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第11話 第三部隊、魔物討伐へ(中編)

 バナナで一息ついた第三部隊は、夜に備えて野営の準備を始めていた。


「隊長、バナナの皮はどうします?」

「アヤは畑の肥料や革靴磨きに使うから捨てずに取っておくって言ってたが……さすがに遠征先じゃ無理だな。たき火に放り込んで燃やせ」

「了解でーす!」


 オーウェンが皮を集めていると、突然、小さなサルが木陰からぴょこんと顔を出した。しかも、警戒心ゼロでオーウェンに近付いてくる。


「……ミニモンキー族? 魔物の森で見るのは初めてだな。まさかバナナの匂いにつられて?」

「試しにあげてみるか。おい、モンキーバナナ一本くれ」


 食料係からモンキーバナナを受け取ったルシウスが皮をむき、ちょこんと差し出す。


「そういえば、このモンキーバナナって名前、何でモンキーなんでしょうね?」

「俺もちょうど疑問に思ってた。アヤの世界にも“モンキー”って生き物が――あっ」


 ルシウスの言葉が終わるより早く、ミニモンキーはモンキーバナナをひったくり、口いっぱいに頬張りながら必死で食べていた。


「すごい勢いだな……」

「ああ、バナナの前じゃ人間もモンキーも平等か」


 当然、食べ終わったら森に帰ると思っていたが――帰らない。

 むしろ、たき火の近くにちょこんと座り、居心地よさそうにしている。


「……まあ、襲ってくるわけじゃないし放っておくか。いずれ帰るだろう」

「じゃあ、バナナの皮、たき火に入れますね」


 オーウェンがバナナの皮を炎に投げ入れると、じゅわっと音を立て、もくもくと煙が立ちのぼった。その匂いに気付いたミニモンキーが、鼻をひくひくさせながら寄ってくる。


「おいおい、焼いた皮の匂いまで好きなのか?」

「……もしかして、こいつ、今ここで住み着く気じゃないですか?」


 そんな会話をしていると、野営準備を終えた他の隊員たちも集まり、珍しそうにミニモンキーを眺めていた。


「魔物の森とはいえ、木に登れるモンキー族はやっていけるんだな」

「ええ、自然の恵みは豊富ですしね。ただし、人間には知られてませんけど」


 魔物の森には、果実やキノコなど、動物が好む食べ物が山ほどある。しかし、その存在を公表すれば、欲に駆られた人間が魔物の森に足を踏み入れ、大惨事になるのは目に見えている。

 だから――第三部隊には“森の恵みは持ち帰るな”という鉄の掟があるのだ。



「ウキッ、キーーーーーッ!」


 焼けたバナナの匂いをクンクンしていたミニモンキーが、突然、奇声を上げて木の上にダッシュで駆け上がった。


「……おい、何だ今の!?」

「何か察知したっぽいな。感知魔法、周囲チェック急げ!」

「はっ!」


 野生の勘は侮れない――第三部隊の合言葉である。

 一瞬で空気がピリッと引き締まった。


「報告! 森の奥から瘴気発生ポイント経由で、ウルフサイズ10、ベアサイズ3、イタチサイズ……30体!」

「しかも、ぜんぶ一直線にこっち向かってます!」

「なにぃ!?」


 普通なら魔物は瘴気の中でダラダラと発生し、しばらくはうろつくものだ。それが一直線にこちらへ。

 嫌な予感しかしない。


「何か、俺たち……呼んだ?」

「いや、そんな覚えは……」

「…………バナナの匂いだな」


 ルシウスが低く呟く。

 全員、ギョッとする。


「まさか……バナナに釣られてる!?」

「そんな……俺たち、魔物の森で“おびき寄せバナナパーティ”開催しちゃったの!?」


 瞬時にたき火の炎が魔法で吹き消され、野営地は沈黙を取り戻す。

 だが、皮から漂う“甘い誘惑の香り”はすでに広がってしまった後だった。


「くっ……なら、逆に利用する! 野営地から少し離れた、木のない広場におびき寄せるぞ!」

「了解!バナナの皮とたき火、今すぐ移動!」


 全員がバタバタと動き出す中、ルシウスの脳裏に嫌な推測がよぎる。


(……まさか、魔物までバナナ好きとはな)


亜弥がこの状況を見たら、きっとこう叫ぶだろう。

「バナナ……万能すぎない!?でも危ないってば!」


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