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第14話 ピコとバナナと、はじめてのおでかけ計画

 5日間ほどはかかると思われていた今回の魔物討伐が、まさかの1日で終わってしまった。

 王国騎士団第三部隊の面々は現在、全員そろって亜弥のバナナハウスで余暇を過ごしている。


 もっとも、決してだらだらしているわけではない。

 畑仕事をしたり、訓練に励んだり、第三部隊の拠点機能を一部ここに移設できないかと計画を立てたり――王都にいたときよりもよく働いていると言っていい。

 違うのは、王都のように騎士団を無意味に振り回すような者がいないぶん、誰にも邪魔されずにやりたいことに集中できるということだ。



 魔物の森から連れ帰ったミニモンキーは、亜弥に「ピコ」と名付けられ、今や第三部隊全員に可愛がられている。

 もっとも、初日は熟したバナナを食べ過ぎてお腹を壊してしまったため、今は「1日2本まで」「亜弥が与えた分だけ」をきっちり守るようになった。

 この世界のおさるさんは、どうやらとても賢いらしい。


「ピコがいれば、皆さんが魔物討伐に行っていても寂しくないですね」


 亜弥がピコにバナナクッキーを手渡すと、ピコは両手で大事そうに抱えて、幸せそうにもぐもぐと食べ始めた。


「大量にバナナクッキーを作ったので、皆さんもどうぞ」


「おっ、やった! 訓練後にバナナを食べると、体力の回復が早い気がするんだよな」


「より負荷をかけた訓練ができるようになったおかげか、みんなの身体能力も上がっているし、魔物討伐が早く終わったのもその影響かもしれない」

「バナナの匂いに魔物が引き寄せられる件は、まだ検証が必要だが……魔物もバナナが好きなのかもしれんな」


「魔物がバナナを食べて強化されたら厄介ですね。食べられないように注意しないと」


「我々が強化されるぐらいだから、その可能性はある。……さすがにこの場所まで魔物が出てくるとは思わないが、警備は強化しておこう」


 ――シンはバナナにいったいどれだけの効能を詰め込んだのだろう。

 (絶対、神々が裏で干渉してるよね……)と、亜弥は心の中でだけ突っ込みを入れた。


(……でも、おかげで第三部隊の皆さんが常駐してくれているのだから、ちょっとだけ感謝してもいいのかも)


「アヤちゃん、裁縫道具って持ってないか? 上着の袖が破けてしまってな」

「あっ、そういえば裁縫道具って全く無いですね。どこかで買えますか? ついでに生地も買って、ショルダーバッグを作りたいです」


「距離はあるが、ここから一番近い町なら買えるだろう。明日、一緒に行くか?」

「行きたい! 私、この家から出たことがないので、町へ行って色々見たいです!」


「では、明日は私の瞬間移動魔法で行こう。約束だ」

「はいっ、よろしくお願いします!!」


 亜弥は初めての外出に胸を弾ませた。

 ついでに、(バナナのマスコットとか作るために、ミシンも欲しいな……)と、神様シンにそっと願ってみる。

 最近、バナナに(強引にでも)絡めれば大体の願いは叶うと気付いてしまったのだ。



「……隊長、やっとアヤちゃんを誘えてホッとしていますね」

「皆、アヤちゃんを買い物に連れて行きたくても、団長を差し置いて抜け駆けはできないって我慢してたからな……」

「結果、アヤちゃんはここに来てから一歩も外出できていないという」


「今まで完璧超人かと思ってましたが……女性相手はかなり奥手だったんですね、隊長」

「……人間味があって逆に安心した」


 ルシウスに聞こえないよう、隊員たちがひそひそと好き勝手に言い合う。


「明日は気持ちよく送り出してやらないとな」


 ルシウスと亜弥だけでなく、第三部隊全員が――明日を、ひそかに楽しみにしていた。


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