おめでたの報告をして結婚式を早めようとした矢先、婚約者から「愛人を孕ませたから、おまえとの婚約を破棄したい」と言われてしまった。でも、大丈夫。私には秘密兵器がある。必ず地獄に叩き落としてやるわ!
◆1
ある夏の日の早朝ーー。
私、公爵令嬢サラ・エドモンドが自宅のテラスで朝食をいただいていると、執事が背後にやって来た。
そして、身を屈めて、突然の来訪者を告げる。
「サラお嬢様。ご婚約者がお見えです」
私の婚約者ボイル・バイト伯爵令息が、馬車で我が家に乗り付けて来たという。
なんでも、「急ぎ、伝えたいことがある」とか。
ちょうど良かった。
私にも、婚約者の彼に伝えたい、大事なことがあった。
私は紅茶を口にしてから、席を立ち、急な来客を迎えた。
「ようこそ、ボイル様。
ちょうど良かったですわ。
私の方からも用がありましたので」
そのとき、私の婚約者ボイル・バイト伯爵令息は、衣服の上からもはみ出さんばかりの筋肉質な巨体を見せつつ、銀色の髪を掻き上げ、私の対面の席につく。
そして、青い瞳を輝かせ、いきなり爆弾発言をかました。
「君の用件よりも、まずは俺の用件を聞いてもらおう。
悪いが、俺は君の他にも女性と付き合っていてね。
そのメリーヌ男爵令嬢が、俺の子を孕ってしまったんだ。
だから君との婚約を破棄させてくれないか?」
私、サラ・エドモンドは、碧色の瞳を大きく見開いた。
(はあ?
私という婚約者が居ながら、他の女と寝たっていうの!?
しかも、妊娠させたってーー)
私は絶句した。
手にする扇子が細かく震える。
(ちょっと、ボイル……。
貴方、私とベッドを共にするときはいつも、私の金髪を撫で付けながら、
「愛しているのは、君だけだよ」
と言っていたくせに……)
我がマリーナ王国では、貴族子女であっても婚前交渉について寛容で、特に婚約者同士は「深く付き合っているもの」と見做すのが常識だ。
おかげで、既婚者の中で、「できちゃった婚」の率はかなり高い。
だから、私も特に気にせず婚約者とベッドを共にしていた。
特に、私たち若い世代にとって、「抱き合ったことがない」というのは、「不仲の証拠」と看做される風潮があった。
それゆえ、私もどこか意地になって、婚約者と寝ていたところもあった。
だが、婚約しているのに、「別の女と寝た」となると、話は別だ。
婚約中において、別の女と同衾するのは、明らかな契約違反と見做される。
本来なら、慰謝料を請求できるーーいや、婚約解消に至るほどの不祥事だ。
しかも、私の方には、今、相手から婚約破棄されては困る事情があった。
私は下腹部に手を当てながら、眼前にいるマッチョ男を睨みつける。
「貴方、私という婚約者がありながら、他の女を孕ませたというのですか!?
今、私のお腹の中にも、貴方の子供が宿っているというのに!」
切れ気味の私の発言に、ボイル・バイト伯爵令息は目を丸くした。
「え? 君も妊娠してたのか!?」
私は唇を咬み、黙ってうなずく。
(ほんと、この状況、最悪じゃない?)
と思いながら。
今日、婚約相手におめでたを告白して、来月中にも、結婚式を挙げようと思っていた。
ところが、別の女に先を越されたみたいだ。
が、ボイル伯爵令息は、こんな時ですら、私の意向を汲むことができない、無思慮な婚約者であった。
彼は腕を組み、得意げに胸を張った。
「でも、悪いな。
もうメリーヌと約束しているんだ。
君との婚約破棄を実現し、彼女と結婚すると」
今、目の前で妊娠を報告する婚約者よりも、ここに居ない愛人との約束の方を重視するなんてーー。
私は思わずテーブルに手を突いて、身を乗り出す。
「貴方のお父上は、貴方が私との婚約を破棄するのを了解なさっているのですか?」
詰問する私に、彼は、罰が悪そうに銀髪を掻きながら笑う。
「ああ、父上か?
まだ言ってない。
言ったら、どうせ反対されるに決まってるからな。
おまえとの婚約だって、お互いの父親が勝手に決めたものだ。
それも大人の都合ってヤツで。
おかしいよな。
やっぱ、誰と結婚するかっていうのは、当人同士で決めるものだろう。
だから、父上相手には、すべて事後承諾に持ち込むつもりだ」
やはり、行き当たりばったりな男だ、と呆れた。
もっとも、だからこそ、二人の女性に同時に妊娠させても平気なのだろう。
私、サラ公爵令嬢は、扇子をバッと広げて、嫌味を言った。
「そうですか。
でも、きっと、お父上は、私との婚約破棄に反対なさると思いますよ」
ところが、ボイル伯爵令息はまるで堪えない。
格闘技が趣味だというこの男は、肉体と同じく、精神まで図太く出来ているらしい。
「それはそうだろうが、どうせ父上も、いつまでも反対してはいられまい。
我がバイト伯爵家には、俺しか子供がいない。
俺が跡取りに決まってるんだ。
だから、孫を産んでみせてからメリーヌを紹介すれば、父上も、俺の新たな結婚相手として、メリーヌを認めざるを得ないだろうよ」
私はパチンと扇子を閉じて、眼前の男に差し向ける。
「よろしいのですか!?
