35. 衝撃の告白
ここは古代の代理人第三支部──王都魔剣術学校地下。
その管理者であるログリア=ブレインは、巨大な装置に黙々と手をかける作業員の一人に、
「それで、装置の完成はいつになる予定なのですか?」
と、尋ねる。
巨大な装置はゴウンゴウンと不気味な音を立てながら周囲の光を反射して怪しく煌めいており、その稼働の時を待っている。
「後数週間もあれば始動できるかと」
作業員…数字兵58番の男性はログリアに目を合わそうともせず、作業を続けながら返答する。
「そうですか。楽しみにしていますよ。…おや?」
作業の進捗を聞いて踵を返そうとしたログリアの目に思いもがけない人物の姿が映り、その歩みを止める。
その人物はログリアを見るや否やその虚無にも似た瞳孔を光らせながらログリアの方へと近寄っていき、口を開いた。
「妻が…アレシアが戻って来るのはいつになるのだ?」
重く、沈み込むような威圧の声が第三支部の研究室に響き渡る。それにログリアが臆することは無い。
「私の言う通りにはしているのでしょう?デュランダル陛下。ならば大丈夫ですよ。ヴィライダル殿下とあの血筋の娘が結ばれさえすれば…」
ログリアの返答を聞いて、アルカイドの現王であるデュランダル=アルカイドは鼻をフンと鳴らし、ログリアを睨みつけた。
しばし流れる静寂。
痺れを切らしたログリアがその沈黙を破る前に、王であり一人の時間を多く作ることが難しいデュランダルはこの場を去った。
途端に重苦しかった空気は払拭される。
「あの…陛下は一体何を…」
国王がログリアと繋がっていることなど微塵も知らなかった58番が、恐る恐るログリアに尋ねる。
「所詮あの男は亡き女王に取り憑かれた愚かな男なのですよ」
「女王?」
「今の陛下は全く扱い易くて助かりますね。あの厄介なセラリス騎士団も、私たちが出入りしやすいように優秀な人員を解体してくれましたしね」
ログリアはそれだけ言って、自室へと戻った。
後にはログリアの言葉の意味を咀嚼して、自らが所属する組織の及ぶ手がどれだけのものなのかを察し慄く58番だけが、不気味な機械群の林立する研究室に取り残されるのみであった。
そして、再び作業に戻る。
自分が作っている装置がこの国に破滅をもたらすものであるなど、全く知らずして。
◆◇◆◇◆◇
「ちょっと良いかなー?」
昼休み、いつものように中庭植物園隅にある人気のないベンチで惰眠を貪ろうとしていた俺の頭上に、聴きなれない声が飛び込んできた。
男とも女とも取れないような声音。俺はその声の持ち主が誰なのかを確かめるために目を開ける。
「…ライリ?なんでお前がここに?…って近いな」
そこにいたのは、魔法選抜の特別枠で入学したアルファクラスの男子生徒、ライリだった。
ライリは瞳の奥を覗き込んでくるかのように、これでもかと俺の顔に顔面を近づけている。
これでこの場所への訪問客はヴィライダルに続いて二人目だ。
それにしても一体なんのためにライリがここに?
ライリといえば最初の試験最終日前日の夜に見せた奇妙な行動を思い出す。
何故ライリは自身が所属しているアルファクラスを裏切って、俺に三クラスのクラス旗を渡してきたのか。
それと、レヴィオンと会ったことがあるかという質問。
探る機会が無いのであまり深く考えないようにはしていたが、まさかライリの方からこちらに出向いてくるなんてな。
まあ、そのことを話してくれるのかどうかはわからないが。
もしかしてそのことを「貸し」にして、俺に何かさせようとしているんじゃないか?
俺は不適な笑みを浮かべるライリを見つめてそんなことを考えながら言葉を待ったが──、
「古代の代理人って知ってる?」
驚く。
ライリの口からまたもや思いがけない言葉が飛び出してきた。
まさかクラス旗やレヴィオンのことでは無く、古代の代理人の話を持ち出してくるなんて。一体何を企んでいるんだ?
