蘇生魔法 その二
森を抜けると、あの時マヤと一緒に行き、快凛と出会ったデナント遺跡があった。アーリアは蘇生魔法を習得するためにクリスタルを集めに来たのだ。
遺跡は以前と変わらず風の音が響いていた。中に入ると冷たい空気が頰を撫で、アーリアは少し身震いした。遺跡の階段に足を踏み入れた時、ガラガラと何かが崩れる音がした。アーリアは思わず振り返ったが危険は後ろではなく、足元だった。その階段の下は空洞になっているようで、脆くなった足元はアーリアを巻き込んで崩れ落ちた。
「痛っ…!」
空洞に落ち、アーリアは重い体を起こして腰をさすった。しかしなんだか嫌な匂いがする。生臭いような、先ほどまでの澄んだ空気の匂いとは違う。アーリアが片目を開くと目の前にはまんまるの赤い目がのぞいていた。
「うわああ?!」
アーリア後退りし、慌てて杖を拾い上げた。しかし周りにはすでに仲間であろう魔物がアーリアを取り囲んでいた。魔物は可愛らしいポメラニアンのような生物から一変、巨大な狼のような姿に変身した。アーリアは顔を引き攣らせ、飛び込んでくる魔物をひたすら避けていた。
「今のままじゃ魔力が足りない…!」
さっきの戦いで使い果たしてしまったアーリアは避けることしかできなかった。魔物が大きな爪を振りかぶるが、アーリアは間一髪背中スレスレで避けることができた。数分経つと、体力もだんだん消え去っていったが、魔物は疲れるどころかさらにアーリアを敵対していた。
その時、アーリアが落ちた階段の方から誰かが覗いていた。
「やっぱりあなたですか。勇者さん。」
見覚えのあるメガネと白衣…
「ヴェルナ?!なんでここに…」
「なんでってぇ…実験ですよぉ。」
ヴェルナは顔色一つ変えずにアーリアを襲っていた魔物を触手で縛り上げ、あっさり殺してしまった。ボスが殺されたことに怯えた他の魔物たちは隠れるように隅へ逃げていった。
「あ、ありがとう…?」
「なぁに。」
ヴェルナは真顔で触手でアーリアを上まで引っ張り上げてくれた。
「じゃあ僕帰る。」
「え?まっ…」
アーリアが言い残す前にヴェルナは洞窟の暗闇で消えてしまった。
攻防戦で疲れてしまったアーリアは一度外へ出て、他の敵からクリスタルをもらうことにした。少し戻って森に入ると、そこには魔物がこれでもかと住んでいた。アーリアはとても少ない魔力で、どう倒そうか作戦を練っていた。一匹でも倒すことができれば魔力が増え、さらに攻撃範囲を増やすことができる。アーリアは魔力を最小限に抑え、一匹の魔物を倒し、クリスタルをゲットした。それを繰り返して夕方になるころ、アーリアは今の戦力に十分なほどのクリスタルを集めていた。
まさかの遺跡へ入る必要がなくなってしまったアーリアはクリスタルを抱えて、暗くなった夜道を歩いていた。
校舎に戻ってきたアーリアは夜中にも関わらず図書館に戻ってきた。
「アーリアちゃんおかえり。まだ寝ない?」
こっそり寮を抜けてきたマヤはそっとアーリアに耳打ちした。
「うん、勉強する。」
「そう。頑張って…!」
マヤはニコッと笑って寮へ戻っていった。アーリアは例の本を持ってきてパラパラとページをめくって蘇生魔法の方法が書いてあるページを探した。
「あった…!」
アーリアは急いで本を抱えてサルベスのところへ行った。サルベスの血はすでに止まってたが、苦しそうな顔で眠っていた。
「えっと…魔力を…」
アーリアはサルベスに向かって魔力を溜め始めた。寮の校舎が淡い青い光に包まれ、チラッと本を見た。
「次は…呪文を…」
「命を宿る魔法よ、この者に命を…!」
その時、サルベスの体が浮き上がり、白い光を纏った。こっそり自分の部屋から覗いていたマヤも、他の生徒たちもその光景を見守っていた。アーリアは目を見開き、サルベスが生き返ることを強く祈りながら魔力が暴走しないように抑えながらサルベスを見守った。
数分後、サルベスの体はベッドの上に戻り、少し呻き声を上げた。
「うーん…」
アーリアたちはサルベスの声に感動し、涙を浮かべた。
「ここは…?アーリアちゃん…?」
「サルベスちゃん!」
「よかったぁ!」
アーリアも見守っていたマヤもサルベスが起きた瞬間に抱きついた。寮内では拍手が起こり、あまり状況がわかっていなさそうなサルベスを包んだ。