私との間でも、子供が出来そうなんですよ?
お父上は、メリーヌとやらと、私、どちらを嫁にしたいと思われるかしら。
私はメリーヌと違って、貴方の正式な婚約者なんですよ」
私が怒っていることがまるで気にならないようで、ボイル伯爵令息は、膝をバチン! と打って、前のめりになって言う。
「そこだよ!
サラ・エドモンド公爵令嬢。
君は何でもソツなくこなすだろ?
だから、俺が傍でいてやる必要がないんだ。
その点、彼女は違う。
メリーヌは、俺がいないと駄目なんだ。
そして、結婚相手は、当人同士が決めるべきだろ?
だとするなら、どちらを嫁に迎えるかは、結局、俺が決めれば良いってわけだ。
となると、当然、亜麻色の髪が綺麗なメリーヌ男爵令嬢ってことになる。
悪いな、サラ公爵令嬢。
俺、ボイル・バイトは、メリーヌを我が家の嫁に迎え入れたいんだ。
彼女のお腹の子と一緒にな」
私は苦虫を噛み潰すような表情になった。
「私のお腹の子は、どうなさるおつもりです?」
婚約者は、私からの刺すような視線を無視する。
そして、テーブルに置いてあったリンゴを齧りながら、事も無げに言う。
「うん?
そんなの、どうするかは君次第だろ?
なんなら、堕ろしても構わないぞ」
「はあ」と、私、サラは溜息をつく。
私もメリーヌを知っている。
三歳下の彼女を、何度か舞踏会の席で見かけたことがあった。
亜麻色の髪をなびかせ、褐色の瞳をキラキラさせ、下から男性を見上げる格好を好む。
そして、いろんな男にしなだれかかって、甘い声を出す、天性の女優だ。
しかも、メリーヌ・ルール男爵令嬢は、絵に描いたような「上昇志向の女」でもある。
我がマリーナ王国は、貞操観念が割と緩いくせに、爵位の上下については特にうるさいところがある。
私、サラ公爵令嬢という婚約者がありながら、それを承知で、ボイル伯爵令息を籠絡したのは、おおかた、彼女、メリーヌが「伯爵夫人」の地位を狙ってのことだろう。
私、サラ・エドモンドは、後方に控える執事に、証明書類を持ってくるよう伝達した。
それから私は、婚約者ボイル・バイト伯爵令息の青い瞳を、正面から見据えた。
自分の下腹部に右手を当てながら。
「ボイル・バイト伯爵令息。
貴方が他に好きな女性ができて結婚したいと言うのであれば、悲しいですけど、私はそれを受け入れます。
ただ、このお腹の中の子供は、貴方の子供として認めて欲しいのです」
ボイル伯爵令息は、「それは認める」と声を出す。
彼は、やたらとキッパリと言い切った。
「たしかに、俺は婚約者である君と肉体関係を持ってしまった。
そこは潔く、男らしく認めてやろう。
たしかに、そのお腹の子は、俺の子だ。
だけど、サラ。俺は君とは結婚できない」
私は瞑目しながら頷いた。
「わかりました。
お腹の子さえ認めてくだされば、私はそれで良いのです。
書類を作成しましょう。
貴方のお父様と、私のお父様に説明しなければなりませんので」
「わかった」
執事が証明書用の紙を持ってきたので、私、サラは、スラスラと羽根ペンを走らせる。
「こちらが、婚約破棄の証明書です。
そして、こちらが、私のお腹の子が、貴方との間に出来た子だという証明書になります」
私から書類を手渡され、ボイル・バイト伯爵令息は次々とサインしていく。
じつに気軽な調子だ。
彼は羽根ペンをテーブルに置くと、勢い良く立ち上がった。
「これで用は済んだな。
じゃ、お暇するよ。
俺の屋敷で、メリーヌが俺の帰りを待ってるんだ」
私に向かって大きく手を振り、上機嫌な様子で、元婚約者ボイルは立ち去った。
(ったく、お熱いことで結構なこと……)
私、公爵令嬢サラ・エドモンドは、二枚の証明書を手にしながら、微笑みを浮かべた。
◆2
それから約一年後ーー。
サラ公爵令嬢は、実家のエドモンド公爵邸で、無事、元気な女の子フランシスを産んだ。
そして、それからさらに十日後ーー。
今度は、元婚約者ボイルが住まうバイト伯爵邸で、お抱え医師たちの尽力によって、ボイルの愛人であったメリーヌ・ルール男爵令嬢も、男の子を産んだ。
メリーヌ・ルール男爵令嬢は、亜麻色の髪を振り乱しつつも、誇らしげな顔をする。
そして、看護師を兼ねた侍女におくるみごと赤ん坊を抱きかかえさせると、ボイル・バイト伯爵令息は厚い胸板を叩いて大声をあげた。
「でかした!