「知ってるが、それがどうかしたのか?」
この学校に来る前に会った古代の代理人の幹部、ログリア=ブレインの顔を思い出しながら、返答する。
あいつは今どこにいるのだろうか。
ミルのことを諦めているようにも見えなかったし、またミルを拐おうと計画を企てているかもしれない。まあ、この学校にいる以上は安全だと思うが。
しかし、俺のこの考えはすぐに否定される。
「じゃあ、この学校が古代の代理人の連中が第三支部と呼ぶ場所であるということはー?」
「はあ!?」
淡々と語るライリの言葉に、思わず叫んでしまった。
そういえば入学式の日リレッジは俺に、事情はわからないがこの都市で古代の代理人が暗躍しているかもしれないとのことを伝えてきた。
それを踏まえて考えてみると、確かに連中がこの学校を根城にしている可能性は否めない。
莫大な土地に、研究やら何やらで使えそうな巨大な施設群。
誰も学校にそんな連中がいるだなんて考えてもいないだろうし…というかなんでライリは俺にこの話を持ちかけてきた?
「やっぱり知らないみたいねー。それとあんたにもう一つ聞きたいことがあるんだけど」
「何だ?」
ライリは男子生徒用の制服を着ているために紛れもなく男なんだろうが、女っぽい喋り方にどことなく違和感を感じる。
「……どうしてそんな体になってるわけ?」
ライリは確信を持った目で、俺を見つめている。
俺が元々十八歳であったことはサティス以外には伝えていない。
サティスから聞いたなんてことは無いだろうし、何を根拠にしているのやら。
…やはり俺が魔王レヴィオンから逃げたワタルだと確信しているのか。
つまりとぼけるのも無駄ということ。ここは正直に話しておくか。…とその前に。
「俺のことを話す前に、お前のことについて教えてくれ」
俺はライリという人間をまるで理解していない。その上で俺の身の上を一方的に話すのはあまりにリスキーすぎる。
「そうねー。ちょっと待ってて」
その言葉とともに、ライリの胸前には紋章が展開された。
俺はとっさに身構えたが、その紋章の輝きはライリの全身を包み込んで、それ以外は何も無く収束していった。
そのライリはというと…
「な…」
そこには、ライリと代わって高校生くらいの見た目をした女性がいた。
ライリはどこに行った?
辺りを見回す前にその女性は来ていた制服の胸部をずらし、そこにあったものを露わにさせる。
「魔石?」
その女性が見せつけてきた胸部には、紫色に輝く巨大な魔石が煌めいていた。
つまりこの女性は紛れもなく魔族。それもレベル九か十の。
俺は装備していた神々封殺杖剣に手を伸ばす。
「私は魔王護六将校の一人、リーラ=イクスチェン。安心して、あんたに危害を加えることは無いからー」
「ライリは…お前…なのか?」
「そうそう、リーラをひっくり返してライリね。中々単純でしょー?」
ケラケラと笑うリーラ。
「それで…魔族が何の用だ」
俺は自身を魔王護六将校だと名乗ったリーラを睨みつけ、警戒した。
何故ならリーラと同じ魔王護六将校であるレオールド=ダフレイアムこそが、リリシアを殺した者だからだ。
つまりはリリシアの仇と言っても過言ではないのだ。
「そんな怖い顔しないでよー。確かにリリシアちゃんを殺したのは私たちだけど」
「ふざけんなよ…?お前が…お前らが何を考えているのかは知らないが、何のために俺の前にその顔を晒した?場合によっては…」
悪びれもないリーラに、俺は更に憎悪を含んだ睨みをぶつける。
久しく忘れていた。何で忘れていたのだろう。何で俺はやるべきこともせず、一歩を踏み出さず、こんな場所に留まっていた?
