マチェーテ編
学校に戻ってきたアーリアは懐かしい校門をくぐった瞬間、あの時の笑い声、匂いが全て昨日のことのように感じられた。
校庭へ向かったアーリアは、懐かしい背中を見つける。今日は何やら行事のようだ。受付を務めていたマヤがアーリアを見て目を輝かせる。
「アーリアちゃん!帰ってきたんだ!」
駆け寄ってアーリアを思いっきり抱きしめたマヤの目は、涙を溜めているように潤んでいた。
「う、うん、帰ってきたよ。」
アーリアは照れ笑いしながらマヤの背中をさする。
「今日はね、生徒同士の力比べの日なの!アーリアちゃんもやる?」
「うん、AVAくんから聞いた。やってみる。」
そう言って紙にペンを滑らせ、サインをしたアーリアは校庭を見つめて杖を握り直した。
アーリアは戦闘相手と顔を合わせる。
「私はマチェーテ、風の使い手よ。よろしく。」
風の使い手らしく靡くエメラルドグリーンのツインテール、鋭い猫目、そしてアーリアは自分と同じ風属性であることに驚いた。
「わ、私はアーリア、あなたと同じ風の使い手…よろしく。」
そうして二人の手はがっちりと繋がった。
放送が校庭中に響く。
「制限時間は十五分、死に関わるような過度な攻撃は禁止とする!」
少しの沈黙の間、アーリアとマチェーテは見つめ合った。同じ魔法使いとして、風の使い手として。意地と意地のぶつかり合いが始まろうとしていた。
「始め!」
そんな合図と同時にマチェーテは竜巻を繰り広げる。
「私、負けられないから。」
強風吹く中、マチェーテの目には敵対でもなく優しさでもない何かが映っていた。
アーリアは負けじと風圧を送り返す。砂が巻き上がり、校章の側がバサバサと靡く。しかし相手はこの学校の中級クラス、初級クラスでしかも人間のアーリアには少し不利な相手だった。そして同じ属性同士の戦いでは両者とも不利になるが、マチェーテにはそんなものないように生き生きとしていた。
アーリアが押し返された時、受付から見ていたマヤは誰よりも応援していた。そんなマヤの応援はしっかりとアーリアに届いていた。微かに聞こえたマヤの応援。アーリアは相手を見据えて魔力を送り込んだ。そしてあの時から練っていた技が、今校庭中に炸裂したのだった。
「ウィンド・エマージェンシー!」
それはマヤも教えていない、アーリアが魔導書でたまたま見つけた技だった。受付のマヤはその言葉に目を見開いて口を手で押さえた。
「うそ?!」
「くっ…!」
マチェーテは思わず顔を顰める。しかしマチェーテも負けるわけにはいかなかった。
「エア・マジック!!」
するとアーリアとマチェーテは突然浮かび上がる。マチェーテが発動した魔法は空気を軽くし、空中戦に追い込む技だ。
空中戦なんてやったことなかったアーリアは歯を食いしばった。しかしアーリアは機転を効かせ、逆に風に身を任せるように体の力を抜いた。するとアーリアの魔力は力を抜いたことによりクリスタルからみるみる溜まっていき、本気を出すには十分だった。
「ルミナス・フレストー!」
その時、校庭は大きな光に包まれ、マチェーテも思わず目を瞑る。まさか基礎魔法にこれだけの力が出るとは思っていなかったのだ。空気が元に戻り、浮いていた二人は地面に向かって落下する。そして戦い終了まで残り十秒を切った。
マチェーテは自分とアーリアに「リフト・エアリア」をかけ、ゆっくり降下した。
「終了!」
合図がかかると、マチェーテはアーリアに歩み寄る。
「私、あなたに正直期待してなかったわ。でも行動力も良くて感動しちゃった。それに何より…楽しかった!」
マチェーテはまるでスイッチが切れたように鋭い目線は消え、笑顔でアーリアに握手を求めた。アーリアはマチェーテの手を握り、選手交代となった。
「すごかったよアーリアちゃん!」
マヤが遠くから駆け寄ってくる。
「あの技私教えてないよね?本当びっくり!アーリアちゃんも魔法の才能あるよ。」
マヤはそう言って杖を見るよう促すように指を指した。