さっそく父上に、我がバイト伯爵家の跡取りが誕生したことを報告しよう!」
ボイルの父親ポール伯爵と同じ屋敷に居ながら、自室に連れ込んだメリーヌと顔を合わせることなく気遣いながら、今までやり過ごしてきた。
だが、ようやくメリーヌは陽の目を見ることができるようになった。
男の子の誕生を既成事実として、メリーヌとの結婚を、父上に了承してもらうのだ、とボイルは意気込む。
一週間後、さっそくメリーヌと手を取り合って、父親ポール・バイト伯爵が仕事をする執務室へと向かい、これに、男の子(バルクと名付けた)を抱きかかえた侍女が随行する。
ところが、執務室に足を踏み入れた途端、ボイルとメリーヌの二人は絶句した。
思いもしなかった光景が、目の前で展開していたからだ。
いつも父ポール伯爵が座っている椅子には、別の人物が座っていた。
なんと元婚約者であったサラ・エドモンド公爵令嬢が、澄まし顔で着座していたのだ。
女の赤ん坊を抱えながらーー。
ボイル伯爵令息は、指をさし、声を震わせる。
「こ、ここは、俺のバイト伯爵邸だぞ!
なぜ、おまえがーー!?」
「それについては、私が答えよう」
椅子に座るサラ公爵令嬢の傍らから、銀髪に白髪が少々混じった年配男が進み出る。
ボイルの父親である、ポール・バイト伯爵であった。
「この執務室の椅子は、我がバイト伯爵家の家督者が着座するもの。
それゆえに、サラ・エドモンド公爵令嬢が産んだ女の子ーーフランシス・バイト伯爵が座ったまで。
二週間ほど前、彼女、フランシスこそが、バイト伯爵家の跡継ぎとなったのだ。
そして今日、彼女がめでたく我が屋敷に居を移した。
母親のサラ嬢が後見人として、フランシスを抱いて座ってもらっている。
今日より、サラ公爵令嬢とフランシス伯爵の母子は、このバイト伯爵邸で居住することとなった」
ボイルとメリーヌは呆然として、
「そ、そんな馬鹿な」
「どうして……」
と喉を震わせるばかりだった。
◇◇◇
およそ、一年前ーー。
ボイル・バイト伯爵令息から婚約破棄を言い渡された直後から、サラ・エドモンド公爵令嬢は、精力的に動き始めた。
婚約相手の子供を妊娠しているにも関わらず、幼少期からの婚約者から捨てられたーーそういう絶望的な状況を覆すために、サラは全力を尽くしたのだ。
まずは、バイト伯爵邸へ馬車を走らせる。
もちろん、元婚約者であるボイル・バイト伯爵令息が不在時を狙って。
ボイルの父親ポール・バイト伯爵は、サラから、自分の息子が二人の女性をほぼ同時に妊娠させたという事実を聞かされて、うろたえた。
正確には、サラ公爵令嬢という婚約者を妊娠させといて、勝手に婚約を破棄し、別の女の許に走ったという事実に、絶句したのである。
「こ、婚約破棄……それではーー」
「ええ。
私のお父様に訊くまでもなく、ポール様の宿願は果たされることはないでしょう」
私、サラとボイルが結婚すると同時に、私の父ロイド・エドモンド公爵が主宰する通称「エドモンド派閥」の重役に、ボイルの父ポール伯爵が就任することが決まっていた。
が、私がボイルと結婚しないとなると、当然、その人事は反故になる。
ポール伯爵は、銀色の顎髭を細かに震わせて激怒する。
「あの、馬鹿息子がーー!」
目の前に提示された婚約破棄証明書を、勝手に握り潰す。
私、サラは扇子を広げて口許を隠す。
「おやおや、丁寧に扱っていただけませんか。
重要な証明書なんですから」
ポール伯爵は席を立つ。
何をするかと思いきや、突然、土下座した。
「どうか、息子が行った非礼を、お忘れいただきたくーー」
私は扇子を広げたまま、父親にも等しい年配の男性に向かって、眼力だけで凄む。
「ご冗談を。
忘れることは断じて出来ません。
貴方の息子ボイルは、寄親貴族家の令嬢である私との婚約をーーそれも幼い頃からの婚姻の契約を、破ったのですよ。
それも、あのようなメリーヌなる男爵令嬢に気移りしたから、と言って」
「し、失礼しました。
すぐにでも、あの馬鹿を勘当して、家から追い出してーー!」
「それには及びません、ポール様。
短慮が過ぎますよ。
それでは私、サラ・エドモンドが産む子供の立場はどうなるのです?
