第1話 虚偽:1
「報酬が少ねぇ!」朝の王都冒険者ギルド。男がカウンターを叩いた。
受付嬢ルナはにこやかに書類をめくる。「依頼は『湿地のヌシ討伐』。討伐の証明がないので、追加報酬は出せません」
男が袋から出したのは、泥だらけのカエル。
「……ヌシは二メートルの鰐型です。それはカエルです」
「追い払ったんだ! だから金を増やせ!」
ルナは青い札を一枚見せた。「言い合いでは決まりません。『調停』にしますか?」
調停は三つ条件がある。①双方の同意、②争点を一行で決める、③証拠か供託(お金)を出す。
「断るなら審査送り。最短二週間、支払いは保留です」
男は舌打ちし、銀貨三枚を置いた。「……やれ」
札が淡く光り、空中に小さな表示板が浮かぶ。ここでは嘘が“数”で出る。
ルナは短く確認した。
「争点は『ヌシを討伐したか』。あなたは討伐した?」
「した!」
「証拠の魔石核は提出できる?」
「で、でき……」
言葉が止まった瞬間、表示板に【虚偽:1】が点いた。周囲がざわめく。
「今のは“できる”と言いかけた嘘です。訂正しますか?」
「……できねぇ!」
「では結論。討伐は確認できません。基本報酬のみ。供託の三割を手続き費として頂きます」
男が怒って札に手を伸ばす。
次の瞬間、警備隊長フィオナが肩を掴んだ。「窓口で暴れない」
男の冒険者札が黒く変色する。【当日受注停止】
騒ぎが収まると、奥の扉からギルド長バルドが顔を出す。
「ルナ。無茶はするな。昼、ちゃんと食え」
胸が跳ねるのを隠して、私は笑顔に戻った。「次の方、どうぞ」




