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第5話 王国騎士団第三部隊とバナナ

「「「願いが『バナナ』???」」」


 騎士達が頭に?を浮かべながら、声を揃えて叫んだ。


「はい。なので、バナナが育つ気候の場所に、神様が家を建ててくれたと思っているんです」

「な、なるほど……でも、ここは誰も通らないのだが」


 騎士達は一斉に何かを考え始め、一人の騎士が亜弥に質問をする。


「このバナナという食べ物は日持ちはするのか?」

「うーんと…ちょっと待ってくださいね」


 亜弥は完熟バナナと青いバナナ、そして別の品種の熟れたバナナを貯蔵庫などから出してきて、テーブルの上に置いた。


「バナナは熟れた状態で収穫するのではなく、この緑色の状態で収穫しますので、完熟になるまで10日ぐらいかかります。なので、予備の食料とするなら、この緑色のバナナを持って行くのが良いと思います」

「この先程のバナナより短いものや小さいものは?」

「これもバナナですが別品種なので、少し味や甘さが異なります。よろしければ、お召し上がりください」


 亜弥は別品種のバナナを1本ずつに分けると、ルシウスを含めた数人の騎士がバナナを手に取り食べ始める。


「あと、完熟したバナナの皮をむいて凍らせておけば、さらに日持ちします」

「氷属性持ちで、今度どのぐらい持たせられるか試してみよう。遠征時に役立ちそうな食べ物であることには違いない」

「そう言っていただけるとうれしいです。別品種のバナナのお味はいかがですか?」

「この小さいバナナは皮が薄くて匂いも先程のバナナよりも強く感じるが、甘味が強くて私はこちらのバナナの方が好きだ」

「わたしもそのモンキー…小さいバナナが大好きなんです」

「こちらのバナナも少し酸味がありますが、甘くて美味しいですね」


 亜弥は他の品種のバナナもかなり高評価で良かったと思っていると、バナナを食べ終えた騎士達が不思議な顔をし始めた。


「…団長、この小さいバナナを食べたら魔力が回復した気がするのですが」


 モンキーバナナを食べた騎士がルシウスに報告する。


「私も今そんな気がしたのだが……『ペレヴォラ』」


 ルシウスが何かの魔法の呪文を唱えると、掌の上に鳩っぽい鳥?が突然現れて、それを初めて見た亜弥は目をまんまるくしている。


「この魔法を初めて見たのか。これは伝書鳩を召喚する魔法で、掌の上に乗せた状態で伝えたい内容と伝えたい相手のことをイメージして伝書鳩に流し込み、相手に向けて飛ばすのだが、先程までこの魔法が使えないほどに魔力が枯渇していたのに、確かに復活しているな」

「団長!こちらの太いバナナは体力が回復するようで、もう一働きできそうな気がします!」

「なんだと!?アヤとやら、これらのバナナにはそのような効果があるのか?」


 亜弥はノーマルバナナ(スーパーでよく売られているキャベンディッシュという品種。この世界ではそういう呼び方にする)以外のバナナを、体力や魔力が枯渇した状態で食べたことがなかったので気付かなかったのだが、神様から賜った食べ物なのだから、そのような効果が付与されていてもおかしくはない。


「わたしも知りませんでした。もし、本当にそうだとしたら売れますか?わたし、バナナは沢山持っているのですが、お金がないのです……」


 亜弥はバナナで生計が立てられると思い聞いてみたのだが、予想外の内容が返ってきた。


「いや、しばらくそのバナナの存在を隠しておいたほうが良いだろう。魔力回復薬と同じ効能がこの食べ物にあると知られたら何が起きるのか、今すぐに予測が立てられない」

「そうですか……」

「だが、このバナナという食べ物は美味しい上に栄養価も高いと思われる。どうだろう、第三部隊で定期的にバナナを高値で買い付けるので、第三部隊御用達の店ということにしてもらえないだろうか?最初に食べたバナナだけは市場に出しても問題ないとは思うが、基本的には全て第三部隊が買い取りたい」

「それは、願ったり叶ったりですが、魔物討伐時にここに寄っていただけるということでしょうか?」


 バナナを買ってもらえるのはありがたいが、それでは今まで通り普段はひとりぼっちだ。


「君さえ良ければ、第三部隊の隊員を交代で常駐させようと思うのだがどうだろう?」

「ルシウス、それは良い案だ。結界が張られているため魔物の脅威は防げても、バナナが市場に出回り始めた時に己の利益しか考えない貴族に目を付けられたら、巧妙な手口を使ってアヤが気付かないままに搾取されかねないからな」


 ルシウスよりも年上で物事を冷静に判断できそうな騎士も会話に混ざる。どうやら彼はこの第三部隊の副隊長のようだ。亜弥は、この世界でも人を騙して搾取する人種が存在するんだなと、このときは漠然と考えていた。


「それは……わたしもこの世界のことについて知りたいことが沢山ありますし、話し相手が出来るのは嬉しいので是非ともお願いしたいところですが、第三部隊の皆さんはそれで問題ないのでしょうか?」

「ここへ来るたびにバナナを食べさせてもらえるのであれば、皆喜んで担当になろうとするだろう」

「そんなにバナナを気に入っていただけたのですか!嬉しい…」


 騎士達の中で亜弥ぐらいのバナナ好きが誕生すれば、将来バナナで語り合えるかもしれない、そんなことも期待して、亜弥は第三部隊の常駐を受け入れるのであった。

 ここまでの移動手段は瞬間移動の魔法を使うのか確認すると、瞬間移動魔法は一部の騎士しか使えないことがわかり、行きは他の者に魔法をかけてもらえば良いが、帰りが徒歩になる可能性があることを知ると、亜弥はこの家の1階に1部屋、2階にも空き部屋があって騎士達が使ってもかまわないことを伝え、騎士達が宿泊できるようベッドなどを用意してくれることにもなった。


 それからこの家でのルールなどを皆で決めていき、魔物討伐時以外、騎士は2人ずつ常駐することになった。


「では、バナナの効果については第一級秘密情報として扱う」

「「「はっ!」」」


「そういえば、ルシウスさんのことを皆さんは『団長』と呼んでますが、第三部隊の『隊長』さんですよね?」

「あぁ、私は王国騎士団第三部隊の隊長であり、王国騎士団団長でもあるのだ。多分皆は敬意を表して団長と呼んでいるのだと思う」


 ルシウスの回答で亜弥はルシウスがかなり身分の高い人であることを知り、「あれ?もしかしてわたし不敬罪になる…?」と思った瞬間顔が真っ青になった。


「あぁ、こいつは和気あいあいとした関係が好きなヤツだから、気さくに話しかけた方が喜ぶぞ。だから身分とか気にしなくて良い。むしろ『神様からのご褒美』を賜りし者であるあなたの方が、丁重に扱う存在だったりする」

「そ、そうなのですか?でも、そういう意味ではわたしも、皆さんとは気さくに仲良くなりたいです」


 亜弥がそういうと、騎士達が揃って亜弥に笑顔を見せ、亜弥も自然と笑顔がこぼれるのであった。



バナナ好き、増やしちゃいます!!


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