ボイルを今すぐに勘当なさったら、彼は平民に落ちることになります。
となると、平民落ちした男の子供として、この子を育てさせるおつもり?
しかも、私、サラ・エドモンドを、バイト伯爵家から勘当されたクズ男に捨てられた、〈惨めな女〉になれ、と?」
ポール伯爵は、ハッとする。
そして、さらに深く土下座をして、額を床に擦り付けた。
「まことに、息子ともども、お恥ずかしい限りで……」
私はパチンと扇子を閉じ、ひれ伏すポール伯爵に差し向ける。
「誤解なきよう、言っておきますが、私がこの度、ポール様との面会を望んだのは、息子のしでかした不祥事を糾弾するためではありません。
将来のーー私とお腹の子、そしてポール様の輝ける未来のために、提案させていただきたい事案があるからです。
この私からの提案を呑んでいただければ、ポール・バイト伯爵様の『エドモンド派閥』での重役就任の件、こんな状況でも、果たせなくもないのですよ」
ポール伯爵は驚いて、顔をあげる。
「と、言いますと?」
「こちらをご覧ください」
私はもう一枚の証明書をテーブルに広げる。
ポール伯爵は立ち上がって席に着き、書類に目を凝らす。
「これは……」
ボイル・バイト伯爵令息がサインした、胎児の親が自分だという、認知証明書だ。
私、サラ・エドモンドは、お腹をさすりながら言う。
「つまり、このお腹の子は、エドモンド公爵家の血筋のみならず、バイト伯爵家の血筋をも引いているのです。
そして、現在、バイト伯爵家の家督者は貴方、ポール様。
何もボイル・バイトがバイト伯爵家をお継ぎになる必要はありません」
ポール伯爵は両目を見開く。
「な、なるほど!
わかりましたぞ。
そのお子が生まれた時点で、すぐにバイト伯爵家の家督を譲ればーー」
私は扇子を再び広げ、ニヤッと笑う。
「王国史の過去を紐解けば、生後一年にも満たないお子の家督相続を認められた例が、何件かございました。
我がマリーナ王国では、先例があれば、その手続きが可能になります」
ポール・バイト伯爵は、今更ながらに思い出す。
エドモンド公爵家の通称は、「知謀の公爵家」だったと。
歴史上、幾度も王国の危機を、その知謀で救ってきて、公爵の爵位のみならず、宰相職をも何度か担ってきた。
その血脈が、娘にも脈々と受け継がれているようだ、と。
ポールはテーブルに手を突いて立ち上がり、大声をあげた。
「了解いたしました!
すぐにでも王宮に出向いて、しかるべく、手続きをして参ります。
私、ポール・バイトが祖父として、貴女様のお腹の子にバイト伯爵家を継がせましょう。
誓って、必ず、可愛がりますぞ!」
ドタドタと高い足音を立てて、ポール伯爵は外へ出て行った。
なんとも慌ただしいことである。
「ふう」
私、サラは溜息をついた。
「身重の客人を置いてけぼりにして、主人が出て行ってどうするのですか?」
私の近くで控えていたバイト伯爵家の執事と侍女が、顔を赤くする。
「それでは私も、自宅へと失礼させていただきます。
馬車を待たせてありますので」
サラ・エドモンド公爵令嬢が立ち上がると、慌てて執事と侍女とが二人して、彼女を玄関へと誘導した。
さらにその夜、サラ公爵令嬢の自宅、エドモンド公爵邸にてーー。
私、サラは、執務室に出向いて、父親ロイド・エドモンド公爵に面会した。
人払いをさせて、改めて、自分が妊娠している事実と、胎児の父親である婚約者ボイルから婚約を破棄されたことを伝えたのである。
すると、父親ロイドは少し身を乗り出し、片眼鏡を嵌め直してから、顎に手を当てる。
「それで、サラ、君のことだ。
何も手を打たなかったわけではないのだろう?」
「どうして、そう思われるのですか?」
「君に思惑ありと見た。
そうでなければ、その余裕の説明がつかない」
相変わらずお父様ーーロイド・エドモンド公爵は鋭い。
私は黙って二枚の証明書を、執務机の上に提出する。
一枚の婚約破棄証明書はクシャクシャの皺だらけだが、もう一枚の胎児に対する認知証明書は綺麗なものだ。
父は二枚とも手に取り、ザッと目を通してから笑みを浮かべた。
「ほう、なるほど。
いまだ性別も定かならぬ、お腹の胎児にバイト伯爵家を継がせるか。
