第5話 深鈴
「……すず、深鈴!柚鈴!これを持って逃げるのよ」
目の前に誰かがいる、顔はよく見えない。
隣には赤ちゃん?がいる。
(泣いてる…?)
目の前の誰かが私に何かを渡す。
(これは私のペンダント…?)
「鈴乃!?わかっているわよね?」
女の人が、目の前の誰かの腕を思いっきし握る。
「やめてっ!きゃっっ」
目の前の誰かが必死に抵抗する。
〜〜〜
「夢……?私にすごく似ている人が…」
「私は…なにを……!!」
「あれ…私…裸…?そうだ…!!おかあさんに連れられて…それで…それで...………………章護いるのに.....」
昨日のことが殺伐と思い出される。
数時間たっているのに消えないあの感覚。
子宮がなにかで満たされている。
不快感が消えない。
ドス黒い感情がとめどなく溢れでる。
「ずぅん、すんすん」
掛け布団で顔を覆い気持ちを落ち着かせる。
「とりあえず逃げないと」
泣き出しそうな目を必死にこらえて近くにあった昨日着ていた服を着てドアの前に立つ。
「ガチャ」
開かないと思っていたが扉はすんなり開いた。
恐る恐る周りを見渡す。
(誰もいない。)
部屋の外に出るとそこは長い廊下だった。窓はあるがカーテンが閉まっていて、薄暗く不気味な雰囲気を醸し出していた。
カーテンを少し開けて窓の外を確認すると、窓は板で塞がれていた。少しの間から外を覗くと、太陽は沈みかけていた。
(玄関は確か……)
玄関がどこにあるかは覚えているので、そこから脱出しようと考えた。
家が木造でできているから、歩くたびに床がギシギシとなる。その度に心臓がバクバクしながら進み続ける。
玄関に着きドアノブに手をかける。
「カチャカチャ」
家と同じ様なカードキー式のカギのせいで玄関は開かなかった。
「カチャカチャカチャカチャ」
夢のことが不意に思い出されて、焦燥感に駆られていった。
(はやく他の場所から逃げよう)
玄関の前には大きな階段がある。出口は一階にあるだろうと考えたためそこには行かなかった。
玄関は諦め他の脱出口を探そうと考え階段の右側にある通路へ進む。
「ギシ…ギシ…ギシ」
歩くたびに床がなり、急ぎたくても早く進むことができない。
廊下に沿っていくといくつも部屋があり、屋敷の構造はかなり複雑になっている。
10分ほど歩くとキッチンのようなところに着いた。人の気配はない。シンクは濡れているため最近まで使われていたことがわかる。
「あっっ!!ドアだ」
キッチンの角に扉のようなものがある。
「カチャカチャ」
(また開かない…...)
(もういいやお腹空いたし、何か探そ、)
冷蔵庫、棚、いろいろなところを探してみるが奇妙なことに食べ物は一つもない。
もう少し探すと、床に小さい扉があるのに気がついた。
「なに…?ここ…収納庫かな…」
人がちょうど一人くらい入れるくらいの空間がある。
「でも、形がちょっと歪…」
暗くてよく見えないが、空間は縦に長く、少し広がっているように見える。
「ギシ…ギシ」
「っっっ!!」
(誰かくる!)
すぐに床の収納庫のようなところへ隠れる。
「ギシ…………ギシ…ギシギシ」
(はぁっはぁっはぁっ……誰?)
「この事は秘密にしないと、、。私一人で始末しなければ。」
(おかあさんの声??)
「……まさか、な」
「ギシギシギシギシ…ギシ……ギシ……」
床の軋む音がだんだん遠のいていく。
「はぁぁ〜〜誰だったんだr…」
「「バンっっっっ!!」」
「きゃああ!!」
「いたたっ…なにここ」
どうやら床が外れて下に落ちたようだ。暗くて周りがよく見えない。少し時間が経つと目が慣れて、周りが見えてきた。
「本棚?」
深鈴は本を一冊取り出す。本は埃をかぶっている。
「漢文…読めない。それに昔の絵?」
「最初のページは…儀式かなんかかな…」
(白い袴をきている女の人が真ん中で…燃やされてる?)
「次のページは…よくわかんない。」
本を元の場所に戻し、また別の本を手に取る。
「この本は、空…星が書かれてる。」
そうしてまた次の本を手に取る。
「この本は絵本だ。絵は古いけど。」
「きれい……」
それはいろいろな色が混ざり合ったかのような色の背景で真ん中に人が描かれている。
(真ん中の人泣いてる?)
心なしかそこに描かれている人は悲しそうにみえた。そこから何ページも、その人間を中心に絵が変わっていく。なぜかその絵に強く惹かれ、さらにページを進める。
「さっきの儀式と同じ絵だ。でも、1人増えてる。」
あるページにさっき見た絵と同じ絵が描かれていた。違う点は、絵と全然雰囲気が合わない人間が新たに、描かれていることだ。
(この人、同じ人かな。)
「次で最後だ」
「わっっ」
最後のページは真っ黒に塗られていた。それに驚き、声が漏れる。
「なにこれ…」
不気味に思い本をしまった。
咄嗟にその本を本棚にしまう。
その後も数冊手に取ったが、よくわからなかったため、本棚の奥に進むことにした。
「なにこれ...仏壇…?」
次の部屋は電気がついており、仏壇のようなものがあった。
(遺影がある)
「これは、、私?!」
深鈴は冷や汗が手にしみるのを感じ、手足が言うことを聞かずに小刻みに動いていた。
テストが......