リリシアを、ヴァルムを、フォーミュラを奪ったこいつらを、何故俺は忘れていた?
視界が白く染まっていく。
ふざけたことを吐かす目の前の魔族をぶん殴りたい衝動に駆られる。
それには今まで無駄に時間を過ごしてきた自分の存在を掻き消してしまいたいような、そんな衝動を同時に孕んでいる。
「落ち着いて落ち着いて。ここで私と戦っても何も良いことは無いよー?勝つのは私だろうし、私はあんたを殺せないし」
もはや本当に戦闘の意思が無いのか、俺を挑発しているのかわからない。
そしてリーラは言葉を続ける。
「それで、本題だけど。ここの地下を根城にしている古代の代理人を調査している内に、古代の代理人が狙っているある存在のことが浮かび上がったの」
「……」
「それはね。あんたと仲のいいミルちゃんだっけ?なんだよねー」
「……それで?」
やはりあいつらはまだミルを狙っているか。しかしそれがリーラと何の関係がある?
「古代の代理人の基地をぶっ壊そうとしてるんだけど、手を組まない?」
これまた予想外の提案だった。しかし…
「…何故俺と手を組む必要がある?他の魔族の連中でも呼べばいいだろう」
喋りながら俺は理解していた。
リーラはミルをだしにして俺を利用しようと考えているのだと。
「いやあ、ここは亜人族領最大国家アルカイドの王都だよー?魔族がそう易々と侵入できるもんじゃないことはわかるよね?私は私の紋章魔法で人間に扮せるから良いんだけど」
リーラからそう言われて、確かにそうだと納得する。
もはや自分でそこまで考えられないほど、思考は薄暗い靄がかかったかのように冴えない。
「俺は何をすればいいんだ?」
おそらくリーラの言っている、古代の代理人がこの学校を巣食っていることは真実だろう。
今俺が考えるべきものは亡き者ではない。
いったん思考を落ち着かせ、リーラの話に耳を傾ける。
「まあ今は取り敢えず、ミルちゃんを保護しといてー。この学校の職員の中にも古代の代理人の手の者がいるはずだから十分に気をつけるように。今回はそれだけ言っておきたくてね。指示はその時がきたらまたあんたの元を訪ねる。それくらいかなー」
「なんのためにお前は古代の代理人の連中を狙っているんだ?」
今のところこれが一番の疑問だ。
何故魔族であるリーラが、古代の代理人を壊滅させようと目論んでいる?
「古代の代理人の奴らは…研究…いや、古代人の技術を復活させるためならどんな非道な手をも使う。それで…魔族の子供たちが奴らに拐われていてねー。私子供好きだからさ。許せないんだ」
俯きながら語るリーラ。
ベルフェリオのためなら同族であるリリシアを殺すことすら厭わなかったコイツらが、子供が好きだからその報復をするだと?