君ならば、このような侮辱を受けて、黙っているはずがないと思っていたよ。
あのバイト伯爵家のドラ息子は、さぞ悲惨な状況に追い込まれることだろう。
かといって、娘を傷モノにされた父親として、私も看過できぬな。
寄親として、何かしら、バイト伯爵家に罰を下さねばならぬ」
「罰なんかは要りません。
ただ、お父様にお願いがあるのです」
「ふむ。
その願いとやらを言うてみよ」
「私はこの子の母親で、しかも寄親貴族家の娘です。
この子ーーバイト伯爵家の家督者になるこの子の、後見人とさせてもらいたいのです。
そのようにポール・バイト伯爵様に申し付けてくだされば」
「うむーーそれも、そうだな。
通常、年端もいかぬ家督者の後見人は、存命中ならば、先代の家督者ーーつまり今回の場合は、ポール伯爵が担うものだがーー。
君は、自分が母親としてこの子の後見人になる、とポール伯爵に言っていないのか?」
「ええ。
もし、そのように正直に口にしたら、
『バイト伯爵家を乗っ取られるのでは!?』
と警戒して、この子に家督を継がせるのを躊躇なさるかもしれないと思いまして」
「なるほど。
だから、私の口から直接、君をこの子の後見人にさせよ、と命じさせようというのか」
いきなり「母親だから、バイト伯爵家の後見人にさせよ」とサラ自身が訴えると、「この娘が、バイト伯爵家を呑み込もうとしている」と、世間から見られてしまう。
実際に、それは事実なのだが、貴族社会では、寄子は寄親の命令に従うことが筋だ。
だから、サラではなく、その父親であるロイド・エドモンド公爵が、じかにポール・バイト伯爵に、「家督者の後見人をサラに譲るように」と命じ、さらにその報奨として派閥重役の就任が公表されたら、不自然さは薄くなるだろう。
父は片眼鏡を拭きながら、ニヤニヤする。
「して、君はこれから、いかなる立場になるのだ?
バイト伯爵家の後見人になるのはわかるがーー」
「もちろん、私、サラ・エドモンドは、相変わらず未婚の公爵令嬢ですわ、お父様」
「ふむ。
となると、今後、君の夫となる男は、自分の家のみならず、バイト伯爵家も事実上、支配下に収めるわけだ。
未婚の母になるというのも、手続き一つで家を乗っ取る口実にもなるわけか。
面白いな」
「あら、お父様。
私が結婚すると、いつ言いました?」
「そうだな。
バイト伯爵家の後見人にして、エドモンド公爵家の令嬢であれば、当分、食うには困らんだろう。
たしかに、君の弟であるパックは、いまだ学園の生徒で、私もすぐにはアレに家督を譲るつもりはない。
パックに私が跡目を譲るまでは、君も我が家で好きに振る舞えよう。
ーーククク。
それにしても、私も警戒を強めねばならんな。
私や息子パックが、君に寝首を掻かれぬようにせねば。
気を許すと、君なら、我がエドモンド公爵家をも支配下に収めそうだ」
「ご冗談を。
お父様やパックが愚かな振る舞いをしさえしなければ、付け入る隙なんか生まれませんよ」
「ははは。
我が娘ながら、怖い女だ。
君は私ではなく、亡き妻ミーナに似たのだな」
「あら。
世間の人々からは、お母様ではなく、お父様にそっくりだと言われておりますわ」
「ははは。それこそ、冗談だろう?
それにしても、わざわざ私を担ぎ出さんでも、ポール伯爵ならば、派閥の重役の一つでも担わせてやると言えば、喜んで君をその子の後見人に据えるだろうよ。
先代のバイト伯爵は、派閥の重役を担えなかったことを悔やんで亡くなった。
ポールは、その父親の遺志を果たすことだけで頭が一杯で、将来、バイト伯爵家がどうなるか、など考えておらんよ。
ましてや、我がエドモンド公爵家に吸収されるのだと知っても、警戒どころか、喜ぶだけかもしれん。
そういう男だよ、あれは」
「良いんですか、そのような無頓着な男に派閥の重役を担わせて」
「心配要らぬ。要は使いようだ。
我がエドモンド派閥は、王国最大派閥ゆえ、マリーナ王家から、なにかと牽制され続けている状態だ。
これから先、マリーナ王家や、その他の貴族家と紛争があった場合、事を収める手段として、差し出す生贄があった方が良いだろう?
