第六話 図書館の住人
次の日、図書館にやってきた二人は早速魔導書を広げた。魔導書には、風魔法を使うには魔力が千ほど必要であると書いてある。一応現状では千以上あるが実力はまた別だ。マヤは早く戦わせてあげたいそうだが、この厳しい魔法世界となると今の実力では少し難しいだろう。マヤはアーリアを連れて魔法学コーナーへ連れて行った。魔法学コーナーにはダンジョン図鑑、魔物図鑑、魔法学入門書なんてものもある。興奮気味のアーリアは棚から魔法学本を漁った。
すると後ろから話しかけられたと思ったらチョーカーをしたまつげの長い金髪ショートの可愛い子が立っていた。
「やあ君、魔法学勉強中かい?てことは...初心者ってことかい?」
意味深にニヤリと笑う彼を見てマヤとアーリアはぽかんとしていた。
「どういうこと?あなた、私たちを知ってるの?」
マヤが訊きくと彼は徐ろにハートとリボンの付いたステッキを取り出し二人に向けた。
「AVA様に頼まれてんだ、俺は君を倒す!」
そう言ってステッキを構える彼を前にマヤとアーリアはパニック状態で杖を構える。
「くっ、アーリアちゃん、戦うよ!」
「わ、私もですかぁ?!」
アーリアは今から習うところだった基礎魔法を、習う前に戦うことがあるとはどうも予想していなかった。
「善には罰を。罰点!」
そう彼が唱えると彼のステッキが光だし、暗黒の炎を放った。
「ど、どうすればいい?マヤちゃん!」
「『ウィンド・クラウド』って唱えて!」
アーリアはマヤに言われたように呪文を唱えた。
「ウィンド・クラウド!」
すると杖から突然強風が吹き荒れ、図書館を騒然とさせた。
「うわぁ?!やだやだ!俺死にたくないー!ナト助けてー!」
意外と可愛い反応の彼にくすっと笑いながらも警戒心は解かない。そして風が落ち着く数分後、突然マヤが悲鳴を上げた。
「誰よ!やめなさいよ!」
アーリアが振り向くとそこには背の高い青髪の男に拘束され首にナイフを向けられるマヤがいた。アーリアは二対一の状況でしかもまだ入学してまもない勉強中の初心者ときた。アーリアは必死に考えたがパニックでなかなかいい方法が浮かばない。マヤは身動きが取れず、魔法で抵抗することもできない。そして青髪の男が口を開いた。
「ふん。馬鹿らしい。これだから善は嫌いだ。」
アーリアはこのその言葉の意味がわからなかった。だとしても人を陥れるのは気に入らない。アーリアは必死に訴えた。
「そ、そんな事させません!私が相手です…!」
「アーリアちゃん!?危ないよ!まだ...!」
止めるマヤを振り切ってアーリアは前に出た。まだ未熟な呪文を唱え、パワーはないが授業でやった基礎魔法には慣れたようだ。
「ふん、愚か。そんな力では敵わん。」
ナトと言う名らしい青髪の男はマヤを拘束しながら鋭い目で見据えてアーリアにナイフを突きつけた。
「俺は死なない。」
「ど、どうする私…!」
アーリアは自分自身に問いかけ、歯を食いしばる。地面を踏み締める足はだんだん痛みを増していき、アーリアは突撃することにした。
マヤを助けるべく、アーリアは前へ飛び出し、ナトに魔法を発動しようとした瞬間、後ろから声とともに炎を帯びた矢が風を切って髪を靡かせた。
「アーリアちゃん避けて!」
アーリアが振り向くとそこには赤髪ポニーテールの少女が弓を構えていた。
「サルベスちゃん!?」
マヤが叫んだ。その時、サルベスがクリスタルを掲げて呪文を唱えた。
「栄光の炎よ、この手に燃え盛れ!」
そしてサルベスの弓矢に炎が宿りナト達に向けた。弓を引くその手は美しく、凛々しい顔をして立ちふさがった。
「ちょっとナトさん一回帰ろぉー...!」
どうやら金髪の少年はナミールというらしい。ナミールが無理矢理ナトの手を引いて帰ってしまった。呆然と立ち尽くすマヤとサルベスとアーリア。嵐のように去ってしまった二人を見送りながら三人は不思議に思いながら図書館の席に座った。
アーリアはマヤにサルベスについて訊いた。サルベスはこのグランダリア国立魔法学校の二年生で炎の使いだそうだ。弓が主な武器でクリスタルで炎を宿せるらしい。
「大丈夫でした…?」
そう言って白髪の少女が事件を聞きつけて走ってきた。相当焦っていたのか持ってきた本を落としてしまった。少女ととサルベスは知り合いのようで少女はリズマといい、占い師らしい。マヤはアーリアにこっそり耳打ちをした。
「サルベスちゃんたら、リズマちゃんとは入学時からの友達らしいわよ!あはっ、まあこんなことは置いといて勉強よ!」
そう言ってまた本を取りに行ってしまった勉強に熱すぎるマヤだった。
席についた二人はあんな事がありながらも勉強を始めた。今回は風属性の魔法だ。アーリアは前回までの復習をしながら新しい、「属性」について取り組んだ。
どうやらマヤの勘によるとアーリアは風属性に適しているらしい。そんなこんなでアーリアは風属性の技を学ぶことに。
「まずは『エア・バレット』!これは空気の力と風のエレメントを使って戦う初歩中の初歩よ!」
アーリアは早速試してみた。やはり最初は上手くできないがマヤの助言を貰った瞬間できるようになる。できた時の達成感が一番嬉しいのだ。
続けて、竜巻を操る「ウィンド・リフト」や、風の刃を操る「スライス・ゲイン」も、少し手間取ったがマヤの助言ありきでなんなく習得できた。
次に快凛に会った時のために、ドラゴンを助けるために。アーリアは着々と魔法を習得していくのだった。