コイツが特別なだけかもしれないが、俺はもう目の前のリーラのことがわからなくなった。
そういえばリーラは俺に、何故こんな体になっているかと聞いてきてたな。
ここまでリーラのことを教えてもらって、俺が何も言わないのはフェアでは無い。
「ああー…おれがこの体になってる理由だが…」
「まあ大体は予想つくよー。銀鏡の蜘蛛と戦ったんでしょ?あんたって本当に不運だねー」
「まあな…」
「それで一対の眼鏡があるって言われてるこの学校に入学したんだ?手に入るアテはあんの?」
「いや…全くない。校長と会えれば、と思ってるがキングを取らないとダメらしい」
「なるほどねー。それで最初の試験でスターを取ったんだ。でも、そんな回りくどいことしなくても校長と近づけるかもよ?」
「どういうことだ?」
「ほら、あんたの担任、テトラだっけ?そいつを使えば良いじゃん。自分が本当は子供じゃないことと、この学校を古代の代理人が根城にしてるってことをカミングアウトすれば、融通を聞かせてくれるんじゃないのー?」
「確かに…そうだな」
テトラと校長の関係性は知っている。
しかし、テトラを完璧に動かせるような動機を見つけるのが難しかった。
が、古代の代理人の存在を認知させればあるいは──いや、確実にテトラを動かせる。
だが…テトラにその話を打ち明けた時とはつまり、俺がこの学校を離れる覚悟を決めた時ということ。
だから…話すのはもう少し後にしよう。もう少しだけ、この学校でやりたいことがある。
エレルトの誕生日が…もうすぐなのだ。
「これは憶測だけど、古代の代理人が『計画』と呼ぶ行動に移すまでの時間はあまり無いと思ってる。そう…一ヶ月もないかもねー?」
リーラがそこまで言った──その時、授業開始三分前の鐘が校内に響き渡り…リーラは、教室へ向かおうとする。
俺はそれを呼び止めて、最後に聞きたかったことを質問した。
「お前が俺にクラス旗を渡したのは…このためだったのか?」
リーラが、わざわざ俺にクラス旗を渡してきた理由。それはきっとこの話を持ちかけるための布石のようなものだったのだろう。
「まあそうだねー。どうせ私は古代の代理人をボコボコにしたらこの学校を去る予定だったし。君と接点を持とうと思っていたからねー。それと、普通にアルファクラスの連中が嫌いだから。貴族だからっていう理由だけでふんぞり返っちゃってさ。あの結果発表の時に連中が慌てふためいてるの見て、笑いを堪えるのに必死だったよー。あーあ、良いもの見れちゃったよねえ。やっぱり君に旗を渡しといて良かったー」
リーラはセミロングの横髪をくるくると人差し指で回しながら答える。
「そ、そうか」
リーラは楽しげだった。
まさかアルファクラスの連中もこんな奴が自分のクラスにいるなんて夢にも思ってないだろう。
「そういうわけだねー」
リーラはそう言って会話を切り上げ行ってしまった。
こうして、どこか漠然とした心の引っ掛かりを払拭できないままだったが…俺も教室へと戻る。
ああ、レヴィオンの動向についてでも聞いておけば良かったかな、なんて思いながら。
◆◇◆◇◆◇
リーラの衝撃的な告白から早二週間が経過し、その間俺は銀鏡と古代の代理人に関して殆ど何も情報を得られないまま、ただただ平凡な学園生活を送っていた。
もちろん、ライリのあの告白によって意識は変わった。
この学園を根白にしているという巨悪の存在。
常に周囲には目を光らせ、怪しげな行動を取ろうとする職員や、生徒に至っても尾行したり会話に聞き耳を立てたりなどできることは散々やった。
でも、流石と言うべきか、恐るべきと言うべきか。ほとんど有力な情報を得ることはできなかった。
校長室に行ってみても相変わらずの門前払いでやることがない。
だから、俺は今日最終手段とも思える行動に出る。
そんな考え事に耽っていたら、教室にテトラが入ってきた。
もう休憩時間が終わりか…
授業中と休憩中で全然体感速度が違うことに嘆いていたら、テトラが口を開いた。
「これから、第三回試験の概要を発表する」
まじか。
一斉に騒めき立つ教室内。
それもそうだ。
入学してからまだ二ヶ月も経っていないのに、三回目の試験。明らかに多いと言っていいだろう。
まあ、キングを狙っている俺としては願ったりなのだが。
「せんせー、試験多くないですかー?」