その生贄は、できれば、表向きでも、我が派閥の重役を担う者であることが望ましい」
「ーーお父様。
やっぱり私は、お父様とは似ておりませんわ。
私、そこまで悪辣なことは……」
「何を言う。
私はまだ何もしておらん。
もし、何かあった場合でも、どのような駒でも使いようがある、と娘の君に示しただけだ。
さて、用件は終わったな。
ご苦労だった。
君の配慮によって、我がエドモンド公爵家の勢力基盤はますます強固となることだろう。
無事に、赤子を産むのだぞ」
「そのつもりです」
「ふむ。君も上機嫌そうで、なによりだ」
「ええ。
ボイルにも、あのメリーヌとかいう女にも、得意がらせるつもりはございませんから。
私は望みが果たせそうで嬉しいです。
お父様の口添えがあり次第、バイト伯爵家の家督相続に、私自身が介入いたします」
「わかった。
内務省と法務省の友人にも声をかけておこう」
「ありがとうございます。
私も、数多くの寄子貴族家、さらにはあの女の実家関係の家々にも手を回さねばなりませんので、これから忙しくなりそうです」
「身体を大事にな。
身重なのだ。
文字通り、君一人の身体ではないのだぞ」
「お心遣い、ありがとうございます。
なにより、私の婚約が破棄されたことに関して、一切、お咎めなさらなかったことに感謝いたします」
「礼など不要だ。
君は私の自慢の娘なのだから」
机に広げられた書類の山に再び目を落としつつ語る父親の言葉に、サラ・エドモンド公爵令嬢は少し顔を赤らめた。
◆3
かくして胎児が生誕する一年も前から、バイト伯爵家を乗っ取り、嫡男であったボイル伯爵令息を追い出す準備が、サラ・エドモンド公爵令嬢の手によって、着々と進められていたのである。
その結果、ボイル伯爵令息とメリーヌ男爵令嬢は、めでたく男児を得たにも関わらず、バイト伯爵邸から追い出されようとしていた。
メリーヌ・ルール男爵令嬢は、甲高い声を張り上げた。
「おかしい。
私の子バルクは、男の子なのに!」
息子をたぶらかした小娘の発言に、ボイルの父親ポール・バイト伯爵は怒鳴り返した。
「ふざけるな!
男爵ふぜいの子種を、我がバイト伯爵家の家督者になど、できるものか!」
随分と差別的な発言だが、マリーナ王国貴族の、爵位にこだわる気風がよく現れた表現である。
すかさず、私、サラは扇子を広げて、口を挟む。
「心を乱しすぎです、ポール伯爵。
この者たちに、わかるよう、事情を説明してやってくださいませんか」
文字通り、子供の年齢の娘に窘められ、ポール伯爵は、顔を赤くして、咳払いをした。
「コホン。失礼。
たしかに、大人気ない振る舞いでしたな」
ポール伯爵は銀髪を掻き分けてから、居住まいを正す。
「我がマリーナ王国では、貴族家の血統は、女系だろうが男系だろうが、上位血統が重視される。
そして、サラ様のエドモンド公爵家の方が、我がバイト伯爵家よりも身分が高い。
ゆえに、エドモンド公爵家のお血筋をこそ、我がバイト伯爵家の当主になってもらいたいーーそう思うのは私だけではない、誰もが思う、当然の選択なのだ。
しかも、サラ様のお子をバイト伯爵家の家督者に据えることによって、派閥のトップグループにバイト伯爵家を押し上げることができる。
そもそも、私は、エドモンド公爵家の血筋を入れたいという理由で、サラ・エドモンド公爵令嬢と幼い頃から、一人息子のボイルに婚約させていたのだ。
だが、ボイルーー貴様がサラ様との婚約を破棄するというのなら、やむを得ない。
バイト伯爵家の後継を、この女の子ーーフランシスにして、後見人としてサラ・エドモンド様を我がバイト伯爵家に迎え入れることにした」
私、サラは、扇子を閉じて、胸を張る。
「つまり、ポール・バイト伯爵様は、バイト伯爵家の家督を直接、私の子、フランシスに譲り渡してくださったのです。
そして、私、サラ・エドモンドがバイト伯爵家の家督者であるこの子フランシスを後見いたします」
「そ、そんな、馬鹿なーー」
ボイル伯爵令息は、ガクンと膝を落とす。
それまでバイト伯爵家唯一の家督相続者と見做されていたボイル伯爵令息は、自分の子供であることを証明した娘フランシスの登場によって、自分がすっ飛ばされて、彼女に家督を相続されてしまったのである。
新たなバイト伯爵家当主フランシスの母親である私は、さらに、今まで一年をかけて行ってきた根回しの成果を公表した。
「このバイト伯爵家における家督相続については、寄親貴族である私のお父様ロイド・エドモンド公爵も、さらには王宮のお役人の方々も、すでに承認済みです。
また、バイト伯爵家のご親類の方々も、この案に了承なさっています。
ほかにも、そこの貴女、メリーヌさんのご実家であるルール男爵家にも、事情をお伝えしてあります」
いきなり話を振られて、それまで呆然としていたメリーヌ男爵令嬢が、ビクッと身体を震わせる。
「わ、私の実家にも!?」
私、サラは、メリーヌを冷然と見下ろしつつ、扇子を広げ、口許を隠す。
「事の次第をお伝えしたところ、貴女のお父様は酷くお嘆きのご様子で。
『もう、あの娘は、我が家の者ではございません』
と、この書状をくださいました」
私に随行した執事が進み出て、一枚の書状をテーブルに広げる。
書面にはメリーヌの父親タップ・ルール男爵のサインが入っていて、娘メリーヌに勘当を申し渡した旨が記されてあった。
実家から勘当されたと知って、メリーヌは涙目になる。
「嘘よ! お父様は私に『頑張れよ』って。
『上手くやって、伯爵夫人になりおおせろ』と……」
私は扇子で口許を隠し、目を細める。
「ボイルはバイト伯爵家の家督を相続できなかったので、貴女が伯爵夫人になることはございません。
残念ですね。
『事にしくじった娘など、知らない』というのが、貴女のお父様のご意向なんでしょうね」
メリーヌは両目に涙を溢れさせて悔しがる。
唇を強く噛んで、血が滲み出る。
そんな彼女の肩に手を当てたボイルと、メリーヌは、揃って呻き声をあげる。
「家督者になれぬ、というのなら、今後、俺はーー」
「そうよ。
貴女が実家に密告したから、私は家に帰れない。
私たち、どうなっちゃうの?
