということは、俺はワープをした訳ではなく念力による光に目を瞑っている間に、鴻巣と大宮間を移動していたのか。
「その通りさ」
俺の心を読んだリーフが落ち着きを取り戻しつつ返事をする。
ふと、俺の頭には新たな疑問が浮かぶ。
「その高速移動はそういう能力なのか?」
「いや、正確に言うと運動能力全般を大幅に引き上げる能力が存在していて、人間にはありえない力を使えるんだ。」
「お前だけは敵に回したくないな」
「君を守るために来たんだ。敵に回ることなんてないさ」
俺、国家機関にはいらなくても大丈夫なんじゃないか、?
「それはダメだ!」
またも心を読んだリーフが力強い口調で言葉を返す。
「世の中には僕と同等か、それ以上の使い魔が数多く潜んでいるんだ。」
なるほど。危なっかしい世界だ。
「それと、まだ言っていないことがあった」
リーフは、再び堅苦しく俺に向き直ると、口を開き始めた。
「使い魔を作り出して操る能力にも階級があって、それによってつけられる能力や特性が変わってくるんだ。」
「なんかラノベみたいだな!」
「そうだね」
リーフは興奮気味の俺に対して冷静な態度をとりつつ話をつなげる。俺が幼いみたいでなんかムカつく。
「単純にいえば、高い階級であるほど使い魔につけられる能力が強力なものになっていくんだ。階級によってつけられる能力の個数も制限があるんだよ。」
「なるほど。ところで俺はどのあたりなんだ?」
「君はかなり高い方にいるよ。」
「まじか!」
素直に嬉しい。こう言う無双系のラノベみたいなシチュ、憧れていたんだよな。
「ランクはDから順に低い方からC、B、A、Sとなってて、君はランクSだ。未来では天才ってレベルだよ。」
「俺そんなすげえのか」
自然と俺は上機嫌だ。自分で言うのもなんだが、流されやすくて単純だなと思う。
「もっと詳しく言うと、Dのつけられる能力は1つ。そこから順番に、つけられる能力の数が1つずつ増えていく。数えてごらん。」
「えっと、Sは5つだから…」
指を折りながら心の中で数える。
時空間の移動、テレパシー、心を読む、姿を消す、念力、超身体能力。
あれ、数え間違えか?
「なるほど…って、いや待てよ!?だとしてもお前が所持する能力は6つだ。辻褄が合わないじゃないか」
俺が問いかけると、リーフはその質問を待っていたと言わんばかりに説明を付け加えた。
「Sランク以上だと、制限なく能力をつけることができる。さらに、君を狙うのはSランクの者がほとんどだ。同じSランクでも力の差は激しい。注意して行動してくれたまえ」
「わ、わかった。」
制限なく、ってことは、手数が多い上に自由度もあると見た。
これは大変なことになりそうだ。
話が一段落つくと、再びリーフが口を開いた。
「それじゃ、そろそろ隔離空間を解くよ。」
「ああ…って、あれ?隔離空間を作る能力って詳しい説明受けたか!?」
「あ」
「おい!」
「ご、ごめんなさーい!!」
俺はリーフを追いかけ回す。
しかし、流石はSランクが作り出した使い魔。
早すぎておいつけない。
しばらく追いかけっこをしたのち、リーフは息を切らしながら言葉を放つ。
「こ、この隔離空間は、現実の世界の見た目はそのままで、人や動いていたものだけが消えた別の世界なんだ。だから、ここでいくら時を過ごそうが、モノを壊そうが、現実世界には全く関係ない。帰る時は、僕たちが隔離空間へ飛んだ時点に戻ることができるんだ。」
「へぇ、便利なもんだ」
「1人になりたい時はいつでも連れて行ってあげるよ!」
「贅沢な使い方だな、本を読む時に使わせてもらおう」
「ちなみに、隔離空間に持っていきたいもの、もしくは連れていきたい人がいるなら、それらも僕の意思で操作が可能だよ。」
「俺がこの空間に入れたのもその特徴のおかげってわけか。」
「そうそう!これでほんとのほんとに言い残したことはない!隔離空間を解除するよ。」
「頼んだ」
「うん。じゃあ…解除。」
リーフがそう唱えると、耳に雑音が戻る。
リーフはというと、能力によって姿を消しているようだ。
しかし、俺にははっきりと見える。
あいつめ、ニヤニヤしながら手なんか振りやがって。いや、あいつの場合は前足か—
そんな呑気なことを考えてられるのはこの物語のほんの最初だけだったと言うことを、この時の俺はまだ知る由もないのだった。