俺と同じことを思ったのか、スコッチが不満そうな声をあげる。それに追随して他の生徒たちも不満の声をあげ始めた。
「安心しろ。今回の試験は第一回の試験のように森で暮らしてもらうわけでもなく、第二回の試験のように頭を使うわけでもない。第三回試験としてお前らに行ってもらうのは、宝探しとカードゲームだ」
宝探しにカードゲーム。
聞いた感じは試験というよりも遊びのように感じるが、その内容ははたして。
「なんか面白そうじゃん!」
急に立ち上がって叫ぶエレルト。
それに連鎖するように、クラス内では「宝探し!?」、「カードゲーム??」などのような声が次々あがる。
そんな生徒たちに対しテトラは既に細い目を更に細めて、説明を続ける。
「静かに。まず最初に宝探しの概要を説明する。この学校には旧校舎と呼ばれる建物があるのは知っているだろう?宝探しはそこで行われる」
テトラの言う旧校舎とは、敷地東に建ってある巨大な木造建築のことだ。
旧校舎から現校舎に移ったのは今から十五年ほど前らしい。
旧校舎には今の学年ごとに別れている校舎と違って全学年分の教室があり、それゆえにこの学校の施設の中ではトップクラスにデカイ建物で、今は様々な道具が置かれた物置と化しているという。
宝とやらを隠すにはもってこいってわけだ。
ちなみに俺は一度も中に入ったことがない。
「宝箱と言っても、探すのはただの木箱だ。第一回目の試験でミールボックスとして配置したものと同じな。今回の試験は完全な個人戦であり、旧校舎に置かれたその木箱をそれぞれ探してもらうことになる」
要は、いかに早く箱を確保するかということか。
「それってつまり、その宝箱を見つけた人だけが、合格ってことですか?」
「そういうことだな。ちなみに旧校舎は一~五学年用の五階層に別れているわけだが、その全てが探索可能であるわけではない。デルタクラスが探索可能なのは四階層目のみだ。四階には五つの宝箱が設置してあり、お前たちで競って探してもらうことになる」
「それじゃあ、ここにいるみんな敵ってことかよ!?」
スコッチの発言で、デルタクラスの生徒たちはお互いにお互いを見つめ合う。
だんだんとクラス内でのグループが出来上がり、クラスの結束も高くなってきていた今日この頃。
まさかクラスメイト同士で戦わせるような試験が行われるなんてな。
俺は何を考えているかわからない表情を続けるテトラを見つめる。
「その通りだな。宝箱を先に見つけた者だけが第二段階、カードゲームの試験へと進むことができる。旧校舎に宝箱は全二十個あり、カードゲームはクラスの入り混じった二十人で戦ってもらう。その二十人は二グループに分かれてもらうのだが…これはまた追々説明しよう」
「マジかよ~。カードゲームってなんか楽しそうだし、俺は絶対先に宝箱を見つけるからな!!」
声高々に宣言するスコッチ。そんなスコッチを遮るようにして、テトラが続ける。
「試験は明日行われる。ちなみに試験は午前中で終わる予定だ。言い忘れたが、木箱には職員による封印魔法が施されており、第一段階が終了するまでその中身を確認することはできない。カードゲームに関しては、一次試験合格者のみに説明しよう。今日はこれで終わりだ。あと、宝箱を先に見つけた生徒に暴力を振るうなどして宝箱を略奪した生徒にはスカルを与えられるので、そのような行為はしないように。以上」
いつもはここで何か質問は?と聞くのだろうが、今回テトラはそれをしないで早々に教室を後にした。
何か聞かれたらまずいことでもあるのだろうか。
確かにテトラの言葉の節々で違和感が見受けられた。
俺の推測が正しければ、あるいは──。
「なあ、この試験ってスカルとか、スターとかってどうやって決めるんだろうな?」
思考が遮られ、いつの間にか目の前に来ていたエレルトからそんな質問を投げかけられた。
確かに考えてみれば宝箱を見つけることが出来なかった八十人はどうなる?
その全てにスカルが与えられるのか?
それとも今回の試験にはスカルを与えられる生徒がいないのか?
まあ、明日になればわかることなので深く考えるだけ時間の無駄だと判断する。
「取り敢えず明日になってからだな」
俺はエレルトに一足早く寮に帰る旨を伝え、騒々しくなり始めたデルタクラスの教室から足早に撤退した。試験が始まる前に、テトラと接触しておくために。