子供もいるのよーー」
私、サラは、パチンと扇子を閉じ、二人に差し向けた。
「貴方たちは、使用人としてなら、このバイト伯爵邸に置いてあげるわ。
馬小屋の隣に納屋が空いているそうですから、良ければそこで住むのはどうでしょう?
納屋には管理人もいますし、衣食住は保障します。
そのかわり、雑用は手伝ってもらいますがーー」
そう言い渡された時、ボイルは昂然と胸を反らし、怒声を張り上げた。
「元はと言えば、この屋敷は全て俺のものになるはずだった!
実際、生まれたときから今まで、ずっと住んできた、俺の家なのだ。
なのに、なぜ他所の家のサラが産んだ子が跡取りになって、俺が追い出されるのだ!?
納得がいかない。
それに、その女の子ーーフランシスの父親でもあるんだぞ、俺は!
なぜ納屋なんかで住まなきゃいけないんだ。
そこをよく考えろ!」
大男が吼えるが、居並ぶ誰もが、沈黙したまま、その様子を見据えるばかり。
腹に据えかねたボイルは、実力行使に出た。
金色に刺繍された袖口を肘まで捲り上げて、ブンブン利き腕を振るう。
「けっ! わかったよ。
親父と元婚約者が手を結んで、俺がバイト伯爵家を継げなくしたんだろ?
じゃあ、仕方ない。
だがな、詰めが甘いぞ。
そんな女のガキ、俺は知らねえ!
コイツが死んでしまえば、俺たちの息子バルクが、我がバイト伯爵家の跡取りになるんだ!」
ボイルは猛然とダッシュして、私が胸に抱えるフランシスに殴りかかろうとする。
私は慌てて半身を翻して、我が子を守る。
結果、背中を何度も殴打された。
激痛が走り、唇を咬む。
格闘技を趣味とするボイルは、屈強な身体付きをしている。
確実に青痣は出来ただろう。
これほどの腕力で、直に拳が生後間のないフランシスに当たっていたら、悪くすれば死んでいるーー。
現に、フランシスは、声を限りに「わああああん!」と泣き声をあげる。
それを打ち消すように、私は金切り声を張り上げた。
「何をしてるの!
このバイト伯爵家には、家督者に暴力を振るう暴漢を押し止める者すらいないのですか!」
ハッと正気に返った様子で、執事や侍女がボイルに飛びかかり、羽交締めにする。
最後には父親のポール・バイト伯爵が自ら乗り出し、床に伏せられた息子に馬乗りになって、涙を流した。
「ああ! なんてことを!
もう、誰も、おまえを助けられないーー」
じつは、息子ボイルを、バイト伯爵家から除籍する手続きを、すでに完了していた。
現在のボイルは、バイト伯爵家の係累ですらなく、法的な勘当状態ーーつまりは平民落ちをしていたのだ。
ボイルとメリーヌが自分たちの子を担ぎ上げてバイト伯爵家に相続争いを持ち込むことができないよう、あらかじめ手を打っていたのである。
それなのに、ボイルは今、バイト伯爵家の家督者となったフランシスに暴力を振るおうとし、現にその子の母親である後見人のサラ公爵令嬢を殴打した。
つまり、「平民」ボイルが、「貴族家の家督者」フランシスに襲いかかり、次いで「公爵令嬢」サラに対して実際に暴力を振るったのだ。
「平民が貴族家の者に対して暴力を振るった」ーーそれだけで、このマリーナ王国では死刑に処される決まりであった。
バイト伯爵家の執事が連絡したのだろう。
やがて王宮から騎士団が駆けつけてきて、ボイルとメリーヌを捕らえて、縄で縛り付けた。
「そ、そんな! やめろ!
