第七話 商人リザとレギチャ料理
次の日、マヤと街を探索していると、後ろから声がした。その人物は「あ」、と声を上げてマヤの肩を軽く突いた。
「あ〜!マヤ〜!久しぶり〜!」
そこには白髪で膝まであるような長いローポニーテールにローブを着た百八十は超えてるであろう身長の持ち主だった。
「キミはマヤのお友達?」
ニコニコで話しかけられるが人見知りのアーリアは鼓動が高鳴り、「はい」としか答えられなかった。
「僕はリザレテク・レノル。まあ〜、リザって呼んで〜!」
リザ曰く彼は商人らしく、回復薬も何から何まで取り扱っている何でも屋だった。アーリアはその回復薬を買ってみることにした。
そしてリザはアーリアに色々な商品を紹介した。
「これとかどう?」
取り出したのはおもちゃのアヒル。
「こ、これ売ってるの…?」
「うん、でもあげる〜!」
そう言われてアーリアは謎にアヒルを貰うことになってしまった。リザはもはやどこにしまっているのかわからないくらい物を次から次へと出す。
よくわからない薬に謎の肉…アーリアは少し怖くなった。
「これどこにしまってんの…」
「あはっ、『魔法』!」
どこにしまっているのかはそう言われてはぐらかされてしまった。
その後、リザに街を連れまわされ、いろんな所を案内してくれた。その間マヤは置いてけぼりだった。
「ちょっと二人とも〜!」
マヤは必死に二人を追いかけていた。
そしてアーリアは近くの食堂でお昼を三人で食べることになった。アーリアはあのレギチャオムライスを注文した。これほどないほどハマってしまっていた。
「アーリアちゃんそれ好きだね〜」
マヤが笑いかける。この瞬間だけはこの世界で一番平和で暖かいひとときだった。
そうして料理が届き、食事を始めた途端、リザにの携帯に電話がかかった。この世界の携帯は通信魔法なので頭の中に直接着信が流れてくるようだ。
「あ、ちょっと出てくるね〜」
そう言ってリザは食堂の外に行ってしまった。
「ただいま〜ちょっと仕事の電話でね〜」
そう言って戻ってきたリザ。いつものようにニコニコしているので深刻な電話ではなかったのだろう。でも商人の仕事の電話ってなんだろう、アーリアは好奇心として少し気になっていた。
「あ、でもさ、マヤのお友達ちゃん、レギチャ好きなら買う?」
そう言ってレギチャの肉であろうものを出した。さっきの肉はレギチャ肉だったのだろう。
「アーリアちゃん、私料理手伝うよ!」
そう言われたのでアーリアは「まあいいか」と思ってリザからレギチャの肉を買った。
結局校舎内のキッチンまで来てしまったアーリアはレギチャのオムライスを作ることにした。まずは卵、レギチャ肉、砂糖、スライムのかけら、お米、ケチャップ、そしてグランダリアで取れる特殊スパイスのレイユを少々。
料理好きなマヤは一人でせっせと準備をしていた。よくわからないアーリアは何もできず呆然と見つめていた。
まずは卵をボウルに割り入れ、砂糖を入れてかき混ぜる。ここまでは現実のオムライスと一緒のようだ。そしてレギチャの肉をレイユで味付けをする。そして細かく刻む。
アーリアは肉を切ろうとしたが、レギチャは防御力の高い魔物なので肉も凍ったように硬いのだ。アーリアは全体重をかけたり、ナイフを投げたりして切ろうとしたがびくともしないレギチャ肉にアーリアは汗だくだった。
マヤはアーリアから包丁を貰い、集中して包丁に魔力を込める。
「やっ!」
その時、何度やってもびくともしなかった肉が綺麗に真っ二つに切れた。アーリアは目を輝かしてマヤの包丁さばきを見守っていた。
レギチャは一度切って仕舞えばそのあとは楽に切ることができるようだ。そして細かく刻んだレギチャ肉をフライパンに落とし入れる。そしてここで使うのがスライムのかけらだ。この世界での油の役目はこのスライムのかけらだ。
スライムをフライパンに引き、レギチャ肉をしっかりと焼く。レギチャは毒性が少しあるので長めに焼いて毒を昇華させるのだ。ある程度焼き目が付いたらケチャップとお米を入れる。アーリアは材料を焼き、リザは片付け、マヤはアーリアが難しいところに直面すれば変わってくれる。
そうしてできたレギチャ肉ケチャップライスにふんわりと焼けた卵をかける。そして仕上げのレギチャの耳を刺す。
アーリアはこれで完成かと思ったらリザが何かを取り出した。
「じゃーん!レギチャの血〜!」
アーリアはまさかと思って息を呑んだ。そしてアーリアの予想通り、リザはそれをやってのけた。赤黒い液体がふんわりオムライスにかかっていく。アーリアの食欲は消え去り、オムライスに背を向けた。マヤはアーリアがなぜ吐き気を催しているのかがわからなかった。
「アーリアちゃんどうしたの?」
「いや…私の分には血、かけなくていいよ…」
弱々しい声でマヤにお願いをしたアーリアだった。




