第7話 神々の住まう場所では…
半年以上ぶりに、続きを書きました。1人でも読んでくださる方がいれば嬉しいです。
シンは――日本視察中、バナナのことなんて一度たりとも気にしていなかった。
「バナナ? ああ、あの黄色い果物か」
地球に“バナナ”という食べ物があることは知っていた。ただ、それだけだった。
なのに今、自分はその“バナナ”で――願いを叶えなければならない立場にある。
バナナ……
バナナ……
バナナ……!
(せめて、バナナで何をしたかったのか、それだけでも教えてくれればよかったのに……!)
神々の住まう場所で、バナナに悩む神・シン。
最高神の「即決・承認」により、今日もまた頭を抱えていた。
「たしか、あの少女――アヤはこう言っていたな。『自分で育てたバナナも食べたい』と……」
とりあえず、以下の条件は必要だろう。
バナナがいつでも食べられる環境
バナナが育てられる土地と気候
栽培に必要な魔法
生計も立てられるよう、バナナ専門のショップ
シンは同僚たちに話を聞いたり、膨大な資料を漁ったりして、バナナの知識をかき集め始めた。
(バナナって、何種類あるの?)
(そのまま食べる以外にも調理法は?)
(バナナだけで人は生きていける?)
考えることは山積みだった。しかも、これが唯一の仕事ではない。いつまでも一人の少女の「バナナ願望」に付き合ってはいられないのだが……。
(……食べたこともないのに、バナナ嫌いになりそうだ)
バナナの栽培には『温暖な湿地帯』が適している。その条件に合致する場所を異世界で探してみると――
「ピッタリな場所、あるじゃないか!」
勢いそのまま、シンは家や畑の創造に取り掛かった。
ただし、焦っていたために、その地域がどんな場所なのか調べずに決定してしまい……後で痛い目を見ることになる。
「バナナってさ、ジュースにすると旨いらしいぜ」
「オーブンで焼いたり、油で揚げたり、チップスにしても栄養価が高いらしいわよ」
「チョコバナナっていう、屋台の人気スイーツもあるらしいぞ」
「いやいや、王道はチョコバナナクレープだって」
「暑い国の名物なら、アイスも必要よね」
「バナナは傷みやすいから、保存用の貯蔵庫も要るわね」
同僚たちも面白半分で、バナナのあれこれをシンに浴びせてくる。
この世界はまだ電気が存在していないため、動力源は魔力のみ。
ジューサー、オーブン、フライヤー、冷凍冷蔵庫、そして時間の進み方を調整できる特殊貯蔵庫――
すべて“魔力製”の家庭用設備を創造し、家に設置していく。
「もしかしたら、アヤの好みに合わないレイアウトかもしれないが……そのくらいは我慢してくれ」
そんなこんなで急ピッチでの準備が進み、ようやく“住める環境”が整った――はずだった。
ところが、空から家の周囲を見渡したシンは愕然とする。
周囲には、アヤのために整えた環境以外、何もない。遠くに町はあるが、かなり遠い。そして家の裏手には――魔物の森。
(なんで魔物の発生源の近くに建ててしまったんだ……!?)
しかも、水源もない。人の通りも皆無。
だが、ここまで作り上げた今さら、場所を変える余裕はない。
「……もうこうなったら、人間が生きるために必要なものは全部、用意してやる!」
こうして、亜弥のためだけに用意された、完璧(?)なバナナハウスが完成するのであった。
――そして最後に、さらにシンを打ちのめす事実が待っていた。
「……なに? バナナは一日二本まで……?」
この小説を ChatGPT にブラッシュアップしてもらったコミカル版を、TALES で公開中。
もしよろしければ、そちらも見ていってください。
最後までお読みいただきありがとうございました。<(_ _)>