ここは、俺の屋敷だ。
出て行け!」
ボイルは喚くが、自分と同等の巨漢の騎士たちによって、三人がかりで押さえ込まれてしまう。
メリーヌは、「わあああ!」と声を限りに、泣きまくるばかりだった。
彼ら、「平民の犯罪者」が戸外へと引っ立てられた後、私、サラは、背中を晒し、バイト伯爵家お抱え医師たちによって治療を受けた。
その間も、元婚約者がこれから辿るであろう末路に想いを馳せて、眉間に皺を寄せる。
「納屋入りを受け入れてくれたら、三ヶ月後にはお屋敷にも入れてあげたのに……」
父親ポール伯爵も肩を落としながら、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「息子の自業自得です。
そもそも、身分上のサラ公爵令嬢を妊娠させて、一方的に婚約破棄を告げただけで、罪が重いのに、サラ様はアイツを納屋に住まわせるとお許しくださった。
それだけで、かなりの温情をかけられたといえます。
それなのに、それすら反抗的な態度で悪態をつくばかりか、暴力を振るうとは。
アレが幼いうちから母親がいなかったせいか、粗暴に育ってしまった……」
私、サラも苦い顔になる。
私も幼くして、母親を亡くしている。
それだから、両家の父親同士で娘と息子を婚約させたはずなのに。
こんな結果になってしまって、両家の亡母は共にあの世で嘆き悲しんでいることだろう。
ボイルとメリーヌが騎士団に捕えられて連行された結果、彼らの子供であるバルクは、侍女に抱きかかえられたまま、バイト伯爵家に置いておかれたままになった。
母親のメリーヌは、実家のルール男爵家からは勘当されているうえに、今現在は貴族に対する暴行容疑者として取り調べられる身の上となっている。
「わあああん!」
両親を一気に失い、バルクが泣き声をあげる。
釣られてフランシスも泣いてしまう。
私はフランシスを抱きかかえてあやしながら、バルクの面倒を見ている侍女に命じた。
「納屋には、子供がいない馬番のお爺さんが、管理人として住んでいると訊いています。
彼の養子にして、バルクを育てさせなさい。
立派な御者にでもなってくれれば嬉しいわ。
一応、貴族の血は引いているのだから」
結果、置いて行かれた男の子バルクは、納屋で馬番の爺さんに面倒を見てもらうこととなった。
◇◇◇
それから三週間後ーー。
元婚約者ボイルは、死刑になった。
平民扱いのまま、王都の中央広場で、斬首刑に処されたのである。
群衆が見守る中、首を落とされた。
ボイルは最期まで、
「嫌だ、嫌だ、どうして俺がこんな目にーー!」
と泣き叫んでいたという。
その一方で、直接、暴力は働かなかったとして、メリーヌ男爵令嬢は獄舎から釈放された。女性ゆえに温情措置がとられたと噂される。
だが、彼女の不幸はここから始まった。
平民落ちしてはいたが、生活力のないメリーヌは、実家が引き取ることになった。
外聞を気にするタップ・ルール男爵は、娘のメリーヌをすぐにどこかに嫁がせようと、精力的に動いた。
だが、それでも、縁談は遅々として進まず、難航した。
メリーヌの醜態は尾鰭が付いて噂されており、貴族は誰も相手にしてくれない。
結局、メリーヌは、年老いた大商人の身の回りの世話係として、妾のひとり扱いで貰われていった。
メリーヌは男に媚びることも忘れて、悄然とうつむくばかりの女になってしまった。
一方、願い通り、エドモンド派閥の重役となったポール元伯爵は、三ヶ月に一度のパーティーを主催するだけで四苦八苦している。
だが、充実した生活を送っているようで、孫のフランシスをあやしてから、バイト伯爵邸より、派閥の会合が開かれる館に出向いて、連日、笑顔で事務仕事をしている。
そして、私、公爵令嬢サラ・エドモンドは、バイト伯爵邸とエドモンド公爵邸を馬車で行き来しながら、両家の侍女にフランシスの面倒を見てもらいつつ、悠々自適に暮らしていた。
時折、面白がって、お父様が「婚約者として、おまえにどうか?」と見知らぬ男性ーー隣国の大貴族や、遠方の国の皇太子なんかを紹介してくる。
だが、「私は一児の母ですよ、そんなお相手は畏れ多い」と断り続けている。
実際、これから先、どうなるかはわからないけど、どのような難題が訪れようと、なんとかこなしていける自信が、私、公爵令嬢サラ・エドモンドにはある。
だから、今朝も気儘にテラスでお茶を愉しみながら、美しい庭園を眺めて寛いでいる。
(了)